日本老年医学会が昨年、高齢者の肥満に関する診療ガイドラインを作成しました。その背景には、現在一般的に使用されているBMI数値が必ずしも高齢者に当てはまらないことにありました。
◇ 低体重は低栄養のリスクを高める
一般的に、肥満の判定に使用されるBMIの数値では、25以上だと「肥満」、18.5~24が「標準体重」、18以下は「低体重」とされており、22が最も病気が少ない数値とも言われています(BMIの計算式:「体重kg ÷ (身長m)2)。しかし、高齢の場合だと、BMI数値が高いことで死亡や認知症になるリスクが減少するといった報告もあるのです。
高齢者の肥満について、ガイドラインの作成に関わった東京都健康長寿医療センターの荒木厚・内科総括部長(62)は、中年期の肥満の場合は、生活習慣病の影響で死亡や認知症のリスクを高めるが、高齢者は逆に体重が減っていくことで低栄養になるリスクがあるため、一般的な基準が必ずしも「高齢者に当てはまるとは限らない」と指摘しています。
◇ 肥満過ぎは「サルコペニア肥満」のリスクが上がる
低体重は低栄養のリスクがあるとしながらも、肥満が良いという訳でありません。特に、高齢者の場合、筋力がなく内臓脂肪が多い「サルコペニア肥満」に注意が必要です。
まず、サルコペニアというのは、元々ギリシャ語で「sarco(筋力)とpenia(減少)」が組み合わせられた造語からきています。つまり、サルコペニア肥満というのは「筋力が落ちた肥満」ということです。そのような状態になると、体重を上手く支え切れず転倒しやすくなり、大腿骨の骨折、死亡などといったリスクが高まってきます。そのようなリスクを避けるためにも、日頃からたんぱく質をしっかりと摂り、筋力をつける運動をすることが重要となります。
◇ 日頃からの運動が重要
サルコペニア肥満の人が運動を始める場合は、負荷が少ない運動から徐々に負荷を増やしていく運動方法が適しています。たとえば、毎日20~30分ほどの軽い散歩(ウォーキング)から始め、慣れてくれば早歩きといったように体への負荷を増やしていく形です。
継続して運動することは、サルコペニア肥満の対策で一番重要となるため、無理のない範囲で運動し続けることをお勧めします。
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