介護ベッドは、食事や排泄、余暇といった日常生活をベッド上で余儀なくされた方などの生活の土台とも言える重要な役割を担う福祉用具です。ただ、介護ベッドにもさまざま種類があり、機能も異なります。介護ベッドを使ったことが無い人からすれば、どのようなベッドを選べば良いか悩んでしまうと思います。そこで、そういった方に向けて高齢者におすすめの介護ベッドの選び方とおすすめ4つを紹介します。
目次
介護ベッドとは
介護ベッドの正式名称は特殊寝台ですが、ここでは介護ベッドでお伝えします。
介護ベッドとは、背部や脚部の傾斜角度の調整などができるリクライニング機能や、ベッドの高さを調整する機能を持ったベッドの事を指します。
体が不自由な方でもリクライニング機能や高さ調整をすることで、自立した生活を送ることができます。また、介護者側も介護がしやすい角度や高さに調整することで介護の負担軽減ができます。介護者が楽に介護ができれば、介護をされる側も心身の負担が軽減できるので、介護ベッドは双方にとってメリットのある福祉用具と言えます。
補足として、一般市場ではあまり見かけませんがハイグレードの物になれば、自動で左右に体を傾けたり、立ち上がりを補助してくれる機能といった介護ベッドもあります。
介護ベッドを使うメリット
今まで一般的なベッドや布団で寝ていた人からすれば「急に介護ベッドにしましょう」と言われても「いいよ、今まで使っていたのがあるから。」と断るケースはよくあります。確かに本人自身が介護ベッドの必要性を感じていなければ、当然の返答ではあります。
ただ、認知機能の低下の影響や、介護ベッドの本当の良さを知らないだけで断っている場合もあるため、介護ベッドのメリットを分かりやすく説明することも大事です。
そこで、ここでは介護ベッドを使うメリットについてお話します。介護ベッドが必要になった方に、ここで紹介するメリットを伝えてあげてください。
常に楽な姿勢を保つことができる
リクライニング機能を使うことで、自分の楽な姿勢を保つことができるため、ベッド上に居ても比較的快適に過ごせます。また、介護ベッド専用のマットレスを使用することで、体の痛みを抑えられるので、長時間寝ていることもできます。
その方の体の状態にもよりますが、水平の状態で眠るより少し角度をつけることで、呼吸がしやすくなり寝つきが良くなります。
立ち上がりが楽になる
ベッドの高さを調整することで、ベッドからの立ち上がりが楽になります。筋力がある人だと、立ち上がりにくい高さでも問題なく立つことができますが、筋力が落ちている方だと自分の適正高さでなければ立つのが困難です。例を挙げれば、椅子からの立ち上がりがいい例です。
椅子から立ち上がるのと、床から立ち上がるのとではどちらが楽に立つことができますか?恐らく大半の人が椅子からと答えると思います。それは、膝がほぼ90℃に曲がった状態で、床に足がついていることによりスムーズに立つことができるからです。
これはベッドから立ち上がる動作でも同じことが言えます。足腰が弱い人こそ、ベッドと床との適正な高さに設定しなければ、立ち上がるのがとても大変になります。
高さ調整を行った介護ベッドだと側面に足を出して床に足をつき、手すりに掴まるだけで簡単に立ち上がることができます。低い場所から立ち上がることが大変な人こそ介護ベッドはおすすめです。
介護がしやすくなる
介護ベッドのリクライニング機能や高さ調節機能は、介護者の楽な高さに合わせて介護ができるので、腰などの負担軽減ができます。
例えば、オムツ交換時やベッドから車いすに移乗、食事介助など介護者側のやりやすい位置に調整することで負担が軽減するので、介護がしやすくなります。
介護がスムーズにできれば、介護をされる側も楽になるので、双方のメリットになると言えます。
介護ベッドの選び方
介護ベッドには多くの種類があり、さまざまな機能が搭載されたベッドが販売されています。購入の際は、どのような点に着目し選べば良いかをここでは見ていきたいと思います。
モーターの数で選ぶ
介護ベッドは、モーターの数でベッドの機能が大きく変わります。モーターの数は、介護ベッドの根幹とも言えるため、目的に合わせたモーター数を選ぶことが重要です。ちなみに、介護ベッドの主な機能は背上げ、脚上げ、高さ調節が基本的な機能になります。それらの機能がモーター数で備わっているかの有無で決まります。
モーター数 | 特徴 | 状態別に必要な機能 | 適正の介護度 |
---|---|---|---|
1モーター | ●下記の機能のどれか1つが備わっているものが1モーター介護ベッド。 ・背上げ機能:背もたれが上がる。 ・脚上げ機能:足元が上がる。 ・高さ調整機能:介護ベッドを上げたり下げたりと高さを調整する。 |
● 背上げ機能が必要な方:自力で起き上がり立ち上がりができない方、座位保持が難しい方、経管栄養の方、寝たきりの人で、食べ物が飲み込みづらい方又は食事中にむせる方など。 ● 脚上げ機能が必要な方:足の血流が悪い方、足が浮腫む方。 ● 高さ調整機能が必要な方:ベッドから車いすやポータブルトイレに移乗する方、立ち上がりが不安定な方、ベッドからの転落の危険性がある方、介護者に腰痛の不安を抱えている方。 |
● 要支援1、2。要介護1、2。 |
2モーター | ・背上げ機能:背もたれを上げる。 ・高さ調整機能:介護ベッドの高さを調整する。 ・背上げ+脚上げ連動機能:背上げと脚上げを連動して上げる。 |
● 要介護1~3。 | |
3モーター | ・背上げ機能:背もたれを上げる。 ・高さ調整機能:介護ベッドの高さを調整する。 ・背上げ+脚上げ連動機能:背上げと脚上げを連動して上げる。 |
● 要介護2~5。 | |
4モーター | 3モーターの機能に加え、左右に傾く体位変換機能。もしくは、頭部や脚部だけの高さを調節できる機能が追加されるなど多彩な機能がある。 | ● 要介護4、5。 ● 重度の寝たきり状態の方。病院や介護施設者向けの介護ベッドで一般市場にはほとんど出回っていない。 |
ベッドの長さと幅
介護ベッドはタイプによって長さと幅が異なるため、使用する部屋に合った規格を選ぶ必要があります。ベッドを設置する際は、基本的には壁にべたづけで設置せず、5~10cm以上壁から離して設置します。そのため、規格と部屋の大きさがギリギリの介護ベッドは選ばないようにしてください。
介護ベッドの基本サイズは下記の4種類です。メーカーによって長さと幅が若干異なりますので、あくまで目安としてご覧ください。
サイズ | 大きさ | こんな方におすすめ |
---|---|---|
スーパーショートサイズ | 幅85cm×長さ169cm | ・身長150cm未満の方におすすめ。 ・部屋が大きくない場所でも比較的設置できる。 |
ショートサイズ | 幅83cm×縦180cm | ・身長150cm~160cm未満の方におすすめ。 |
レギュラーサイズ | 幅91cm×縦191cm | 155cm~175cm未満の方におすすめ。 |
ロングサイズ | 幅91cm×縦205cm | 175cm以上の方におすすめ。 |
介護ベッドの付属品
介護ベッドの主な付属品はサイドレールおよびベッド柵、スイングアーム、介護用テーブル、マットレスです。介護ベッドは一般的なベッドに例えるならフレームになります。そのため、セット販売などされていなければ、これらの付属品は別売りになります。特に勘違いされやすいのがマットレスやサイドレールです。
セット販売でなければ、基本的にはベッドのみの販売ですので、購入される際はそれらがセットになっているかを必ず確認してください。
予算
介護ベッドの値段はピンキリです。多くの機能が付いてる介護ベッド、つまりモーター数が多いほど値段は高くなる傾向にあります。また、介護ベッドを専門に販売しているメーカーの介護ベッドは良質なので価格は高く設定されています。あくまで目安にはなりますが、モーター数別の値段が下記の通りです。
値段 | モーター数 |
---|---|
3万~6万円 | 1モーター |
6万~15万円 | 2モーター |
10~20万 | 3モーター |
20万円以上 | 3モーター以上 |
マットレスの種類
介護ベッドには一般的なマットレスは使えません。そのため、介護ベッドを購入後は介護ベッド専用のマットレスを購入する必要があります。ただマットレスにもさまざまなタイプがありますので、身体状況などに応じたマットレスを選んでください。体に合わないマットレスを使用し続けることで、床ずれの原因になる場合があります。
硬いマットレス
起き上がりや立ち上がり、寝返りが出来る人は体が沈み込まない硬めのマットレスがおすすめです。硬いマットレスは、自分で動ける人もしくは支えがあれば動けるといった自立度が高い人が選ぶ傾向にあります。
自立度が高い人が柔らかいマットレスを使うと、かえって動きにくく、姿勢が不安定になり危険です。さらに寝返りをうつ時に柔らかすぎると、上手く寝返りができなくなるので不眠の原因にもなります。
柔らかいマットレス
寝心地を優先したい人や、ベッドにいることが多い人は体が適度に沈み込む柔らかいマットレスがおすすめです。寝返りはできるけど、体への負担を軽減したいといった除圧を目的に柔らかいマットレスを使う人は多いです。
柔らかいマットレスでも硬度が微妙に違うものがたくさんありますので、実際に触って確かめるのが確実です。
体圧分散マットレス
1日の大半をベッド上で過ごす人は、体圧分散マットレスがおすすめです。体圧分散マットレスは、床ずれを予防することを目的に作られています。
寝返り、起き上がりなどの動作ができない人は、柔らかいマットレスでは床ずれの予防は難しい場合があるため、体圧分散マットレスを選ぶと良いでしょう。
おすすめの介護ベッド
これから介護ベッドの購入を検討している方に向けて、今までお伝えした内容を踏まえたおすすめの介護ベッドを4つ紹介したいと思います。ぜひ、購入の参考にしてみてください。
1モーター 介護ベッド
こちらの1モーター介護ベッドは、介護ベッド付属品の手すりとウレタンマットレスが付いた大変お得な介護ベッドになっています。
ベッドの調整するコントローラーは、オンオフと上昇下降のみとシンプルなので高齢者にも分かりやすく作りになっています。手すりの設置は、頭部、腹部、脚部の3つ場所に差込口があるため、状況に合わせて手すりの設置ができます。
注意点として、購入時のオプションでベッドの設置付きを選択しなければ、配送は全て玄関でのお渡しになり、組み立ては購入者様になりますので設置希望の方は必ず項目を確認してください。
2モーター パラマウントベッドQ-AURA
パラマウントベッドは、介護施設や病院でも使われている代表的な介護ベッドの1つです。そのため、機能性や安全性、耐久性は文句なしです。
機能は0~75°まで起きる背上げ機能、背上げと脚上げの連動、20~60cmまで上がる高さ調整が備わっています。また、コントローラーには液晶パネルが付いており、ベッドの角度や高さなどが表示されるため誰でも同じ位置に調節できます。
こちらのタイプは、サイドレール2本とマットレスが付いてるセット販売になっています。マットレスに関しては、通常のマットレスとプラス5000円でストレッチフィットマットレスに変えることが出来ます。
ストレッチフィットマットレスは、マットレスが伸びる仕様になっているので背上げなどを行う際の体のずれを抑えてくれます。また、MRSAを含む細菌類や真菌類、酵母類の繁殖を抑制してくれるので衛生面でも安心して使うことができ、汚れた場合もマットレスごと丸洗うことができるので大変おすすめです。
組み立てを希望の方は別途料金はかかりますが、組み立てを希望する方は購入前に組立希望の項目に必ずチェックを入れてください。
3モーター パラマウントベッドrento
パラマウントベッドrentoは、上記で紹介したタイプより省スペースに対応した3モーターの介護ベッドになっています。
介護ベッドを昇降させる際、通常だと前後に多少動いて昇降するのですが、その多少前後することによって壁に当たり動作しない場合があります。特に部屋の大きさに限りがある方はそういったタイプは不向きと言えます。
しかし、こちらのタイプは、垂直昇降方式を採用しているため真っすぐ上に上がるため前後に余裕がない場合でも設置ができます。上記のタイプと比較すると、昇降時の前後が約13cmも削減できているので、省スペースしかない方はこちらのパラマウントベッドrentoがおすすめです。
こちらのタイプも上記同様にセット販売しており、サイドレール2本、制菌素材のシーツ、マットレスが付いています。マットレスに関しては、追加料金を払うことで4つの中から選ぶことができます。
組み立て希望をされる方は、別途料金はかかりますが購入前に組立希望の項目にチェックを必ず入れてください。
折りたたみ式介護ベッド
こちらの折りたたみ式介護ベッドは、背上げ脚上げ連動機能のみの介護ベッドになっています。機能が少ないということもありますが、価格は大変お安くお買い求めがしやすくなっています。ちょっと体の調子が悪くなっていたという方にはおすすめです。また、組み立ては不要なので届いたらすぐに使うことができます。
サイドレールは付いていないので、柵に掴まって起き上がりや立ち上がりが必要な方は、別途で購入する必要があります。