老人ホームで91歳男性が孤独死 2週間気づかず 明石

2019年5月、兵庫県赤石市の介護スタッフが24時間常駐する介護付き有料老人ホームで、施設に入居する当時91歳の男性が居室で【孤独死】した件で、男性の遺族が施設の運営会社に慰謝料など1100万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴していたことが2020年6月17日に分かりました。

2週間気づかず、孤独死

提訴は3月13日付。訴状などによりますと、明石市にある介護付き有料老人ホームで19年5月22日、2階の居室で男性が倒れているのを同施設の介護職員が発見。医師の検死の結果では同10日頃に亡くなっていたと推定され、遺体の痛みが進んでいたということです。夜勤の担当職員が「最近、男性の姿を見ていない」と話したため、ドアを開けて入り発見したということです。

死亡する前の同2日には、死亡した男性が家族に電話で「4月下旬から発熱がある」と話していたため、家族は同施設職員に体調の確認などを求めていました。その2日後に家族が男性と面会した際、顔色が悪く、腰が痛いなどの訴えをしていたため、見守りを要望していました。しかし、施設側は2日以降、男性の居室を訪ねていませんでした。

遺族は、施設の契約上、健康状態に懸念がある場合は居室を訪ねるなどの安否確認をする義務があると主張。一方、男性は介護の必要がない【自立】だったため介護保険サービスや、医師の往診、食事提供、清掃サービスなども利用していませんでした。また、施設内のレストランで食事をせずに自室で調理をしていたということです。

訴訟の答弁書によりますと、運営会社は家族から【体調確認を求められなかった】などとし、「日常生活のサポートを負う義務は定められていない。(男性との)契約は賃貸人と賃借人の関係に類するもの」と反論しています。

施設側に再発防止、行政指導

同施設では現在100人近くが入居しており、そのうちの介護保険サービスを利用していない入居者は2割ほどということです。

こうした問題により明石市が同施設に調査に入り、施設側が男性のプライバシーに対する配慮を理由に健康状態や安否確認を十分に行わなかったなどが原因とする結果を公表し、再発防止を求める行政指導をしました。

厚生労働省は問題を受け、有料老人ホームは入居者が希望していなくても毎日1回以上の安否確認をするようにと全国の自治体に通知を出しています。

同施設の支配人は「男性は介護保険サービスや清掃サービスなどを利用しておらず、すぐに発見できなかった。反省しなければならず、申し訳ない。再発防止を徹底する」としています。

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