近年、高齢者はたんぱく質が足りない傾向にあると言われ、厚労省やメディアなどでは「たんぱく質を摂りましょう」などと強調しがちです。もちろん、それは間違いではありませんが、実はたんぱく質と同等に「脂質」も非常に重要な栄養素と言われています。脂質と聞くと、健康を害するイメージがありますが、脂質は高齢者の死亡リスクに大きく影響していることが、最近の調査で明らかになっています。
◇ 脂質の摂取頻度が死亡リスクに影響
脂質の種類としては、「飽和脂肪酸:豚肉や牛肉の脂身、ラード、バター」「一価不飽和脂肪酸:オリーブ油」「多価不飽和脂肪酸:EPAやDHAなどの魚油」です。
秋田県大仙市研究が「地域シニアの要介護を防ぐ健康づくり活動」での調査結果で、総死亡リスクが油脂類の摂取頻度に影響していることが分かりました。この調査では、平均年齢73歳の1,254人を6年間追跡調査を行い(追跡期間中に235人が死亡)、内容は、1週間の食事の回答を求めるアンケートを実施し、油脂類の摂取頻度を4つのグループに分けて総死亡リスクを比較しました。
● 「ほぼ毎日食べる」と回答したグループを基準にした総死亡リスク
・「2日に1回」:12%
・「週1~2回」:23%
・「ほどんど食べない」:39%
※数値は、性別年齢の影響を加味し酌量
油脂類の摂取頻度が少ないほど総死亡リスクが上がっていることから、いかに脂質の摂取が重要なのかが分かる結果となりました。
一般的に、脂肪はたんぱく質の2倍以上のエネルギーを発揮し、少ない量でも効率の良いエネルギー源となります。そのため、高齢になればなるほど、たんぱく質の栄養もさることながら、脂質も非常に重要となってきます。しかし、偏って摂取することは他の病気を誘発する恐れがあるため、バランスよく摂取することが健康促進の秘訣だと言えます。