高齢者介護に役立つ市区町村の助成制度

ある日突然、介護を受けることになったとき、真っ先に思い浮かぶのは介護保険の申請だと思います。介護保険の申請が無事に済めば、安価に介護保険サービスを利用できます。ですが、介護保険サービス以外にも各市区町村が独自に行っている助成制度はご存知でしょうか?

もちろん、介護保険を申請している方でも利用することができますし、そうでない方も一定の条件を満たせば制度を利用することができます。ここでは、介護保険サービス以外でも高齢者介護に役に立つ助成制度10選を紹介したいと思います。

高齢者介護に役に立つ制度(サービス)

各自治体ごとによって制度内容は異なります。例えば、対象者の条件や現物給付、給付額、自己負担額などです。また、お住まいによっては対応していないサービスもあります。制度が各自治体によって異なっていたり、行っていない理由としては、地域によって求められているニーズが違うからです。ただ、高齢者介護はある程度共通している部分もあるため、似たような制度を展開している傾向にあります。

ここでは比較的多くの自治体で行っている制度を紹介したいと思います。

補聴器の支給

こちらの制度の概要は新宿区のものです。

聴力が低下した70歳以上の高齢者に補聴器の支給を行います。ただし、障害者の制度で支給されている方は非該当となります。補聴器のタイプは【耳掛け式】か【箱型】のどちらかです。

補聴器の支給は、申請前に必ず相談し、その後耳鼻科での聴力検査が必要になります。この制度を利用する際は利用者負担2,000円がかかりますが、生活保護または中国残留邦人等支援給付を受けている方は、自己負担はありません。

寝具洗濯乾燥サービス

こちらの制度の概要は杉並区のものになります。

心身機能の低下、傷病などの理由により、寝具を干すことが困難な方に向けて、寝具の洗濯や乾燥サービスを行います。

対象の寝具は【敷布団・掛布団・毛布・マットレス(ベッドマットレスは不可)】の4種類です。杉並区では、洗濯コース、乾燥コースのどちらかを選んで利用することになります。

洗濯コース

・洗濯できる時期:5月・7月・9月・11月・1月・3月。
・実施枚数:洗濯2枚まで。

乾燥コース

・乾燥できる時期:毎月1回。加えて洗濯を7月、1月に実施可能。
・実施枚数:毎月乾燥4枚まで(7月、1月は洗濯した枚数を除いた枚数)。7月・1月は洗濯2枚まで。

洗濯コースは毎月ではないので申請時は注意が必要です。実施の流れとしては、事前に業者から連絡がありますので実施日の調整を行ってもらいます。実施日の当日は午前中に自宅に伺って寝具を預かります。洗濯の場合は、翌日の午後終わり次第に届けられ、乾燥は当日の午後で終わり次第届けられます。

また、事前に業者に問い合わせることで、代替布団の貸し出しを無料で行ってくれます。

この制度の対象者は、区内に住む寝たきりなどで寝具を干すことが困難な方に加え、65歳以上の高齢者・介護保険の第2号被保険者で、要介護・要支援の認定を受けている方に限られます。注意点として、対象者の条件を満たしていても、同一世帯に寝具を干せる方がいる場合は非対象になります。

身体障害者手帳1・2級、愛の手帳1度から2度の寝たきり状態の方は、心身障害者寝具洗濯乾燥事業を利用することになります。

利用料は、利用枚数および所得に応じて負担になります。乾燥1枚につき0円~140円。洗濯1枚につき0円~300円。

家族介護慰労金

こちらは、練馬区の概要になります。家族介護慰労金制度は、要介護4・5の方を介護保険サービスを全く利用せずに自宅で介護をしている家族に年1回10万円の慰労金が支給されます。

利用できる対象者

  1. 住所が練馬区内にあり、要介護4・5の方と同居(または近隣に居住)し、家族が常時介護している。
  2. 要介護の方と介護している家族がともに住民税非課税世帯の方。
  3. 要介護認定されてから1年の間に介護保険サービスを利用していない。
  4. 3ヶ月以上の入院をしていない。

※引用:練馬区HPより

この制度を紹介した意図としては、少なからず家族だけで介護をしている世帯があるからです。ただ、要介護4・5の方を介護保険サービスを利用せずに自宅で介護をするのは相当大変なことです。

自治体によって要介護を低く設定しているところもありますが、申請条件はハードルが高く、この制度を狙って介護保険サービスの利用をしないという選択肢は極力さけるべきです。

肝心の支給額は、自治体によって額の幅はありますが多くても15万円前後です。介護をしていれば、毎月消耗品や介護用品などでの出費は必ず出るため、恐らく赤字、良くてトントンだと思います。

そのため、『絶対に家族だけで守っていく』という強い決意のある方以外は、介護保険サービスの利用をオススメします。

高齢者紙おむつ給付事業

こちらの制度の概要は横浜市になります。

高齢者紙おむつ給付事業は、寝たきりの状態や認知症の状態にある在宅の高齢者を対象に、紙おむつを支給する事業です。

対象者は、横浜市内で在宅介護をしており、要介護者(要介護4・5の方及び要介護1~3で必要と認められた方)で、寝たきり状態又は認知症の状態の方。さらに、属する世帯が生活保護受給世帯等、または市民税非課税世帯の方となっています。

給付の基準額についてですが、要介護1~3の方は毎月6,000円まで。要介護4~5の方は毎月8,000円までの給付を受けられます。ただ、紙おむつの利用基準額の1割が自己負担額になりますのでご注意ください。

オムツは、自宅に配送してくれます。配送の日程については直接業者とやり取りすることになります。

横浜市のような高齢者紙おむつ給付事業は、ほとんどの自治体で行っていますので、紙おむつを使用しているご家庭は、一度お住まいの自治体に確認してみると良いでしょう。

高齢者保養施設利用助成金

こちらの制度の概要は東京都国立市のものになります。

介護を受けていても、介護をしていても「どこかに旅行に行きたい」と思うことはあるはずです。そうした時に、高齢者保養施設利用助成金を活用し、効率よく旅行に行かれてはどうでしょうか?

国立市では、65歳以上の高齢者が1人1泊につき5,000円以上の宿泊料金を支払い、保養施設に宿泊した場合に限り助成金が支給されます。助成金額については【10人未満の団体および個人旅行:1,000円】、【10人以上の団体旅行:2,500円】です。

注意点として、制度には利用制限があり当該年度内でどちらか1回のみになります。次に、【10人以上】の内訳で、65歳未満の方や市外在住の方が含まれていても制度の利用はできますが、助成金を申請できるのは、65歳以上の国立市民のみに限ります。また、旅行会社が企画し、一般募集した10人以上は対象外ですので注意してください。

保養施設ですが、国立市が指定している保養施設に宿泊しなければ助成金の対象外になります。国立市の保養施設が下記の通りです。

※引用:国立市HP

ここでは、国立市の保養施設利用の助成金についてお伝えしましたが、こうした高齢者の方を積極的に外出するキッカケ、仲間の輪を作る取り組みは多くの自治体でも行われています。例えば、国立市のお隣、府中市でも行っており、こちらは1人あたり3,000円の利用助成が受けられます。今は新型コロナウィルスの感染拡大で旅行どころではありませんが、感染が落ち着いたころにお住まいの自治体に確認されると良いでしょう。

訪問理美容サービス

こちらの制度の概要は東京都立川市のものになります。

立川市が行っている訪問理美容サービスは、65歳以上の自宅で寝たきり状態の方、認知症の症状がある方で一般の理美容サービスを利用することが困難な方に向けて、理美容業者が自宅に訪問してカットなどを行います。

理美容サービスにかかる出張費を立川市が理美容券として最大4枚を支給します。訪問した業者に理美容券を渡すことで出張代が無料になります。理美容にかかる料金については、直接業者に支払ってください。

私も利用者の希望により、いくつかの訪問理美容を依頼したことがあり、出張代がカット料金と込みという場所もありますが、1回500~1000円が多かったです。また、駐車場がない自宅ですと駐車代金を請求される場合もありますのでご注意ください。

補足として、立川市のように出張代の理容券ではなく、格安で訪問理美容が利用できるサービスを案内している自治体もありますので、ご参考までに。

高齢者配食サービス

こちらの概要は東京都立川市のものになります。

立川市の高齢者配食サービスは、老化の影響で買い物や食事の支度、調理をするのが困難な高齢者世帯等に食事を配食するとともに、安否確認をしてくれます。

対象者は、①65歳以上の高齢者。②介護保険第2号被保険者で要介護状態又は要支援状態にある方。③身体障害者手帳(2級以上)を持つ方。④65歳以上の高齢者で、同居者の就労等の理由により、食事の支度が困難な方のみの世帯に準ずる状態が、一日につきおおむね8時間以上となる世帯の方(家族の勤務等状況届も提出が必要)。

配達料金は、1食につき410円の自己負担がかかります。食事の内容については一般食となり、特別食(糖尿病食・低カロリー食など)は扱っていませんので注意が必要です。ただ【軟らかいご飯】【薄味食】にすることはできます。

配達方法は、月曜日~日曜日の希望する日を選び、昼食(10時から12時頃の配達)もしくは夕食(16時から18時)のいずれかを選択します。安否確認も含まれるため、手渡しになりますので希望した日時に在宅する必要があります。

家具転倒防止器具等助成

こちらの概要は港区のものになります。

港区では区内に居住し、住民登録をしている世帯に対して、家具の転倒を防止する器具や食器類の飛び出しを防止するなどのアイテムを無償で現物支給してくれます。

東京消防庁の調査では、近年発生した地震でケガをした人で【家具の転倒・落下】が原因の割合が30~50%を占めていると言われています。今後、首都直下地震が来ると予想されており、その時に備えて家具転倒の防止器具を取り付けておくと良いでしょう。

特に、自力歩行や補助具なしでは歩くことができない人は、通路に家具が倒れていると自力脱出が困難になるため、今のうちに助成を受け補強しておくことと良いでしょう。

助成についてですが、1世帯に対して1回限りです。また、1人又は2人世帯の方は150ポイント、3人以上の世帯は195ポイントになります。このポイントを消費して家具の転倒防止器具の支給を受けます。

器具名 説明 ポイント
家具転倒防止器具等 とびらロック ネジで食器戸棚などの扉に取り付け、丈夫なクサリで揺れによる扉の開放を防ぎます。 10
タンスガードII 家具と壁面をベルトで固定して転倒を防ぐ耐震金具です。 11
OA機器用耐震固定バンド パソコン、テレビ等を固定して、地震などによる転倒落下事故を防ぎます。 14
家具転倒防止板ふんばる君 家具の前方下部に敷くだけで、地震に力を発揮します。 15
粘着耐震ゴムG-BLOXゲル パソコン、ガラス製品などの下に敷くことにより、素材そのものの強力な粘着力で衝撃、振動から守ります。 21
ガラス飛散防止フィルム ガラス面に貼れば、割れてもガラス破片の飛散を防止します。 26
スーパー不動王ホールド(2個1組) 粘着シートで設置し、家具の転倒を防ぎます。 46
マグニチュード7(2本組) 家具と天井の間に取り付け、つっぱり棒の役割をはたし、家具の転倒を防ぎます。 63
ふんばりくんZ(2本組) 天井や壁を傷つけることなく、狭い空間でも取付可能です。 80
Q-ディフェンス(S・M・Lタイプ) 天井や壁を傷つけることなく、広い面で天井と家具を支えます。 89~98

※引用:港区HPより

防災関連でお伝えしますが、内閣府が震度6強体験シミュレーションをホームページに掲載しています。この体験シミュレーションは、状況ごとに選択肢が表示されます。表示された選択肢を答え、実際に生き残れるかを体験するものになっています。ちなみに私は85点でした。勘違いしている防災知識があるかもしれませんので是非お試しください。

徘徊高齢者探索サービス

こちらの概要は東京都日野市のものになります。

自宅で過ごす認知症高齢者にGPS移動端末機を所持してもらい、位置情報システムを利用することで、万が一自宅を出てしまっても所在がすぐに分かります。位置情報システムは、指定のサイトに入ることで確認することができます。

日野市の場合は、セコムが提供しているココセコムを貸し出します。ただ、無料ではなく自己負担が発生します。料金は月200円かかり、口座自動引き落としで6か月分(1,200円)前払いをすることで利用することができます(税別・生活保護受給者は免除)。

ココセコムは、通常だと月900円かかるので、自治体に申し込むことでかなりお得に利用することができるので、大変お得になっています。

私も実際に自治体に問い合わせ、ココセコムの利用依頼をしたことがありますので、その時の流れを簡単に説明します。

① 市役所に相談
・ケアマネジャーもしくは家族が市役所に「介護をしている家族が徘徊してしまって困っている」と相談する。
② 申込書類を書き提出(氏名・住所など)
③ セコム担当者と訪問日程の調整を行う
・契約や機器の説明のために、一度自宅へ訪問します。
④ 利用スタート

貸出機器の大きさは【横4.3cm、縦7.9cm、厚さ1.82cm、重さ48g】です。認知症の方だと自ら機器を持ち出して外出することは難しいと思いますので、普段身につけているものと一緒にしておくと良いと思います。

緊急通報システム

こちらの概要は新宿区のものになります。

自宅で緊急事態に陥った場合に、無線発報器で警備会社に通報できるシステムです。利用対象者は、65歳以上の高齢者で【①:1人暮らし、または65歳以上のみの世帯】【②:日中・夜間に1人になるもしくは、65歳以上のみの世帯になる方】【③:慢性疾患があるなど、日常生活を送る上で、常時注意が必要な方】になります。

緊急通報システムの流れについては、緊急時にボタンを押すことで、警備会社から確認の電話が入り、電話に出ない場合は緊急事態と考え、現場派遣員や救急車が駆けつけます。

利用者負担については、設置費用の1割になります。ただし、住民税非課税の方、生活保護または中国残留邦人等支援給付を受けている方は、自己負担が生じません。

まとめ

ここでは、主に東京都の自治体の助成制度を紹介しましたが、その中でも比較的多くの各自治体が行っている制度でもあります。「ここが困っている」という家庭の事情が、意外と自治体で手助けしてくれるサービスがありますので、直接問い合わせもしくはホームページで確認されることをお勧めします。