現在わが国の高齢者の1人暮らしが増加していることに、皆さんは存知でしょうか。1人暮らしの背景には、核家族化の影響や若年層が地方から都心の方へ流出しているなどさまざまな要因から増えています。1人暮らしがいけないというわけではありませんが、実は1人暮らしをしている高齢者にとって安心して暮らしていけなくなるかもしれない問題が存在します。ここでの記事ではその問題点について解説していきたいと思います。そしてその問題点の対策についても合わせてお伝えしていきたいと思います。
目次
高齢者の1人暮らしの現状と現実
現在少子高齢化の影響により若者の数より高齢者の数の割合の方が年々多くなっています。さらに核家族化の影響で、子や孫とは住まず独立して生活している高齢者が数多くいます。
では、どのくらいの割合で、高齢者は家族と住まず独立して1人で生活をしているのか、図を見てみましょう。
※情報元:内閣府HP
平成27(2015)年時点で、世帯数は2372万4千世帯と、全世帯(5036万1千世帯)の47.1%が夫婦のみもしくは、単独世帯を占めています。
そんな中、1人暮らしの高齢者が増加傾向にあります。昭和55(1980)年には男性約19万人、女性約69万人、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でした。
また1人暮らしの高齢者の人数ですが、平成27(2015)年時点では、男性約192万人、女性約400万人、高齢者人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%に上がっています。女性は緩やかに上昇をしておりますが、男性に至っては女性とは違い急に上がっており、昭和55年から約3倍も上昇しているのです。
1人暮らし高齢者世帯の問題点
1人暮らしの高齢者世帯が増えることでさまざまな問題が出てきます。徐々に年を重ねていくことで、何らかの病気になることも考えられます。また外部からのトラブルに巻き込まれることも少なくありません。それではどういった問題があるのか、いくつか例を挙げていきたいと思います。
認知症の発症(進行)
認知症というのは、年を重ねていくことで発症のリスクは高まってきます。その他にも、刺激のない生活を続けていたり、不規則な生活を続けたりしているとより発症のリスクが高まるともいわれています。
それら以外にも発症の原因はありますが、まず刺激のない生活についてですが、同居人が居れば何らかの刺激はあるはずです。また不規則な生活に関しても、同居人が居れば食事や就寝時間などある程度共同で行うはずです。
認知症を発症した場合でも、同居人が居れば、然るべき機関への相談や病院への受診をすることで、認知症の進行を抑えることが可能となります。
しかしこれが1人暮らしの高齢者ですと、前述した内容の行動が遅れたり、場合によっては自発的に出来ない可能性があります。そのため、何も手を施されないまま経過していると、認知症が発症したり、認知症の症状が進行していくといった危険性が高まってくるのです。
孤独死の数が増大
単純に1人暮らしの高齢者が増えることで、孤独死も増える可能性が高まります。何故なら、同居世帯より発見が遅れるからです。
1人暮らしでは頻繁に人が出入りする環境でなければ、亡くなった際は発見が遅れます。また体調の変化にも対応が出来づらい面もあるため、孤独死の数が増えると予測されています。
以前に孤独死問題についての記事を書きましたので、詳しくはそちらをご覧ください。「高齢者による孤独死とは」。
意欲の低下
全ての方が対象ではありませんが、1人暮らしをしていることで、何かしらの意欲が低下していくという高齢者は少なくありません。いつも同じ事の繰り返し、友人や兄弟の死などによる人との関わりの減少といった、外的環境による刺激が徐々になくなっていくことで、「なんのために生きているんだろ」と思っていく高齢者を私はたくさん見てきました。
そして意欲の低下は、生活を不規則にさせ、引きこもりがちになるといったことはよくある話です。
また意欲が低下するということは、何に対しても無気力になる可能性があるので、さまざまな病気のリスクが高まるため、注意が必要です。
特殊詐欺の被害の増加
認知症高齢者の特殊被害の数値グラフについては、「郷ひろみの母親(80代)が特殊詐欺被害に、特殊詐欺とその対策」で詳しく載せていますので、ご覧ください。
上記の記事で詳しく記載していますが、高齢者の特殊詐欺については、年々件数が増えてきています。認知症高齢者の増加や加齢による判断力の低下などにより、被害が増えてしまうといった背景があります。
1人暮らし高齢者の特殊詐欺対策とは
見守りサービスの導入
現在民間で、高齢者の見守りサービスという、サービスを行っている会社が多数あります。その中でも、私が以前に利用した「セコム」・「アルソック」が良かった印象があります。
各会社料金やサービス内容はもちろん違いますので、直接お問い合わせしてもらった方が良いですが、主に「モニターでの見守り(家族が)」、「ワンタッチボタンでの駆け付け」、「センサー感知式で、体が一定時間動いていない場合の駆け付け」などがあります。
また区市町村の施策により、一定の疾病があることを条件に、区市町村が費用の負担もしくは一部負担してもらえる場合がありますので、確認をしてみると良いでしょう。
町内会へ情報提供
町内会の人は、「これでもか!」というくらいに、各世帯の情報を持っています。これは長年住み続けていることで、独自の情報ルートがあるのでしょう。
町内会の方は、高齢者世帯や1人暮らし高齢者世帯の方たちを気にかけています。その地域に長く住んでいたら、おそらく大丈夫だと思いますが、町内会長に現状を伝えるなど何かしらの情報を提供しておくのも手だと思います。
望んでいる支援が受けられるかは別ですが、私の経験上ですが、何週間か1か月おきに、見回り訪問はしていただいてました。
行動を習慣化し、近所へアピール
家の中で過ごしていることが多いと、周囲の人はあなたに気づきづらいです。とはいっても「外で何をするの?」と疑問に思う方もいると思います。
結論からいうと、特に変わったことはしなくて良いです。もう少し詳しくいうと、定期的に決まった時間にゴミ出しや、極端にいえば外に出て玄関前に座り、外の空気を吸うだけでも良いのです。
私が言いたいのは、「習慣的に○○をしている」ということが大事なのです。
近所の人は、驚くほどあなたを見ています。定期的に行っていたことが、ぱったりとなくなったら、「おかしいな」とまず思うはずです。そしてそのように思わせることが大切です。
また習慣化ということは、規則的な生活をするという意味合いでもあるので、何らかの行動を習慣化してみてください。
成年後見制度の活用
お金の管理が出来なくなってきた、判断力が低下に伴い詐欺被害の防止を行いたいといった方には、成年後見制度の活用をお勧めします。成年後見制度は、何らかの判断能力が低下した方に、後見人をつけ当人を守るというものです。
ですので、後見人を立てていれば基本的にお金の管理は後見人を通して行われるので、詐欺に合うリスクは限りなく減少されます。ただし、親族以外で後見人を立てる場合は、費用がかかりますのでお気をつけてください。
※成年後見制度の内容については、「成年後見制度とは?【解説付き】」で詳しく記載しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここでは高齢者の1人暮らしによる問題点と対策について書かせてもらいました。年を重ねると1人では対応が出来ないことが、多々現れてきます。もちろんすべての人とはいいません。
しかし1人暮らしというのは、ここでも書かせてもらった問題点などを含めた、あらゆるリスクがあるということだけは忘れないでいただきたいと思います。
家族や頼る人がいない高齢者の方でも、国の施策を利用して生活をしている人はたくさんいます。生活状況や体の状況に合わせて上手に施策を利用し、生活をしていただけたらと思います。