2019年11月14日、社会保障審議会の介護保険部会で、厚生労働省は介護施設に入所(入居)する高齢者への給付費を前に住んでいた自治体が負担する【住所地特例制度】の対象を拡大する議論を始めました。現行では、認知症高齢者が共同生活をする【グループホーム】などといった施設は対象外で、高齢者の地方移住が進まず、財源負担の不公平感を払拭するかが課題になっています。
住所地特例制度とは
原則、介護保険の給付費は被保険者(利用者)の住所地の市区町村が保険者になります。被保険者が住民票がある市区町村に保険料を支払い、住民票がある市区町村から介護保険給付を受けるという流れです。
しかし、原則通りの運用をすると介護施設が多い市区町村ほど介護保険給付費が増え、介護保険財政を圧迫することになり、介護施設が少ない市区町村との財政上の不公平感が生じます。そうした事態を無くすために【住所地特例制度】が設けられました。
例えば、住民票が【千代田区】で体が【新宿区】だった場合は、千代田区に保険料を払い、介護給付費を受けることになります。また、自身が住民票がある地域外の施設を選んだ場合【今の地域の保険料と同じ料金体系で入所(入居)ができる】可能性もあります。
高齢者の介護移住が進まぬワケとは
現在、住所地特例は介護保険施設(特養・老健・療養型)、特定施設(有料老人ホーム(賃貸方式のサ高住は除く)、養護老人ホーム、軽費老人ホーム)に移住した場合に限ります。17年度末の利用者は16万人ですが、介護保険に加入する高齢者の0.5%に留まっています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、東京圏(1都3県)で75歳以上の人口は2015年から2025年の10年間で175万人に増える見込みですが、地方への移住を希望する60代男性は37%、女性が28%おり、受け入れ先の体制環境が課題になっているのが現状です。
現在、各市町村の財政負担をならす【調整交付金】で対応していますが、住所地特例制度の拡大は急務となっています。