高齢者フレイル対策と課題

フレイルとは何か

フレイルとは、日本老年医学会が「健全な高齢者」と「要介護者の間」と提唱しました。
もう少し詳しく説明すると、健康な高齢者が加齢に伴い、後ほど後述する「サルコペニア」という状態に陥り、生活機能全般的が衰えてきます。

これらの状態により、要介護になる危険性があることをフレイルといいます。また、これらを総称して「老衰」や「衰弱」、「脆弱」といった言葉をフレイルと呼ぶこともあります。

厚生労働省では、加齢により身体機能が低下し、要介護状態や死亡のリスクが高くなった状態のことをフレイルと考えています。

フレイルといわれる高齢者は、事故や健康障害、死亡リスクが高くなっているため、地域全体で高齢者を支えていくことが重要です。

フレイルの原因とは

フレイルについては前述で説明した通りですが、では実施にどのような原因でフレイルとなってしまうのか、その原因について見ていきたいと思います。

フレイルとなる主たる原因は、身体的、精神心理的、社会的側面の3つから考えられます。

身体的について

身体的原因としては、「サルコペニア」が現在注目されています。「サルコペニア」というのは、元々ギリシャ語で sarco(筋力)、penia(減少)を組み合わせた造語です。「サルコペニア」は1980年代後半にRosenberg 氏により提唱されました。

また「サルコペニア」の影響により口腔機能の低下により、十分な栄養を口から摂取できず、低栄養状態なるといった問題も出てきます。

精神心理的について

加齢に伴い、認知機能低下、判断力の低下、気分的なうつ症状などが挙げられます。

社会的側面について

独居世帯、閉じこもり、必要な介護を受けたいが受けられない状況、最低限の収入等による生活困窮などが挙げられます。

これら3つの原因によりフレイルのリスクが生じてきます。例えば、高齢者の1人暮らし世帯であれば、人と接する機会が希薄なり、会話の機会が極端に減少していく傾向にあります。会話が減少するということは、喉の筋力を使わない状態が多くなります。その状態が続くと、筋力の衰えにより言葉が発しずらくなり、食べ物を飲み込むことが出来なくなってきます。そのような状態になると何らかの介護が必要となるので、要介護状態へのリスクが高まります。

今の例は身体的、社会的側面からのフレイルでしたが、こういった一つの原因から連鎖的に問題が生じてくるのが、フレイルの特徴なのです。

フレイル対策と課題について

1.フレイル対策

厚生労働省から「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」という基本方針が定められています。それはどのような基本方針なのか一緒に見ていきたいと思います。

・「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」の概要について

筋肉量の低下や低栄養による心身機能の低下を予防するとともに、生活習慣病などの重症化も合わせて予防する観点から、保健指導の実施を行っていきます。

<実施機関>

地域包括支援センター・保健センター・訪問看護ステーション・薬局や病院や歯科医院。

それらの機関の専門職が、後期高齢者に相談や指導等を実施することになっています。
※専門職(管理栄養士、歯科衛生士、薬剤師、保健師等)

<具体的な指導内容>

・摂食不良、嚥下不良などの口腔機能の低下に関する相談と指導。
・外出が困難な高齢者に対して、訪問歯科医による検診の実施。
・複数の病院受診により薬が多くなっている方や、一か所の病院でも薬が多い方など、服薬に関する相談や指導の実施。
・低栄養、過体重に関する栄養指導や相談の実施。

2.フレイル対策の課題

前述した対策の中身については、相談や指導といった項目が多いです。まだ要介護状態になる前段階である、高齢者の中には「もう年だから仕方がない」と諦めてしまう方や、「私はまだそこまでは衰えていないから大丈夫」という方たちが、自ら相談や指導を目的に足を運ぶかは微妙なところだと思います。

しかし健康者と要介護者の狭間にいる高齢者の方は、日を追うごとに重症化をしていきます。フレイル対策というのは、予防の観点から行われているため、そういった高齢者の方たちにも、関わっていけるかが、今後の鍵となっていくことでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
フレイルとは、健全な高齢者と要介護者の間のことを指します。

健全な高齢者と要介護者の間ですので、普段生活をしているとその変化に気づきづらく、単純に「年のせいか」で終わらせてしまうことが、ごく当たり前のようにあると思います。

また高齢者の特徴の一つとして、地域との関わりが希薄になりやすいため、近所や身近な人たちからの指摘も受けづらく、気づいた時には重症化していた、というケースも少なくありません。

私個人的な考えではありますが、行政等からの人たちから助言や指導を受けるより、身近な人からの助言や雑談からの話しの方が、「そうかな?」と気が向くような気がします。

フレイル対策を推進させるには、まず高齢者たちが地域から孤立せずに、地域全体で顔の見える町づくりを行っていくことが、必要なのではないでしょうか。