認知症高齢者の今後の推移と問題点

現在わが国の超高齢化社会の真っ只中です。超高齢社会というのは、高齢者の人口数が全人口の21%を超えることを指します。

平成30月4月の総務省公表時点では、わが国の高齢化率は27.7%となっており、今後もますます増加していくと予測されています。しかしただ高齢化率が増加していくだけなら良いですが、高齢になるにつれ、病気の発症のリスクも同時に高まります。

高齢者の病気の中でも、最も多いとされている病気の1つが認知症です。高齢者の人口増に比例して、認知症に罹患した高齢者もまた増えていくと考えられています。ここでの記事では、現在の公表されている認知症高齢者数と今後予想される認知症高齢者数を、グラフを基にわが国の認知症の現状についてお伝えしていきたいと思います。

2025年までに認知症患者数が約700万人に到達

厚生労働省の2012年時点での公表データによると、認知症高齢者数が462万人となっています。また厚生労働省より想定データも出されていますので、下記にグラフでまとめましたので、ご覧ください。

グラフの通りではありますが、認知症高齢者数の増加は右肩上がりと予測されています。そういった背景には、高齢化が影響していると考えます。そして7年後の2025年には新たな問題も浮上します。
それは、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる年です。団塊の世代が加わることで、75歳以上の割合が5人1人となります。

冒頭でもお伝えしましたが、ただ年を重ねるだけでしたら問題ではありません。高齢になるということは、認知症にかかるリスクが高まりますので、認知症高齢者がより一層増えることが予想されています。

それに伴い、社会的な支援の需要も増えていきます。そのため医療や介護といったサービスの利用が増え、社会保障費(※)の捻出により財源がより一層圧迫されると予想されています。

※社会保障費の詳しい内容については、「高齢化問題にまつわる社会保障制度の仕組みについて」に記載しています。

認知症高齢者が増えることでの問題とは

前述した通り、高齢化が影響し、年々認知症高齢者が増えていくことが分かったと思います。では、今後認知症高齢者が増えることで、どのような問題が起きてくるのか考えてたいと思います。

孤独死をする高齢者の増加

あまり想像が出来ないかもしれませんが、認知症を患っている方でも1人暮らしをしている方は結構います。私も在宅支援をしていた時代、認知症高齢者の1人暮らしの方はたくさんいました。1人暮らしをしている理由はそれぞれあるとは思いますが、比較的多かった理由が・・・

●ご子息が遠方に住んでいる。
●夫婦で元々暮らしていたが、どちらかが先に亡くなり(施設入所)、残された方が知らぬ間に認知症を発症してしまい、そのまま継続している。
●生涯独身の方。
●家族と絶縁している方。

などが私は多かったです。認知症を患ったからといって、直ぐに生活が出来なくなる訳ではありませが、徐々に出来なくなることは間違いありません。それは認知症を患うと、自分の体調管理(食事・睡眠・服薬など)が出来なくなってきます。そういった理由から自身で体調の変化に対応が出来ず、孤独死をしてしまう高齢者が増加する可能性があります。

こちらの記事でも孤独死の問題を扱っていますので、良かったらご覧ください。「高齢者による孤独死とは」。

ゴミ屋敷の増加

認知症を患うと、順序立てて行動することが出来なくなるため、片付けるという行為が出来なくなります。また臭いの感覚も鈍感になるため、腐った物が近くに置いていても気にならないことはよくある話です。

さらに症状にもよりますが、買い物をしたことを忘れてしまい、再度買い物をして食料品などが増えてしまう方や外部から物を集めてしまうといった行為をしていまう方もいます。

こういった症状が重なってくると、家にゴミが徐々に増えていきゴミ屋敷になってしまう可能性がでてきます。

認認介護の増加

近年核家族の影響により、ご子息と暮らさず夫婦だけで生活している世帯は多くなっています。しかし年を重ねていくと認知症に患うリスクが高まります。そのため、何も手立てをせずに、お互いが認知症に掛かってしまうと、認知症の状態で相手を介護するという構図が出来てしまうのです。

認認介護についての詳しい内容と対策については「老老介護」と「認認介護」問題と対策」に記載していますので、ご覧ください。

特殊詐欺被害の増加

前述の「孤独死をする高齢者が増加」でもお伝えしましたが、認知症高齢者だけで暮らしている世帯もあります。そのため、認知症高齢者で1人暮らしも増えると、そういった高齢者狙った悪徳業者も比例して増えていくため、対策をしなければ被害数が多くなると予想されます。

こういった被害を防ぐ案の1つとして、成年後見制度の利用などが有効と考えます。もちろん家族で対応が出来るのでしたら、それには越したことはありません。しかし家族が遠くに住んでいたり、家族がいない場合もあります。そういう方には、成年後見制度を利用し、自身の生活を守ってもらうことが有効となります。

成年後見制度についての詳しい内容については、こちらの記事に記載していますので、良かったらご覧ください。「成年後見制度とは?【解説付き】

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ここでの内容は、認知症高齢者の今後の推移と認知症高齢者が増えることで、考えられる問題点について書かせていただきました。これが全てというわけではありませんが、私が在宅支援をしていた中で、多かったケースを紹介しました。

基本的には認知症高齢者の方だけで生活するというのはお勧めしません。程度にもよりますが、認知症は然るべき治療を行わなければ急速に進行します。被害や事故もそうなのですが、認知症を進行させないためにも、家族の助力や難しい場合には施設入所の検討することをお勧めします。