東京大学などの研究グループの調査で、高齢者が趣味活動やボランティアなどといった「地域活動」に参加する割合が多い地域では、うつ傾向になる高齢者が少ないことが分かりました。また、日本疫学会の学会誌では「地域活動に参加しやすい環境を整えることで、高齢者のうつ予防に繋がる可能性がある」と発表しています。
◇ 12道県の65歳以上にアンケートを実施して調査開始
「日本老年学的評価研究」(JAGES)のデータを、研究グループの山口三輪、東京大客員研究員らが分析。北海道、神奈川、愛知など12道県の65歳以上の約3万人を対象としたアンケートを実施しました。
● 地域活動への参加(趣味活動・スポーツなど)
● 地元のへの愛着
● 住民同士の助け合い
についての内容を、地域ごと(小中学校区間)に算出。それを、3年間うつ傾向の発症との関係を追跡調査しました。
◇ 3年間の追跡調査の結果とは
趣味やスポーツなどといった地域活動の参加者が6%増えると、うつ傾向の発症者が「男性7%・女性6%」減少することが分かりました。反対に、「地元への愛着」や「住民同士の助け合い」の割合と、うつ傾向の発症との関連はなかったことが明らかになりました。
◇ 「人の関わりの多さ」がうつ傾向の予防に
では、何故「地域活動」がうつ傾向を減少させたのか。研究グループは調査結果の理由について、地域活動が活発になることで、近隣住民と顔合わせる機会が増え、地域の見回りや訪問なども増えた。つまり、「人との関わりが増えること」がうつ傾向の予防につながったと分析。また、本人が活動に参加していなくても、地域活動が活発な地域に住むことで、うつ傾向の発症を低くするとしています。
高齢者のうつの発症は、配偶者やペットなどとの死別が原因で発症することが多いとされています。また、厚生労働省の調査では、65歳以上のうつ病を含めた気分障害の推定患者は「4万人弱」いることが分かっています。
うつを発症すると、精神部分だけではなく、身体機能の悪化に繋がる傾向にあるため、要介護になる危険性が高まります。そういったことから地域全体で「地域活動に参加しやすい街にする」ことが、高齢者の生活を支える意味で今後重要になってくるでしょう。