新設された配偶者居住権とは?

2018年3月13日に政府は「配偶者居住権」の新設を主軸とした民法の改正案が閣議決定されました。これは民法の相続に関する仕組みが1980年以来の約40年ぶりに大きく改正されることになります。今回の抜本的な改正の狙いとしては、残された配偶者が住居問題や生活費問題を少しでも改善することが狙いです。

配偶者居住権とは

冒頭で述べた約40年ぶりに改正される「配偶者居住権」。これは現在の高齢化社会に対応した改正となっていますが、そもそもこれはどういったものなのか。ここでは「配偶者居住権」について説明したいと思います。
「配偶者居住権」とは、被相続人の遺産である建物を相続開始時に、住宅賃料などの支払い発生がなく、住むことが出来る権利です。そのため「配偶者居住権」を行使することにより、所有権がなくても居住権を持っているため、所有者に追い出されることはありません。
このあと後述しますが「配偶者居住権」で得られる建物の財産価値の査定については、生存配偶者の年齢を平均余命などと照らし合わせて算出するので、配偶者が高齢であれば低い評価額になります。
次に今回の改正は、大きく分けて4つのポイントがありますので、下記をご覧ください。

配偶者の保護

前述した「配偶者居住権」を新設することにより、残された配偶者の老後の生活資金を得やすくし、住居を失わずにする仕組みとなっています。そのため残された配偶者、特に高齢の配偶者の生活を保護することを目的にしています。
まずこちらの図をご覧ください。

現行では、遺言のない配偶者と子どもで遺産を分配する際は、配偶者の取り分は2分の1となります。図の例でいえば、評価額2,000万円の住居と預貯金が3,000万円の場合、現行では配偶者の取り分は2,500万円です。さらに所有権を得ることになれば、預貯金の取り分は500万円です。
現行のままでは、住居があっても預貯金の金額が500万円では今後に不安が残ります。しかし今回の改正を行ったことにより、配偶者は居住権を取得できる代わりに、所有権と比べて評価額は低くなりますが、その分預貯金が増えることになりました。そのため図の通り、居住権が1000万ならば、預貯金の取り分が1,500万円に増えます。

遺産分割

婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、遺産分割で配偶者が優遇されることになりました。具体的には、住居を生前贈与か遺言で贈与の意思表示を行えば、原則として遺産分割の計算対象から外れることになります。そのため、住居は対象とみなさないため、他の財産を分けることになりますので、結果配偶者の取り分は増えます。

遺言の保管方法について

現行での遺言の保管方法については、自宅保管か弁護士や金融機関での保管でしたが、今回の改正により全国の法務局でも保管が出来るようになりました。理由としては、被相続人が死後に書いた遺言書が分からなくなるケースが多発していたためです。
そのため、公的機関である法務局に預けることで、遺言書の所在が分かりやすくなり検認も不要となります。改ざんや紛失を防ぐことができ、死後の手続きがスムーズとなります。
さらに遺言の書式についても改正があり、自筆証書遺言の財産目録をパソコンでの作成が可能となりました。

介護や看病を行った方への配慮

被相続人を生前に、介護や看病を行っていた人へ配慮した改正が行われました。これは誰でも良いという訳ではなく、被相続人の親族ではあるが、相続の権利がない人が対象です。そのため、介護保険サービスの業者などは対象外です。
よくある例として、被相続人の息子の嫁が被相続人の介護や看病を積極的に行っていた場合です。今回の改正により介護や看病の貢献分を相続人へ金銭の請求が出来るようになりました。しかし気をつけなければいけないのが、法律上で婚姻が認められた夫婦が対象ですので、内縁の妻などの事実婚は対象外となっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回の改正は、配偶者の今後の暮らしを配慮しての動きとなりました。一番大きいのは、居住権と預貯金の分配方法なのではないでしょうか。結局、手元に残っているお金がなければ生活をしていくのは大変です。そして介護や看病を行った方へも遺産をもらえる権利が設けられたことが、個人的には「国はよく見ている!」と思いました。というのも、例文でも出しましたが、息子の嫁が義父や義母を看るケースが非常に多いです。私はいつも「自分の親でしょ??」といつも思っています。そのため、せめて貢献分でももらえるなら御の字なのではないかと思っています。
話は少し脱線しましたが、今回の改正で残された配偶者の暮らしが少しでも豊かになればと思います。しかし改正を行ったことによる新たな問題点も恐らく出てくるでしょう。今後はそういった問題にも迅速な対応をしてもらいたいです。