毎日の入浴が要介護になるリスクが防ぐ

2018年11月12日に開催された「日本老年学的評価研究プロジェクト」のプレス発表会で、入浴の頻度が週7回以上の高齢者は、週2回以下しか入浴をしない高齢者と比べて要介護になるリスクが約3割低いことが明らかになったと発表しました。この調査の対象となったのは、全国18市町村に居住する要介護認定を受けていない高齢者「1万3786人」を3年間追跡したものです。

では、何故週7回以上入浴することで、週2回以下しか入浴しない高齢者に比べて要介護認定になるリスクが下がるのか、深堀していきたいと思います。

東アジア圏特有の習慣に着目

日本は、諸外国よりも「長い労働時間」や「有給休暇を取らない」「休日出勤」など健康を害する影響が多々ある国として指摘をされているにも関わらず、日本は男女ともに長寿国となっています。

そういった、健康とは真逆の生活をしている日本人が何故長寿となるのかを研究グループは、東アジア圏特有の「浴槽入浴」に着目しました。

また、フィンランドでは、サウナ入浴の頻度が多いと死亡率が低いという研究結果が出ているように、入浴には健康促進に対する何らかの影響があると考えられています。

夏と冬に分けてデータの採取を行った

入浴の調査を行った研究グループは、対象の高齢者に「1週間に何回浴槽に浸かるか」を夏と冬に分けてアンケートを実施。回答が得られた1万3786人の要介護度を約3年間追跡をしました。下記が、その結果となります。

この調査の結果を見ると、週0~2回の入浴が要介護になるリスクの基準とした場合、週3回以上から夏冬共に減少していることが分かります。また、週0~2回と週7回との差を比べるとおよそ「夏:28%」「冬:29%」もリスクが減少していることが分かりました。

入浴と要介護度の関連性

まず、なぜ入浴と要介護度のリスクが関連しているのでしょうか。研究グループの論文によると、下記のような効果を挙げていました。

● リラックス効果
● 抑うつの予防
● 認知機能低下の予防
● 細胞保護効果
● ヒートショックプロテインの産生による抗炎症作用
※ヒートショックプロテインとは、体温上昇により、「傷んだ細胞を修復する働き」を持つたんぱく質のことをいい、そのたんぱく質を産生させます。 さらに、免疫細胞の働きを促進させたり、乳酸の発生を遅らせるなどの効果を持っています。

要介護度は認知症が始まり

要介護度が上がる大きな要因の一つが「認知症」です。認知症の発症により、今まで当たり前に行っていたことができなくなるため、生活をしていくには、人の手を借りなければなりません。そのため、自ずと要介護度は高くなります。

上記の論文の効果によると、抑うつ状態や認知機能低下の予防もあると報告されています。つまりそれは、要介護度が上がる大きな要因を防いでいることになります。

さらに、入浴には温熱刺激があるため、運動同様の効果が得られるとされています。認知症の予防には、適度な運動も必要とされているため、入浴をすることで認知症の予防に関係している可能性があります。

入浴の注意点

いくら入浴が要介護度のリスクを下げてくれるといっても、体調などを気にせずに入ることは逆効果となる場合があります。

たとえば、高血圧や心疾患を持病として持っている高齢者であれば、お湯の温度や入浴時間などの入浴の仕方に配慮しなければなりません。

さらに、冬場であればヒートショックを引き起こす危険性も十分あるため、高齢者の入浴には注意が必要です。

ですが、自身の体調を考え注意を払えば、入浴は安全に入ることは出来ます。また、入浴は健康促進につながるため、これを機に入浴回数を増やしてみるのはいかがでしょうか。

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