目次
高齢者が犯す犯罪の72.3%が窃盗
冒頭に書かせて頂いた通り、高齢者が犯す犯罪は、他の犯罪種別と比べて約7割が窃盗ということが分かっています。また窃盗のうち約8割が万引きであり、窃盗の中でも最も多い犯罪です。
しかし近年の高齢者における刑法犯の検挙数については、2015年時点で47,632人と前年と比べてと横ばいでしたが、犯罪者率では2007年をピークに低下傾向となっています。
万引きが多くなる原因
何故高齢者の万引きが多いのか。人生長く生きていれば、やってはいけないことの分別はつくはずです。しかし生きていく中で、さまざまな環境の影響により、常識では分かっていても万引きを行ってしまう理由があります。万引きをしてしまう要因と万引きをした方の心境を事例として紹介します。
地域との関わりが希薄
現在のわが国は、昔と比べて地域同士のコミュニティが衰退しており、且つ核家族や少子化、更にパートナーとの死別などにより、1人暮らしの高齢者が年々と増加しています。
平成27(2015)年時点での1人暮らしの高齢者人口は、男性約192万人、女性約400万人、高齢者人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%となっています。
警視庁の調査結果によると、高齢者で万引きをした者のうち、56.4%が1人暮らし、46.5%が交友関係がないという結果だった。
またこのような調査結果もあります。万引きをしていない一般高齢者と万引きをした高齢者に「一日中、誰とも話さないことがある」と質問を行ったところ、一般高齢者は13.6%に対して、万引きをした高齢者は44.6%と約3倍の差があることが分かりました。
ここからは憶測ですが、万引きを犯す原因の一つとしては、孤独から来る寂しさや今後の生活の不安から来るものなのではないでしょうか。またその寂しさや不安などを相談出来る相手がいなく精神的に追い詰められた末、犯罪行動へと発展してしまうのではないかと私は考えます。
「お金を払いたくない」「生活困窮者」が約6割
警視庁生活安全部資料を参考に、65歳以上の高齢者による万引きの約8割が無職でした。そして、万引きの犯行の動機や原因については、「お金を払いたくない」「生活困窮によるもの」がそれぞれ約3割を占めていました。
これらの背景としては、現役を引退してからの資金繰りや年金だけでは生活していくことが難しく犯行に及んでしまっているのではないかと考えます。
先の見えない人生、そして決められた年金により、少しでも浮かせれたらと思ってしまうのでしょうか。
補足ではありますが、万引きをした高齢者の1割が「許されると思った」と考えている高齢者もいました。個人的に、「なにを勘違いしているの?」と思い、つい補足してしまいました。
事例・・・万引きを行ってしまった方の心境
Aさん(70歳女性)
40歳頃に初めて万引きを行った。それまでは万引きを行っていなかったが、ある事をきっかけに、60歳過ぎから繰り返すようになった。万引きを繰り返す中で、警察には10回ほどお世話になった。罰金2回、その後執行猶予判決を受けたが、執行猶予中に再犯。しかし不起訴処分となった。
その頃のAさんは、夫の帰りが遅く、話す相手もなく、夫や子どもとの関係も悪かった。初めの万引きは、総菜と飲み物1本だった。その時は「お金を出さなくても手に入った」という達成感があった。
しかし最初の犯行以降は暫く万引きをしていなかったが、60歳の時に自分の母親が亡くなったのをきっかけに、再び万引きをしてしまった。万引きを繰り返していくことでエスカレートし、また店員が少ない店を見つけては「今なら盗れるんじゃないか」という衝動に駆られる時もあった。
Aさんに万引きを行ってしまう原因について聞くと、「万引きを初めて行ったときの成功体験」や「家庭内でのストレス、寂しさ」から行ってしまったと答えた。
現在のAさんは、万引きから足を洗っている。
他者との関わりを持つ!
前述した内容で共通することは、「話す相手がいない」「寂しい」といった他人との関わりが希薄というところです。では高齢者たちの「話す相手がいない」「寂しさ」や「孤独」をどのようにして、少しでも解決していけるのか。
正直家庭内での会話を増やすことは、難しいところではありますが、外部で会話の機会を作ることが出来ると思います。
例えば、各自治体で行なっているサークルの集いなどに参加したり、大人数が苦手という方でしたら、社会福祉協議会などで行なっている傾聴ボランティアなどを利用するのはいかがでしょうか。
周囲の受け入れも大事
前述した内容のように、人と関わりを持てる場が設けられても、「敷居が高い」「いきなりは入りづらい」「手続きがめんどくさそう」といったことで、なかなか踏み出せない方も出てくると思います。
そういった初めての人でも入りやすいように、ベタではありますが「初めての人歓迎」「自分たちの活動を細かく記載」「手続きの簡略化」など、少しでも入りやすいような工夫をすることが大事だと考えます。私もそうですが、新しい環境に飛び込むというのは、とてもストレスがかかります。出来る限り、周りが初めての人でも入りやすい環境を作ることが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ご覧になられた通り、高齢者による窃盗及び万引きが多いことが分かります。
万引きが多い原因は・・・
•話す相手がいない
•寂しさ
•孤独感
から来るものが割合を占めているといっても過言ではありません。
ではこういった万引きに対する問題を少しでも減らしていということは、孤独になっている高齢者を少しでも減らしていくということになります。またこういった高齢者の多くは、病気のためや自ら望んで他者との交流を絶っているわけではありません。そのため、交流の場所を分かりやすく告知をしたり、初回の方でも入りやすい環境にすることで、「話し相手がいない」「寂しさ・孤独感」といった悩みを持った高齢者の方を少しでも減らすことができると思います。
しかし「話し相手がいない」「寂しさ・孤独感」が原因と私はいっていますが、万引きは周りのせいですとはいっていません。根本は己の弱さからだと私は思います。ただ人間だれしも強い人ばかりではありません。万引きをした高齢者を肯定するわけではありませんが、こういった高齢者を救ってあげるのも、私たち地域の役割ではないかと考えます。
そして地域が高齢者と密な関係をとることは万引きの抑制以外にも、さまざまな問題にも対応出来るのではないでしょうか。