高齢者の乳がん患者数がピーク 特に60代後半が最多

近年、高齢になってから乳がんを発症する人が増えており、国ががんと診断された人のデータをまとめた【全国がん登録】の速報では、2016年に約95,000人が新たに診断され、年齢分布では65~69歳(約13,000人)が最多となっています。また、75歳以上について約2万人を超え、1年間に診断される75歳以上の割合は、ここ10年で11%から16%に増えています。

閉経後の60歳代後半がピークに

従来の乳がん患者は、閉経前の40歳代後半が最も多い傾向でしたが、10年ほど前から閉経後の60歳代後半に乳がん発症のピークが移ってきました。この年齢のピークは、欧米の患者の傾向と似てきており、愛知県がんセンターの副院長は「高脂肪の食事など、生活習慣が欧米化になってきたことが影響しているのでは」とみています。また、「乳がんの進行には早いタイプもあるため、高齢者だから遅いという認識を持っている人は注意が必要」と警鐘を鳴らしています。

高齢者でも手術が最善治療

日本乳癌学会の指針では、治療の考え方は高齢者だろうと若い人だろうと基本的な考えは変わらず、手術を最善の治療として勧めています。

手術の内容については、乳房の全切除ではなく、比較的体に負担が少ない【部分切除】が中心で、薬物療法だけの治療と比べ、進行や再発を抑えることが実証されています。ただ、体力を必要とする全身麻酔が基本なので【手術に耐えられる健康状態】が条件となります。高齢者の場合だと、基礎体力や持病、認知面などの影響で年齢だけでは判断できない部分があるため、家族の支援や様々な情報を基に本人に最適な治療法を考える必要があるとしています。

最低2年に一度は検診を

高齢者の中には【がんは死ぬ病気】【治療は過酷】といった昔のイメージが残っている人も少なからずいます。しかし、放置をすれば痛みが増長し、しこりが皮膚に届き臭いを出したりと、生活を送る上で支障が出てきます。

専門家は、高齢者の乳がんはエックス線や触診などで見つけやすく、治療も十分に可能なので検診や受診を呼びかけています。(国は40歳以上の女性は2年に一度、マンモグラフィーの検診を推奨している)