認知症対策・新オレンジプラン

平成30年4月13日に総務省で公表された65歳以上の高齢者の人口ですが、統計至上初の3500万人を超え4人に1人が高齢者となっています。そして高齢になるにつれて、体が衰え、病気の発症がしやすくなってしまうのが、高齢者の特徴です。そして高齢者がかかる病気で多いのが、認知症です。

わが国の認知症患者数は、2012年時点で約462万人となっており、高齢者の約7人に1人となっています。また軽度認知障害に至っては約400万と予測されています。そのため、65歳以上高齢者の約4人に1人が認知症もしくは予備軍といわれています。
※軽度認知障害:正常の方と認知症の方の中間を表す。

そして、2025年団塊の世代が75歳以上になる年には、認知症患者が約700万人となり、65歳以上の高齢者は約5人に1人にまでなると予測され、高齢化が進むにつれて、今後ますます認知症患者が増えると見込まれているのです。

そのため、認知症の方でも出来る限り住み慣れた地域で、自分らしくありのままで暮らし続けるよう、国は「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」(新オレンジプラン)を策定されました。

新オレンジプランの基本的考え方

認知症高齢者等が住み続けられる地域づくりを実現するために、7つの柱に沿って、新オレンジプランを総合的に進めていくことになっています。対象期間は2025年までとなっておりますが、それまでに3年ごとに行われる介護保険制度改正で、動向や状況を見て内容の見直しを行うことになっています。

2018年度時点で介護保険制度の改正が行われ、新オレンジプランの見直しがここ最近で行われました。2025年まで後残すこと7年です。見直しが行われるのが、後2回(2021年・2024年)しかありませんが、現在決まっている新オレンジプランの基本的な考え方をご紹介していきます。

社会全体が認知症の理解を深めるための普及・啓発の推進を行う

社会全体、国民全員が認知症の人を支えるために、認知症の方を支える人の養成(認知症サポーター)、学校教育などで認知症の人や高齢者の目線になり、それぞれの理解を深めるための普及・啓発活動を行います。

各認知症の状態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供を行う

医療と介護等が切れ間なく受けられるために関係機関が連携していきます。 認知症の状態に応じて、認知症の方が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることが出来る環境の整備を行います。

まず認知症の早期発見をするために、早期診断・早期対応を軸に、行動・心理症状や合併症等が確認された場合にも、医療機関・介護施設等で適切にサービス提供が行われるよう循環型の仕組みの構築を行っていきます。

若年性認知症施策の強化

働き盛りの世代(65歳以下)が認知症を患ってしまうと、それまで生活をしていた環境が180度変わってしまいます。例えば就労や生活費、子どもの教育費等の経済的な打撃を受けます。

またこういったケースだと主介護者が配偶者となることが多く、場合によっては本人や配偶者の親等の介護と重なることもよくあります。そのため複数介護が出来る場所や就労・社会参加支援等、包括的に強化をしていきます。

認知症の方を介護している人へも支援を行う

認知症の方の介護をしている人へ支援を行う必要があります。認知症の方を介護している人へ支援を行うことで、その方に介護方法や接し方などの正しい知識が身につくことになります。それは認知症の方の生活の質の向上に繋がるからです。

また介護保険制度の理解をし、適切に利用を行うことで介護者の精神的身体的負担の軽減が狙え、介護者の生活も守られます。そのため介護と両立が出来るために、介護者へも支援する取組を推進していきます。

認知症の人を含む高齢者全員にやさしい地域づくりの推進を行う

現在のわが国では、上記でも説明をしましたが65歳以上の高齢者、約4人に 1 人が認知症もしくはその予備群といわれています。そのため認知症の方、予備軍の方も含め高齢者全員が暮らしやすい地域となるために、生活支援や環境の整備、就労、社会参加の支援、安全の確保などを推進していきます。

認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進する

認知症症状の解明や各認知症の行動・心理症状を起こす仕組の解明、予防法、診断方法、治療方法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究の推進を行います。また、それらの研究や開発を行い、一定の効果が得られた場合には、迅速に社会全体に周知をするよう取り組みます。

更に認知症に対する研究の開発及びその成果の普及の推進については、「健康・医療戦略」(平成26年7月22日閣議決定)、医療分野研究開 発推進計画」(平成26年7月22日健康・医療戦略推進本部決定)に基づき 取り組むこととなっています。

認知症の方の視点とその家族の視点を重視

今までの認知症に対する施策については、介護する側からの視点に立った考え方でした。しかし現在では、認知症患者を介護する側だけの視点だけはなく、認知症患者の視点にも立ち物事を考え、認知症について社会全体で取り組み、理解を深める機会の場が必要となっています。

また認知症症状の初期段階の把握をすることで、認知症の進行を抑え、認知症になっても生きがいのある生活が出来るよう考えていかなければなりません。それには認知症施策の企画や立案、またその評価を行い、いかなる時も双方の視点を重視した取り組みを進めていく必要があります。