日本の高齢者社会の問題点について

わが国の高齢化は急速に進んでいます。現在の高齢化率については、平成30年4月時点で27.7%と統計史上過去最高を記録しました。今後もこの数値に関しては、伸びていくと予測されています。ますます高齢化が進んでいく中で、現在わが国では多くの高齢者についての問題を抱えています。

ここでは、今後わが国で解決していかなければならない高齢者にまつわる問題点について、お伝えしていきたいと思います。またより詳しい内容については、各項目にリンクを貼っていますので、よろしければ合わせてご覧ください。

高齢者社会となっている原因について

まず何故、わが国の高齢化が進んでいるのか。それはいくつもの要因が折り重なった結果となっています。

まず初めに高齢者社会にはいくつかの呼び方が存在します。その呼び方については「高齢化社会について」でも説明をしていますが、下記に改めて簡潔にまとめましたのでご覧ください。

●高齢化社会・・・65歳以上の人口が増大している事で、主に老年人口が7%以上の社会が「高齢化社会」と呼びます。

●高齢社会・・・65歳以上の老年人口が14%~21%までの社会の事を「高齢社会」と呼びます。

●超高齢社会・・・超高齢社会というのは、65歳以上の老年人口が21%~の社会の
事を「超高齢社会」と呼びます。

わが国の高齢化率は冒頭でお伝えした通りですが「27.7%」ですので、上記の項目からですと、「超高齢社会」に当たります。すなわちわが国の人口の4人に1人が高齢者ということになります。

世界を基準にして見てみると、現在分かっている国だけで、日本の次に高齢率が高い国は「イタリア22.4%」。アジアでは「韓国13.1%」となっています。日本の高齢率はいかに高いことが分かるかと思います。
※世界のデータについては、厚生労働省HPより引用

高齢化となっている原因について

高齢化が進んでいる原因については、まず「少子化」です。子どもの絶対数が少なく、高齢者が多ければ自ずと高齢率は高くなります。しかし高齢率が高くなっている原因は、他にもまだあります。その原因については、「高齢化となっている原因」でも紹介していますが、下記に簡潔にまとめましたのでご覧ください。

・医療技術の進歩
・食生活、栄養状態の改善     

★それらの影響により、平均寿命が延伸している

これらの向上については、生活が豊かになっている証ですので、とても良いことだと思います。ですが、同時に平均寿命が延びることでの問題もあります。

平均寿命が延びるということは、それだけ高齢者に対して社会保障費を含め、多くの税金が使用されることになります。平均寿命が延び高齢者が増えても現在の体制が崩れないように国は対策をしていかなければなりません。

病気とケガのリスク

社会保障費問題

加齢に伴い、病気やケガをするリスクは高くなってきます。もちろん全く病気やケガをしない高齢者もいますが、若い人に比べて高齢者は病気やケガのリスクは圧倒的に高くなります。

それは、老化、生活環境の変化、経済的変化、家族状況などのさまざまな要因が加味して起きます。そして病気やケガをすることで、新たな問題が生じてきます。

●まず病気やケガをしてしまった時、皆さんはどうしますか?

ほとんどの方は病院(診療所)に掛かると思います。皆さんは病院でかかった医療費を全額支払うという方はいませんよね。高齢者の方でしたら、1割負担(収入により2割・3割負担)で済んでいると思います。

では、どこから出ているのか。それは民間などのような保険会社でもなく「国」からです。1割負担の方でしたら、残りの9割が「国」から出ており、それはつまり社会保障費から出されているものです。

次に、病気やケガをしてしまい1人で生活が出来なくなった。生活をするには人の手を借りなければなりません。そんなときどうするか。人の手を借りて生活をするには、介護保険の利用が一般的だと思います。実はこれも社会保障費の一つです。

このように経済的支援を受けられるのも、社会保障制度の社会保障費からなるおかげなのです。しかし高齢化に伴いこの社会保障制度の仕組みも危うくなってきています。

社会保障制度の社会保険の収入は、社会保険料の徴収で成り立っています。しかし現在のわが国は高齢化に伴い、収支と支出のバランスが取れていない状況であり、ここが問題なのです。

一般的に言われている生産年齢人口は15歳から64歳までとされており、少子化や増え続ける高齢者に対して、社会保険料を支払う人口が減少しているのです。さらに保険料を支払う人口が少なくなれば、1人あたり支払う保険料が増えていくという事態が待っています。

そのため高齢化が進めば進むほど、国の財源も圧迫されるが、国民負担も大きく強いられる状態になります。

※詳しい社会保障制度の内容については「高齢者問題にまつわる社会保障制度の仕組みについて」説明しています。

介護の人材不足問題について

高齢者が病気やケガをしてしまうと、1人では生活ができない場合があります(状態によります)。1人では生活が出来ないということになれば、人の手を借りなければなりません。人の手、つまりここでいうと介護士のことを指します。しかし現在わが国では、介護士が不足している状態で、かなり深刻な問題となっています。

現在厚生労働省から出されている介護系職種の平均勤続年数が、介護福祉士で「6年」、介護職員初任者研修「4.1年」。そしてさらに2025年の団塊の世代が後期高齢者となる年には、介護職員の数が全国で「約38万人」不足すると発表がありました。

そのため何らかの対応を行わければ、介護を必要とする高齢者に対して、適切に介護が提供できなくなるという問題が起きてしまうのです。

このような事態を少しでも回避するために、国は介護福祉士に対する処遇の見直しを行いました。以前に介護福祉士の処遇内容についてまとめた記事がありますので、詳細についてはこちらをご覧ください。「介護福祉士の賃上げ8万円は検討段階~介護福祉士の現状とは~」。

医師不足問題による高齢者への打撃

前述した介護士の不足に続き、医師不足も深刻な問題となっています。現在厚生労働省から発表されている全国の医師は2014年時点で約31万人とされています。

また日本の医師の数は毎年4千人程増加しているので、2018年現在では単純計算で1万6千人は増えていると考えられます。しかし31万人と聞くと一見多そうに聞こえますが、世界と比べると少ないことが分かります。

〇人口1,000人あたりの医師数では、現在の日本は「2.0人」に対して・・・

・フランス:3.4人
・ドイツ:3.4人
・アメリカ:2.3人

日本の医師数は、フランス・ドイツの約6割、アメリカの約7割しかいない現状です。また病床100床に対しての日本の医師数は、アメリカの1/5、ドイツの1/3と極めて少ないことが分かります。

さらに医療の現場は激務であり、医師の人数が少ない分1人で何人の患者を診なければなりません。また外来の診察が終われば、入院患者の診察、訪問診療など他にもやることが山積みな状態なのが現状です。

ある病院の勤務医へ1週間当たりの平均勤務時間についてアンケートを行ったところ、20時間以上の超過勤務を約30%に上ったことが分かりました。ちなみにですが、週20時間以上の超過勤務は過労死レベルと言われています。

そのため、現在の医療を支えているのは、涙ぐましい医師の努力からなっています。そしてこういった体制になっているのも、十分な医師がいないからこそ、このような現状になっているのです。こういった状態が続けば、いつか医師も限界に達することは容易に考えられます。もしたくさんの医師がリタイアすることになれば、日本の医療は危機に瀕するでしょう。

高齢者は、病院に掛かる率は若者に比べて非常に多いです。また今後ますます高齢者が増える中、必要な医師の数が足りていなければ、満足に高齢者へ医療の提供を行うことが出来なくなります。そのため、医師不足の問題は早急に対応をしなければならないのです。

地域との孤立化問題

1人暮らしと孤独死の関係性

近年高齢者の孤立化が目立ってきています。孤立化の問題の代表格としては、「孤独死」問題です。これは、老衰や病気によって誰にも看取られず1人で亡くなることをいいます。

現在分かっている中で、年間で孤独死をする高齢者の数は、およそ3万人と言われています。また2015年度(一番新しいデータ)東京23区内発生した孤独死の人数については、3,127人ということが厚生労働省の公表から分かっています。

やはりこういった現状を引き起こしている原因は、1人暮らしの高齢者が関係しています。現在わが国の高齢者の1人暮らし世帯の割合は、全世帯の「26.3%」と多いことが分かっています。

1人暮らしをしていても、地域とのつながりを持てなくなっている高齢者も少なくありません。そのため、誰にも看取られずに亡くなるという孤独死が多発するのです。もし地域の人と顔の見える関係を築けていたら、孤独死というのは頻繁に起きるものではないと思います。

今後も増え続けるであろう1人暮らしの高齢者を見守って行くためには、高齢者が住む地域全体の力が不可欠となります。以前にこちらでもお伝えした記事にも書いてありますが「高齢者による孤独死とは」、1人暮らしの高齢者を見守っていくためには、地域全体で高齢者を支援し見守っていくことが、孤独死問題を解決させることに繋がると思っています。

生活環境問題

買い物問題

現在地方では大型商業施設が軒並み建設され、昔からある商店街が衰退するといった問題が起きています。大型商業施設は物がたくさんあり何でも揃う反面、広い敷地を必要とするため、少し住宅街から離れたところに建設をすることがよくあります。

そのため、遠くに住んでいる高齢者では、アクセスの都合が悪くなるというデメリット持ち合わせています。

また大型商業施設が出来たことにより、昔からある商店街に足を運ぶ客が減り、店を閉めざるを得ない状況に陥ることもあり、そのため近くで手軽に買い物が出来ていた高齢者にとっては大きな問題となります。

こういった状況が続くと、買い物へ行くことが出来ない高齢者が増え、いわゆる「買い物難民」といわれる問題が起きてきます。

気軽に買い物が出来なくなれば、食材など満足に揃えることが出来ません。また気軽に買い物へ行くという外出の機会も奪われることにもなるため、引きこもりがちの高齢者も増えることが予想されます。そういった買い物難民の高齢者をいかに救っていくかが、問題となっています。こちらでも高齢者の買い物について、詳しくお伝えしていますのでご覧ください。「高齢者の買い物に関する問題~買い物弱者の背景」。

高齢ドライバーによる交通事故の増加

高齢ドライバーが増えると、交通事故が増加すると予測されています。以前の記事で「高齢者ドライバーによる交通事故について」でもお伝えしたように、まず加齢に伴うにつれて身体機能が低下し、動作や判断能力が鈍ることから、細かなミスが起きやすくなります。

さらに運転に対する自信が、若年層に比べて「ある」と回答した高齢者が年を重ねるごとに多くなっていることがデータで分かっています。

身体能力が落ちているのにも関わらず、自身の運転技術を過信している高齢者が多くいることが分かります。そのため、今後このような高齢者が増え続けることにより、高齢ドライバーの交通事故が多発すると考えます。

こうした対策としては、高齢者に対する運転講習や先進技術を生かした事故防止などに努めることがよいと思います。しかしそれも全て網羅できるものではありませんが、家族や周りの人からの助言も大事となります。

老老介護と認認介護の増加

近年わが国では、高齢者のみの世帯で介護を行う「老老介護」と「認認介護」世帯が年々増加してきています。また同じ介護と付いていても、それぞれの意味合いが違います。そのため、下記にそれぞれについての特徴を簡潔にまとめましたのでご覧ください。

老老介護

65歳以上の高齢者が、同じ65歳以上の高齢者を介護をすることを「老老介護」といいます。また65歳以上の子どもが親を介護することも「老老介護」といいます。

認認介護

認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護することを「認認介護」といいます。認認介護は、お互いが認知症を患っているため、予期せぬ事故が起きてしまうことがあります。そのため、老老介護とは違い、とても危険な介護状況です。

このように同じ介護でも、「老老」と「認認」と付くだけで全く違う状況になります。こういった世帯は、核家族化の影響や少子化の影響により、今後ますます増加していきます。更に詳しい内容については「「老老介護」と「認認介護」問題と対策」に問題点や対策案などを載せておりますので、ご覧ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
わが国は急速に高齢化が進んでおり、予断を許さないところまで来ております。ここでの記事では、現在わが国が抱えている高齢者にまつわる問題点についていくつか挙げさせていただきました。ここでの内容以外にも正直まだまだ問題はあります。まず私たちは1人1人がこの現実を知り、受け止め、向き合うことが大事となります。もちろん国もそうしなければなりません。今後高齢者問題を解決していくためには、国や国民が一丸となって取り組んでいくことが、必要になっていくでしょう。