高齢者のうつ病や孤独の対策にVRを使用 アメリカ

肉体的・金銭的といった何らかの理由で自力で旅行に行けない高齢者を対象に、アメリカではVR(バーチャルリアリティー)体験を通して、高齢者の夢を叶える取り組みが行われています。そしてさらに、そのVR体験が高齢者のうつ病や孤独を癒す効果があるとして神経心理学者から注目されています。

VRは社会的孤立から救う

その取り組みを行っているのは、VRジニーを運営する【イコーリティーラボ(Equality Lab)】です。イコーリティーラボは、マイアミディド群による【エイジ・フレンドリー・イニシアチブ(Age Friendly Initiative)】の少額助成金を受けて活動しています。

アメリカ・フロリダ州マイアミに住むニディア・シルバ(Nidia Silva)さん(78)は、イコーリティーラボが配布したVRゴーグルで海でイルカと一緒に泳ぐという夢を叶えることができました。VRゴーグルを付け、VR体験をしたシルバさんは「別世界に連れて行ってくれる。とても気持ちが落ち着いた」「まるで海で泳いでいるようだった」と満足げに語っています。

この取り組みについてイコーリティーラボは、高齢者を【孤独や社会的孤立】から救う目的で行っており、特に1人暮らしや介護施設に暮らしであまりやることがない高齢者を対象に活動しているということです。

メンタルヘルスの改善に効果的

最近の研究でVR体験は、うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)、その他のメンタルヘルス改善の一助になるとされています。

マイアミ大学(University of Miami)の神経心理学者アルドリッチ・チャン(Aldrich Chan)氏は「画像による誘導や瞑想などが、認知力の低下などに非常に有益であることが分かっている」「VRを通して、直接の行動的介入も個人にとって非常に役立つ」と説明しています。

さらに、クラスク氏の研究(今年に掲載された学術誌【ジャーナル・オブ・コンサルティング・アンド・クリニカル・サイコロジー(Journal of Consulting and Clinical Psychology)】)によりますと、良い体験をする治療を受けた人は、通常の治療を受けた人(陰性症状(意欲低下など)に重きを置いた治療)に比べて、【うつ病・不安神経症・ストレスレベル】が低いことが分かったと発表しています。