今月から新元号の「令和」が始まりましたが、大正時代に生まれ、昭和、平成と皮膚・泌尿器科医として70年以上も診療を続けている医師がいます。その医師は「西尾 吉兵衛(きちしょうえ)」さんです。西尾さんは、大正7(1918年)年生まれの100歳で、現役で鳥取市内で診療を行っています。
◇ 開業後も物資不足で苦労
西尾さんは、旧東京歯科医学専門学校(東京歯科大)を卒業し、1940年代前半の戦時中に歯科医院を開業させました。
各地で戦況が悪くなるにつれ、当時の日本は医師不足が深刻化し、歯科医を旧制医学専門学校に編入させたり、受験資格の基準を緩めたりと人材確保に躍起になっていました。西尾さんも旧米子医専(鳥取大医学部)で学び直したということです。
西尾さんが、実際に医師免許を取得したのは戦後の1947年。その頃の日本は戦争に負け、貧困を生き抜くために多くの女性たちが体を売って生計を立てていました。しかし、劣悪の状況からか性病で苦しむ人たちが多く、そんな状況を目の当たりにした西尾さんは、性病に苦しむ人たちを救うために鳥取市で診療所を開設しました。
しかし、開設後も治療薬不足は常態化しており、確保するのに数日かかることも。さらに、診察時間以外でも患者が次々と診療所に来院することもあり、体力の限界を感じることもあったということです。
◇ 4つの時代を生きる名医
西尾さんは、新元号の令和の『令』は「命令や規律といったことを感じ、国から締め付けられる印象が強い」と懸念も抱くも「戦争という過ちを犯さず、平和の『和』のような時代になってほしい」、「4つ目となった時代を見続けるつもりだ」と語っています。