様々な研究から妻に先立たれた夫は、弱りやすい傾向にあると言われています。逆に、夫に先立たれた妻は身軽になり、友達との交流を深めたりと元気になる傾向にあります。第一生命経済研究所「小谷 みどり」主席研究員の調査では、「配偶者と死別した一人暮らし高齢者の幸福感(17年)」 によりますと、配偶者の死後、女性は「外出時間が増えた」と答えた人が多く、反対に、男性は「外出時間が減った」と答えた人が多いことが分かっています。「外出時間が減る=弱る」とは限りませんが、男性は妻の死を機に、あらゆる面で状態が悪化していく可能性があるのです。
◇ 食生活の乱れが病気のリスクを上げる
今の高齢者は、妻に家事を任せている人が多くいます。しかし、妻の死から一番顕著に現れる問題が、食生活の乱れです。
普段からやっていない料理を急に行うことは、非常に労力を伴います。その大変さから、食事が偏り(好きな物ばかり作る)、食事回数の減少や、食事時間が疎らになるといった食生活の乱れが生じてきます。対策として、配食サービスという手段もありますが、上手にメニューや店などを変えていかなければ、次第に飽きていきます。こういった食生活の乱れが、「弱る」に繋がるのです。
◇ 寂しさからアルコール依存症へ
以前に当サイトで、沖縄県内の孤独死の死因調査の結果をお伝えしましたが、沖縄県内で孤独死の死因の多くが飲酒で、8割が男性でした。沖縄県内のデータだけでは、全てを物語ることはできませんが、寂しさを紛らわすために酒量が増え、アルコール依存症や肝硬変になり、寿命を縮めるといったケースは珍しくはありません。また、アルコールに頼る生活から生活習慣が乱れ、病気になることもあります。
ちなみに、高齢者の死因のトップが「悪性新生物(がん)」、次いで心疾患、肺炎となっています(年齢で、序列や死因が変わることがあります)。それらに罹患する原因を細かく上げれば切りがありませんが、肉体や精神的に弱っていくことで、抵抗力も下がり発症、重症化する可能性が非常に多いと考えられています。
◇ 日頃から自立した生活を心がける
普通に日常生活を送っていても、事故や急性疾患によって、突然亡くなることはあります。それは、これを書いている私にも言えることです。縁起でもない話ですが、妻に任せきりの方は、その時に備えて1人でも生きていける力を日頃から身につけておくことが重要となります。
日頃から家事を行い、地域の人たちとの交流(外出の機会の獲得)、地域の社会資源(困難時のために)を知っておくだけでも生存確率はグッと上がります。最初は、大変でしょうが、少しずつ実践していくことが「孤独死を防ぐ=弱るを防ぐ」に繋がっていきます。
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