高齢者の家庭内事故

65歳以上高齢者の事故発生箇所

体が衰えると病気の発症するリスクなどが高くなりますが、その他にも転倒による事故もまた比例して多くなってきます。では転倒事故は一体どこで起こるのか、下記の図をご覧ください。

こちらは厚生労働省からの公表されている平成29年度版高齢者白書からのデータを基に作成しました。この図を見て分かるように、住宅での事故が77.1%と他と比べて圧倒的に多く出ています。高齢者の交通事故などよく耳にしますが、一般道路での事故は6.9%とその差は歴然です。

屋内での事故発生箇所

前述した通り、事故が発生しやすい環境としては、屋内が圧倒的に多いことが分かりました。では、屋内とはどこのことを指すのか、下記の図をご覧ください。

図のデータによると、居室(寝室)45.0%、階段18.7%、台所・食堂17.0%という結果になっています。居室(寝室)での数値が他の数値より、約2倍ほど高くなっています。

居室での事故は何故多いのか

居室が多い理由については、それぞれの居室の環境によるため、これが「原因です」と正直答えられません。しかし私の経験上の話にはなってしまいますが、居室で共通して多い事故について、いくつか例を出して紹介したいと思います。

ベッド周辺での事故

何故ベッド周辺かというと、ベッド周辺というのは、起き上がったり、座ったり、立ち上がったりと比較的に動作が多い場所です。さらに、高齢者の多くは、夜間に目が覚めてトイレに行く方が多いため夜間でも動作が多い傾向にあります。

また夜間の居室内は当然ながら暗所且つ、寝起きによる注意力散漫、力が思うように入らないという悪条件が揃うことで、ベッドからの立ち上がりが上手くいかなく、ふらつき転んでしまうことがあります。また日中も同様ですが急に立ち上がることで、起立性低血圧(立ち眩み)を起こしてしまうことで、転倒をしてしまうこともあります。

これは日中が多いですが、ベッドから物を拾おうとして、前のめりに落ちてしまったケースや、ずり落ちてしまったケースもあります。中にはベッドの上から落ちた物を、孫の手を使って手元に引き寄せようとしているうちに、滑落した方もいました。

布団の段差に引っ掛ける

先ほどはベッドでの事故を紹介しましたが、持っていない方ももちろんいます。ベッドでの条件とは似ていますが、夜中にトイレで起きる際に、暗所且つ寝起きにより足元がおぼつかない時に、布団に足を引っ掛けて転倒というケースがあります。

掴まる箇所が他より少ない

居室は比較的に他の部屋と違い、動線に掴まる箇所が少ない居室が多いです。例えば、食堂であれば、「テーブル」「椅子」「食器棚」「ラック」など大きい家財道具が動線の脇や中央などに置かれていることが多いです。

しかし居室となると、家財道具には囲まれながら寝ているお宅は早々いないと思いますし、家財道具があったとしても動線に張り巡らされている居室は少ないと思います。脇にあっても、出入り口まで繋がるような物はなかなかありませんでした。

居室内での事故を減らすための対策とは

まず前述した例を基に対策について話していきたいと思います。

ベッド周辺での事故

ベッド周辺では、体を動かす動作が多く且つ大きく動かすため、事故を起こすと大きなけがに繋がります。そのため、体を少しでも安定させるためにベッド付近に手すりや安定した家具などを置くと良いでしょう。また今は既存のベッドにでも差し込める手すりや柵がありますので、場所も取らないと思います。

そしてもし可能でありましたら、電動介護ベッドの利用をお勧めします。今の電動介護ベッドは一畳分くらいのスペースがあれば置けますし、家具調の電動介護ベッドもあります。電動介護ベッドには柵がついていますし、高さ調整が出来るため、寝られる方の身長に合わせて調整することで、楽に立ち上がりなどが出来ます。

またこれらは介護保険サービスでも利用できますので、介護認定を受けられている方でしたら、担当のケアマネジャーに相談すると良いでしょう。保険外でも今では安いもので10万以下で売っていますので、探されてはどうでしょうか。

布団の段差に引っ掛ける

正直これは、本人の注意力しかないと思います。しかし「そうはいっても・・・」という方もいますよね。例えば、夜間だけセンサーで反応するライトを設置することで、暗所を照らすことができ、且つ周りが見えるので、布団に引っ掛けるリスクは減少するのではないでしょうか。

掴まる箇所が少ない

掴まる箇所が少ないという方については、手すりの導入を行い、自ら導線を作るのも手です。もしくは、杖や歩行器などの利用も良いと思います。また掴まる場所まで、赤ちゃんの「ハイハイ」で移動する人もいました。確かに「ハイハイ」ですと転倒の危険性はありませんので、ありだと思います。

また夜間起き上がって歩くのが怖いという方でありましたら、ポータブルトイレの設置(簡易トイレ)や尿瓶を常備する方もいました。ポータブルトイレについては、介護保険サービスの利用で、購入が出来ます。

日々のトレーニング

前述でいくつか案を出させてもらいましたが、やはり転倒をしてしまうという方が共通しているのは、①バランス感覚が悪い、②姿勢が悪い、③筋力が低下しているといった方が多いです。

①バランス感覚が悪いと、ちょっとしたことでもふらつき転倒します。
②姿勢が悪いと、重心が傾いているため、傾いた方向へ転倒してしまいます。
③筋力が低下していると、とっさの時の踏ん張りがきかなかったり、足などをしっかり上げる筋力がないため、つまづきやすくなります。

いずれも運動をほとんどしていない方に多いため、日常的にトレーニングをすることを勧めます。もし介護保険サービスを受けられている方でしたら、リハビリに特化したサービス(高齢者が在宅生活を送るために~居宅サービス編~)もあります。

また介護保険サービスを受けられていない方でしたら、自治体が介護予防の一環として、転倒予防体操など高齢者向けた体操教室も開催しています。自治体は高齢者に向けたさまざまな活動を行っていますので、お近くの市役所や回覧板、市の広報などから出ている情報を見て、行かれてはどうでしょうか。そして事故を防止するのは、他でもないあなたの努力次第だということを覚えておきましょう。