今月11日までに、群馬大大学院医学系研究科「定方 哲史」准教授と「細井 延武」講師の研究グループが高齢者らの手脚が無意識に震える症状について、小脳から運動に関する電気信号を送る神経細胞の突起部分で、タンパク質の一種が失われることが原因と、世界で初めて解明しました。
◇ タンパク質の一種が失われることが原因
研究グループは、老化に伴い顕著に現れる症状「本態性振戦」の研究を行いました。研究では、細胞内でタンパク質の輸送に関わる「クラス2アーフタンパク質」を作れないマウスを用意して観察したところ、マウスが起きている時だけ首や前脚が常に強く震えていることに着目。その原因を詳しく調べたところ、小脳から神経細胞へ送り出す電気信号が弱まっていることが分かりました。
電気信号が弱まっていたのは、神経細胞から次の神経細胞に伸びて信号を送る突起部分で、細胞外からナトリウムイオンを取り込むタンパク質の一種「Nav(ナブ)1.6」が失われたことが原因と判明。このタンパク質が欠損することで、ナトリウムイオンを基にした信号が極端に弱まり、運動の制御が困難になったと結論付けました。
◇ 高齢者の就労継続の一助へ
本態性振戦の症状は、65歳以上高齢者の14%に見られ、また治療方法は対症療法のみとなっているため、今後、高齢者が就労継続する上で大きな障害になり得ます。
定方准教授は「老化で、Nav1.6が失われているとも考えられる。根本的な治療法の開発も試みたい」と話しています。