高齢者雇用問題と現状について

少し前の日本は、60歳を迎えると定年退職し、年金をもらいながら老後を過ごしていくというのが一般的でした。しかし今では65歳にならないと年金がもらえないので、60歳を超えても働き続けるというのが当たり前となっています。

現在の日本は少子高齢化の影響に伴い、年金制度の維持が危うくなり、増税や年金支給年齢の改定をしなければならないまでに陥っています。

ここでの記事では、60歳以上でも働かなければならない現状と雇用問題に対する政府の対策、そして65歳以上の求職者が受け取れる給付金制度についてご紹介していきます。

定年が延びた原因

近年社会問題となっている、少子高齢化問題。当初の定年の年齢は55歳でした。そして最近まで60歳、そして今では65歳となっています(※60歳を定年としている企業はまだまだあります)。

現在も着実に少子高齢化が進んでおり、更に最近では「年金支給開始年齢を自身の意思で決め、開始年齢が来た時に、もらわなかった期間だけ多くもらえるようにする」という内容の制度の導入が議論されているくらい年金支給の問題は深刻化しています。

では、なぜ年金支給年齢が、徐々に延びていくことになってしまったのでしょうか。

年金制度の限界

1番の理由は、少子高齢化の影響により、年金制度の運用が実質不可能となってきたためでしょう。年金を収める労働者が減ることにより、年金を支払う税金の確保が出来なくなります。そのため、年金制度を維持するためには、もらえる年齢の引き上げが余儀なくされたという見かたができます。

年金支給年齢が延びることにより、延ばした分だけ年金支給にゆとりが生まれると考えられていますが、延ばしたことにより課題も生まれてきます。

年金支給年齢を延ばしたことによる課題

年金支給年齢を延ばした分、その間は国の年金制度にある程度のゆとりが出来ることになります。しかし国民からしてみれば、年金支給が延びるということは、退職した後の5年間は無収入ということになります。

総務省の調べによると、一般的に退職後の月の生活費は約25万円が必要と言われております。またゆとりを持った老後の生活を行うには、約37万円が月に必要というデータもあります。
退職後の空白の5年間を単純計算をしてみると・・・

●月25万円×12か月= 年300万円

●年300万円×5年= 5年間/1500万円
ご覧の通り、退職から年金がもらえるまで、1500万円が必要ということになります。あくまで例であり、個々の生活水準は違いますので、確実に1500万円が必要とは言えません。しかし仮に上記の半分の生活費でやっていたとしても、5年間で750万円もかかってしまいます。5年間というのはあまりにも遠く感じます。

60歳以上でも働ける法律改正

上述で説明をしたように、退職後から年金支給年齢までの期間は、無収入状態ということになります。そのため、年金支給開始年齢までに、「年齢を理由に働くことを阻害しない環境」と「意欲と能力のある高年齢者が、労働のしやすい環境整備」が急務とされています。そういった環境整備をするために、政府は法律の改正を行いました。

高齢者雇用確保措置

国は空白の5年間を埋めるための措置として、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」を定め、また企業は65歳まででも労働者を雇用することが出来る「高齢者雇用確保措置」の導入が始まりました。
この「高齢者雇用確保措置」には3本柱があります。

●定年の廃止
●65歳までの定年の引き上げ
●希望者全員を対象とする、65歳までの継続雇用制度を導入

また「高年齢者雇用安定法第9条」には、65歳までの安定した雇用が出来るように、定年65歳未満としている事業主に、「高年齢者雇用確保措置」である上記の3本柱であるうちのいずれかの措置の実施を義務付けることになりました。

高齢者雇用の現状は

企業の実施率約98%

高年齢雇用確保措置の導入後、65歳までの雇用を行っている企業は約98%となっています。また希望者全員が65歳以上まで働ける企業103,586社中、約71.0%が対応。 更に 70歳以上まで働ける企業は27,740社中、 約19.0%という割合になっています。

ちなみにこのデータは平成26年6月時点のものとなっていますので、高年齢者雇用確保措置は平成25年に改正をされてから、1年程で日本のほぼ全ての企業が基準に満たしています。そのため、現在平成30年における企業の割合は、それより更にアップしていると言えるでしょう。

高齢者雇用確保措置の内訳

3本柱の中で、どの措置を行っているか、厚生労働省の「高年齢者の雇用状況」の集計結果から内訳が出されています。

◎全企業中・・・

●定年廃止・・・2.7%
●定年引上げ・・・15.6%
●継続雇用制度の導入・・・81.7%

継続雇用制度がほとんど

上述の通り、継続雇用制度の導入を行っている企業がほとんどという結果になっています。継続雇用制度とは、本人が希望すれば定年後も引き続き雇用できる制度で、「再雇用制度」とも言います。

継続雇用制度の問題点?

基本的には65歳までの雇用を保証する制度です。そもそも高年齢者雇用安定法に定められている内容では、企業側に65歳までの雇用を行えることとしています。

つまり「企業側に労働者側の希望する条件も考慮しなさい」とは一切書かれていません。そのため、企業側が提示した雇用条件で、労働者側が条件を飲めばそのまま継続できるというものです。納得が出来ないということであれば、辞めざるを得ないと思います。

ですから、60歳を機に働く時間数や内容は変わらないのに、年収が落ちた、役職から外れたなどといったケースはよくあります。雇用は継続できるが条件が悪くなるといったことがありますので、手放しでは喜べないのが現状です。

65歳以上が受け取れる給付金

高年齢求職者給付金

この高年齢求職者給付金とは、65歳前に働いていた人が65歳に達しても、そのまま働き続けていた人が、離職してしまった際に給付を受けられる制度です。こちらは所管のハローワークで手続きを行ってください。

●持ち物

・雇用保険被保険者離職票(退職した会社から送られてきます) 
・個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載のある住民票)
・本人確認ができるもの(住所付きを求められるので、免許証が手っ取り早いです)
・写真2枚(3cm×2.5cm)
・認印
・本人名義の普通預金通帳かキャッシュカード(給付を受けるための振込先)

●給付の額

・「基本手当日額(50~80%)」×「給付日数」

●給付の条件

6か月以上1年未満(労働していた) 30日
1年以上(労働していた) 50日

※ポイント1:労働の意思、能力があるにも関わらず職業に就くことができない状態にあることが最大の条件ですので、気を付けてください。

※ポイント2:自己都合退職の場合、手続きから約4か月後ほどで給付が受けられます。それ以外の「解雇・契約満了・定年」などによる退職の場合は、約1ヶ月ほど給付が受けれるようになっていますので、お間違えなく。また給付期間については、離職日の翌日から1年間です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では、高齢者の雇用についてご紹介しました。少子高齢化の影響により、年金制度が危機的状況に陥っています。

その対応策としては、年金支給年齢の引き上げと高年齢者の雇用促進です。上記でも説明をしましたが、年金支給年齢が引き上げになるということは、60歳からもらえるはずだった年金がもらえないということになります。

それはすなわり、年金支給まで無収入ということになります。貯金などがある方は問題ないですが、必ずしも全員がそうではありません。そのためには60歳以上でも働ける環境整備が必要となってきます。

幸い現在は国の整備のおかげで、60歳以上でも働ける企業がほとんどです。しかし少子高齢化問題は日に追うごとにますます深刻になってきています。恐らくではありますが、いずれかは年齢で区切る雇用はなくなるのではないかと思います。私たちも体が動くうちは働けばよいですが、そうでなくなった場合は一体どのように収入を得れば良いのでしょうか。国にはそこまでも考えてもらいたいと思います。