2019年3月26日、厚生労働省が公表した高齢者に対する虐待件数(2017年度)で、社会の意識が高まり掘り起こされる虐待が増加している一方で、ストレスや介護疲れ、介護現場の人手不足などが虐待増加の背景にあるとみられています。
◇ 虐待被害者の7割が女性
施設・居住系で介護職員が加害者となったケースでは、特養(30.4%)、有料老人ホーム(21.6%)、グループホーム(14.3%)。それに対し、訪問・通所系の虐待は、訪問介護(3.1%)、通所介護(6.7%)でした。また、虐待を受けたとされる高齢者の約7割が女性で、認知症状など重度な状態の人ほど、虐待の被害を受けやすい傾向にあると報告されています。
● 虐待が起きた要因(介護職員による虐待)
・「教育・知識・介護技術などに関する問題」・・・60.1%
・「職員のストレスや感情コントロールの問題」・・・26.4%
・「倫理観や理念の欠如」・・・11.5%
・「人員不足や人員配置の問題、関連する多忙さ」・・・7.5%
また、虐待をした介護職員の54.9%が男性職員によるものでした。
◇ 介護疲れ、ストレスが最多
在宅での虐待で、ケアマネジャーが最も多く市区町村に相談や通報を行っていたことが分かりました。また、介護保険サービスを受けている虐待被害者の場合では、虐待の深刻度が相対的に低かったことも分かりました。その背景として、ケアマネジャーは利用者宅に月1回以上の訪問が義務付けられているため、訪問時の面談を通して、本人や介護者の状況(状態)などが把握しやすい点があるといえます。
● 親族が虐待を行う要因
・「介護疲れ・介護ストレス」・・・24.2%
・「虐待者の障害・疾病」・・・21.8%
・「経済的困窮」・・・12.3%
● 親族の続柄
・「息子」・・・40.3%
・「夫」・・・21.1%
・「娘」・・・17.4%
「息子・夫」による虐待が6割と、介護職員の虐待同様に男性による虐待が多いことが明らかになりました。今後、高齢化が進むわが国では、このような虐待問題はさらに増えてくると考えられます。
特に、今の介護の在り方は、施設から在宅へという「自宅で介護をする」流れになっているため、より一層、在宅での虐待が増えていくことが予想されます。今後虐待を防いでいくためにも、「介護者のストレスを溜めない」「介護をしやすい環境を整えていく」ことが重要となっていくことでしょう。
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