わが国の平均寿命と問題点

わが国の総人口は平成29年10月1日現在の推計人口で、1億2670万6000人となりました。また65歳以上の高齢者については、平成30年4月現在で、初めて3500万人を超え、3515万2000人となりました。 そして高齢化率も27.7%となっており、ますます高齢化が進んでいるのが実情です。

女性平均寿命が90歳の時代が来る

わが国の平均寿命は皆さんご存知でしょうか?厚生労働省の平成28年簡易生命表によると、現在のわが国の男性平均寿命が 80.98 歳、女性平均寿命は 87.14 歳となっています。また前年の平均寿命と比較して男性は80.75歳(+0.23歳)、女性は86.99才(+0.15 歳)とそれぞれ増加をしています。

そして今後わが国の平均寿命は伸び続け、2050年には男性は84.02歳に対して、女性に至っては90.40歳と平均寿命が90歳を超える時代が来ると予想されています。

平均寿命が伸びることでの問題

高齢者の1人暮らし世帯の増加

前述した平均寿命について見ていただけたら分かるように、男性と女性の平均寿命の開きが約6歳もあり、統計では男性の方が早く亡くなることになっています。そのため、今後は女性の1人暮らしの割合が増えていくと考えられます。また相手が先に亡くなることで、「高齢者の1人暮らし」が増加することになります。

厚生労働省で出されている65歳以上の1人暮らしの高齢者の動向調べによると、65歳以上の1人暮らしの高齢者の増加について、男女ともに顕著に増加しています。1980年の時点での高齢者の1人暮らしは、男性約 19万人、女性約69万人。高齢者人口に占める割合が男性4.3%、女性11.2%でした。

しかし2015年時点には、男性約192万人、女性約400 万人。高齢者人口に占める割合は男性13.3%、 女性21.1%と倍以上の増加を示しています。そして今後も更に伸び続け2035年には、男性260万人、女性は500万人と更に増加すると予想されています。

また高齢者の1人暮らしが増えることで、さまざまな問題が生じてくることが考えられます。

高齢者の1人暮らしが増えることで生じる問題とは

では、何故1人暮らしの高齢者が増えることで、問題が生じてくるのでしょうか。まず最初に考えられるのが、「孤独死」の増加です。厚生労働省で公表されている、2015年の都内における65歳以上の高齢者による孤独死は、3,127人となっています。2003年では1,451人であり、12年間で約2倍となっています。これを多く見るか少なく見るかについては、個人の判断にはなると思いますが、これは都内だけの統計ですので、全国になりますと更に増えることは間違いありません。

平均寿命が伸びることでの問題

介護難民

次に考えられるのが、介護難民と私は考えます。まず前述した平均寿命についてですが、2050年には女性の平均寿命が90歳に到達します。2018年現在からですと、32年後と遠い未来な気がしますので、少し幅を狭め2030年を見ていきましょう。2030年の男女の平均寿命は、男性81.95歳、女性88.68歳となっています。いずれにせよ、女性の平均寿命は高いです。

平均寿命が伸びることで、何故介護難民という問題に直面してしまうのか。まず介護難民についてて、簡潔に説明します。

介護難民とは、介護を受けたくても、経済状況や介護環境に恵まれず介護を適切に受けられないことをいいます。

まず何が予想されるかというと、高齢により病気を発症するリスクが高くなり、また体を満足に動かすことが出来ないといった状態に陥りやすくなります。そういったことにより家事や生活必需品などを手に入れることが出来ない(一苦労)、日常生活動作(入浴、排せつ、移動など)が1人では行えないといったさまざまな問題が出てきます。

また年齢が上がれば上がるほど、このようなリスクが増していきます。そのような状況になりますと、人の手を借りなくてはなりません。しかしその人の手を借りるとなると、金銭の問題が発生してきます。

介護費用により生活費が圧迫

まず人の手を借りる期間が増えれば、増えるほどお金がかかってきます。もちろん現役世代にたくさん稼いでいた方には関係のないお話ですが、すべての人がそうとは限りません。預貯金が限られている人や年金内だけでしかやりくりが出来ない方もいます。そんな中、介護にかかるお金が加わったことにより、生活がままならなくなるといった事態が生じてくる可能性があります。

介護保険サービスがあるでしょ?という意見も出てくると思います。確かにその通りです。しかし、そんな便利と思われる介護保険サービスにも限度があり、与えられた介護認定度により、介護保険サービスの利用の幅が決まっているため、何でもかんでも利用できる訳ではありません。またその決められた幅を超えて利用をしてしまうと、超えた分から保険適応外となってしまいます。

そのため介護が必要な状態でも、介護が満足に受けられないといった状況になる可能性が十分に考えられるのです。

平均寿命が伸びることでの問題

介護職員不足による、介護難民

次に介護職員不足による介護難民について説明をしたいと思います。

まず今後高齢者の1人暮らしが一層増加してくると予想されています。そんな中わが国の基本的な福祉の考え方は「施設・病院から在宅へ」となっているため、自宅で介護を受ける機会が、今後ますます増えてくるといっても過言ではありません。

そのためわが国では在宅支援に力を入れ、知識や技術はもちろんのこと、人員を厚くしていかなければなりません。しかし悲しいことに世間では介護職に対するイメージがとても悪いです。「汚い」「給料が安い」「危険(大変)」などそういった負のイメージがつきまとい、介護養成施設(校)では定員割れ、閉鎖といった事態が起きており、また離職率が非常に高いといった問題も出てきています。

厚生労働省所管、公益財団法人「介護労働安定センター」より2015年10月からの1年間に全国の介護職員の16.7%が退職したと調査の結果が公表されています。全産業の平均離職率は15%ですので、それを上回っており、いかに介護職員の離職率が高いかが分かります。

しかしこのデータは施設職員も入っているので、すべてが在宅サービスに影響されるという訳ではありませんが、在宅サービスを行ってもらえる、いわゆる「ヘルパーさん」の数は不足しているのは事実です。中にはヘルパーが集まらないことにより、事業所を閉鎖しなければならないところもあります。(私も直接その事業所を何件か見ました。)

そのためヘルパーが不足していることにより、介護サービスの提供が出来ず、結局は特別養護老人ホームなどの老人ホームに入所せざるを得なくなり「在宅から施設・病院」といった逆の事態になってしまうのではないかと私は思っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ここでの記事では、現在の平均寿命と平均寿命が伸びることでの問題について提起させていただきました。正直なところ、平均寿命の伸びを食い止めることは、ほぼ不可能です(食い止めたら人権問題です)。ですので、私たちは平均寿命が伸びることによっての問題と、今後のあり方について考える必要性があると考えます。

しかし、とはいっても経済的な問題や介護職員不足についての問題は、私たち現役世代だけで解決させるというのは少々難儀ではあります。ですが、ただこの現状を黙って見ているということではありません。まず私たちは、このような現状をよく理解することが、まずこの問題の解決の第一歩ではないでしょうか。

そして、私たちはこの問題について興味関心を持ち、国や国民全体で取り組むべき問題だと思っております。