高齢者の間で普及するインターネット関連によるトラブルの事例と対策

まずタイトルを見て「高齢者はITが苦手なのでは」と思われた方。それはもはや一昔前のお話です。高齢者の方も若い人同様に、何か分からないことがあれば、インターネットを活用して調べます。いわゆる「アクティブシニア」といわれている高齢者の方が増加しています。
「高齢者が生きがいを持てる生活とは」でもインターネット等を利用している高齢者について一部紹介をしていますが、ここでの記事では更に詳しく、「高齢者はITが苦手ではない」という根拠と、「インターネットによるトラブルの事例と対策」について紹介していきます。

65歳以上のインターネット利用率・・・70歳~79歳で53.6%!

総務省平成29年度版の情報通信白書の「通信利用動向調査」 から出されているデータを基にグラフを作成しました。ここでのデータでは2016年が最新でしたので、2016年とその10年前である2006年のデータの比較グラフとなっています。また他の年について載せている理由としては、2016年と2006年近辺の年の動向も分かると思い載せています。
とりあえず、論より証拠です。まずを図を見てください。

30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~64歳 65~69歳 70~79歳 80歳以上
2005年末 92.8 90.6 75.3 55.2 42 19.3 7.2
2006年末 92.5 89.3 75.2 59.7 48 32.3 16
2014年末 97.8 96.6 91.3 80.2 69.8 50.2 21.2
2015年 97.8 96.5 91.4 81.6 71.4 53.5 20.2
2016年 97.5 96.7 93.0 83.3 69.4 53.6 23.4

一番顕著に増加した年代が70歳~79歳までの年代です。2005年では、19.3%の利用率でしたが、11年後の2016年時点では53.6%と、34.3%も上昇しています。これは2人に1人はインターネットを利用していることになります。しかし現役世代と比べたら少ないですが、私はこの数値を見る限りでは、十分に多いと感じています。

何故高齢者のインターネットの普及率が上昇したのか

先ほど例に出した70歳~79歳を基に説明していきたいと思います。まず2006年の65歳~69歳の数値を見ていただきますと、48%となっています。その方たちが10年間絶えずインターネットの利用を続けていると仮定します。

もうここまでお話したらお分かりだと思いますが、その方たちがそのまま利用すれば、自ずと10年後の数値はほぼスライドされていくことが容易に分かります。高齢者のインターネット普及が2人1人の理由は、爆発的に急に増えたのではなく、昔から何らかの形でインターネットを利用していたからこその数値だと考えます。(もちろん新規参入もあります。)

またIT機器を初見という方も少なくないのではないでしょうか。インターネットがない時代でも、ワープロなどが存在しており、何かしらのIT機器を利用していたはずです。またパソコンが普及し始めた頃には、CMやチラシなどでよく「パソコン教室」の広告がたくさん出され、それをきっかけに利用し始めた方はきっといると思います。

さらにいえば、時が経つにつれて昔と違いパソコンやスマートフォンなど安価に手に入る時代になっています。そういった理由が加味し合い、現在のインターネットの利用率が高くなっていったことが要因なのではないでしょうか。

どんなことに利用しているのか・・・電子メールの利用が78%

前述した通り、高齢者の方はITを利用している方が2人1人いることが分かったと思います。では、その高齢者の方たちは一体どういったことに利用しているのか、総務省が出されているデータを基に説明していきたいと思います。まずグラフをご覧ください。

2016年度 13~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60歳以上
電子メール 66.8 85.3 86.7 88.7 87.1 78.3
ホームページ・ブログ 39.2 50.2 53.0 47.4 41.2 28.1
SNS 67.3 76.6 70.5 59.0 45.4 18.3
無料通話アプリやボイスチャット 65.2 73.8 65.2 54.4 44.2 20.2
動画投稿・共有サイト 72.6 67.9 65.3 55.5 39.8 17.7
テレビ、映画などの配信サービス 21.4 28.1 24.4 22.7 19.3 11.9
オンラインゲームの利用 48.4 45.2 37.9 26.5 15.3 7.0
クイズ・懸賞、アンケート 12.9 23.5 25.0 26.8 23.0 12.6
地図・交通情報(無料のもの) 42.3 70.4 72.9 70.5 68.9 57.9
天気予報(無料のもの) 39.9 66.0 75.1 74.0 70.7 55.2
ニュースサイト 33.7 60.1 69.7 67.7 63.9 48.3
辞書・事典サイト 32.6 41.3 37.2 36.6 36.9 30.9
商品・サービスの購入・取引 34.8 65.0 62.3 57.6 49.4 34.7
デジタルコンテンツの購入・取引 25.8 39.4 31.4 25.8 16.6 7.1

さらにグラフの中で割合で高かった項目をピックアップしたいと思います。

60歳以上
電子メールの送受信 78%
地図・交通情報の提供サービス(無料のもの) 58%
天気予報の利用(無料のもの) 55%
ニュースサイトの利用 48%

ピックアップして分かるように、だいたいは情報収集をするために利用していることが分かります。

高齢者の約半数が、毎日インターネットを利用している。

実際どれくらいの頻度で利用しているのかが気になるところです。前述のデータでは、1年に1回でもカウントに入りますので、正直それを利用しているかに入れるのは微妙なところですよね。今回は2015年度のデータしかなかったため、2015年度のデータを基に表を作成しています。ではこちらをご覧ください。

2015年度 毎日少なくても1回 週に少なくても1回 月に少なくても1回 年に少なくても1回
60~69歳 57.3% 26.3% 11.2% 11.2%
70~79歳 48% 31.5% 13.5% 13.5%
80歳以上 44.3% 29.4% 13.8% 13.8%

表を見ていただきますと、60代からの年代の半数は、少なくても一日に1回はインターネットの利用をしていることになります。80歳以上の「毎日少なくても1回」では44.3%で、統計のほぼ半数は利用していることになっています。私は決して少ないとは思いません。ちなみに20~29歳までの「毎日少なくても1回」については、92.4%でした。

高齢者のインターネット関連によるトラブルも年々増加

前述より高齢者によるインターネットの利用頻度(普及)については、ご承知おきの通り利用頻度が増えてくることで、それにまつわるトラブルも年々増加しています。
国民生活センター調べによると、インターネットの普及に伴い、通信販売に対する相談が増え、2015年度時点で、高齢者による通信販売による相談件数が81,139にも上っています。
※通信販売によるトラブルとは:ここでいう通信販売とは、アダルトサイト等のデジタルコンテンツや、光ファイバー、携帯電話サービス等の情報通信関連。

このようなインターネット関連の相談が多い背景としては、「アクティブシニア」が増加したことによるものですが、では一体どのようなトラブルがあったのか事例を作成しましたので、見ていきましょう。。

インターネット関連によるトラブル事例

【事例1】・・・70代男性

インターネットで海外ホテルを予約とキャンセルを複数回を行ったところ、クレジットカードに複数の請求が来てしまった。英語で内容が書かれているが分からなく、時期的にはホテルの請求に関することなのは分かっていた。しかし対面でのやり取りで、予約とキャンセルをしていないため、どういう理由での請求が分からない。

【事例2】…60代男性

アダルトサイトへワンクリックをしてしまい突然契約をされてしまった。そのためアダルトサイトへ問い合わせを行ったところ、解約をするには15万円がかかるといわれた。あまりにも高いためインターネットでこのような問題について解決する業者を探した。その業者から「当社に約10万円を支払えば解決させる」とのことだったため契約を行った。しかし作業着手前は契約金額の20%、着手後は実働分と契約金額の50%を請求するというものだった。

【事例3】・・・80代女性(相談者その家族)

昔からパソコンなどを扱うのが好きな方だった。しかし病気を患い長期入院を余儀なくされ、家族が家の掃除をしていたところ、インターネット請求の明細が出てきた。長期入院のためインターネットの利用は当面しないため、解約手続きを行いに契約元へ問い合わせた。しかいし契約元から長期契約をしており、途中で解約を行うと解約金が20万円かかると言われた。あまりにも常識外れの解約金のため、どのようにしたらよいか分からないため、国民生活センターへ相談を行った。

インターネット関連のトラブルに合わないための対策

いずれも当事者による契約が目立っています。そうはいっても、ちょっとした契約なら誰かに相談するということは、あまりしないかもしれませんよね。それに1人暮らしでしたら尚のことです。しかし事例のようなトラブル合ってしまうと大変です。インターネット関連でのトラブルに合わないための対策について見ていきましょう。。

1.不慣れな作業を行う際は、家族や友人に相談してから行う。

インターネットによる購入や手続ぎなどワンクリックで行えてしまうため、手軽に商談が成立してしまいます。また商談に当たっての疑問点が生じた場合に、直ぐに聞くことが出来なかったり、間違いに気づいたが、キャンセルをするのに時間がかかるなどといった手間が生じてきます。そのため、インターネットによる購入や手続きを行う際は、誰かと一緒に確認することを勧めます。

2.契約を交わす際は、必ず契約事項をしっかりと確認する。

極々当たり前のことですが、よくトラブルにある事例です。基本契約事項は文字が多く、小さいです。また契約事項の内容も、難しい言葉が列挙されていることが多いです。そして契約をする側が有利になる部分が見えづらいところにある場合があります。そのためパッと見て、「これは難しい」と感じたら、一度その契約は見合わせることを勧めます。

3.契約時にはボイスレコーダーを。

これは事例3に関わることですが、さまざまな理由により1人で契約を行わなければならない場合もあると思います。その際は、ボイスレコーダーを持参することを勧めます。理由は、契約時の説明について「言った・言わない」のトラブルを防止するためです。トラブルに発展した場合、契約時に必要事項を説明していなかったということになれば、圧倒的に有利になります。またその場で分からないことがあった場合でも、音声さえ残っていれば後ほど聞くことが出来ます。そのため契約内容が分からない時は契約書にはサインをせずに一度帰り、音声に収めた契約内容の予習をするのもありだと思います。

いずれの対策についても、かなり手間ではありますが、分からないものにサインをするという行為は、とても危険なことなので、これくらいはしてもよいと私は思います。



まとめ

いかがでしたでしょうか。「高齢者はITが苦手」という根拠について説明させていただきました。現役世代と比べると利用頻度の差は歴然ですが、2人1人がインターネットの利用をしているとなると、「高齢者はITが苦手」というのには無理があると思います。私は時代が変えたと思っています。かくいう私の84歳の祖母もインターネットの利用が出来ます。エクセル、パワーポイントなど少し複雑になってくるものは、さすがに難しいかもしれませんが、調べもの位ならパソコンに電源入れて、「eマーク」「クロームマーク」をポチッとクリックするだけですので、簡単です。(何回も練習をしましたが。)

でも電源とクリックが出来でも、タイピングが出来ないのでは?という意見も出ますよね。確かに最初から打つというのは難しいと思います。しかしパソコンをやると決めた方でしたら、まず知人からの勧めや家電量販店など誰かしらの関わりを経て、パソコンの利用をすると思います(祖母の場合は、私が教えました。)。ですので、やると決めたのでしたら、その知人からもしくは、塾などに通い学ぶと思います。何故なら利用する前提での行動ですので、何かしらの手段を使ってでも学習すると思います。ですので、そこの心配はいらないと私は思います。

また今ではディサービスなどでも、パソコンを使ったレクリエーションがあったりと現代に特化したサービスもありますので、そういった関わりから自宅にパソコンを置いたとい方もいます。むしろ、家電量販店でシニア割引&アフターサービス付きパソコンなど沢山出たらもっと利用者が増えるのではと、私は思っています。

しかしここで気をつけなければならないのが、インターネット関連によるトラブルです。前述でも説明しましたが、高齢者によるインターネットの関連のトラブルが年々増加しています。また大々的に営業している家電量販店ですら、高齢者の用途に合っていない追加サービスを付与し、月額料金を上乗せさせたり、解約をする方に常識外の解約金を請求するという話もあるくらいです。そのため契約等をする際は極力1人では行わず、家族や知識のある友人と一緒にされることを勧めます。

最後にはなりますが、パソコンやインターネットを通じて、世代の壁を超えた関わりが持てる、そんな明るい時代が来ることを、私は切に願っています。