世界の高齢化問題 各国の高齢化率と今後の影響は?

今から50年前の1970年に日本の高齢化率は7%となり高齢化社会へと突入しました。この時代の日本は【重化学工業分野の技術の革新、国内市場の拡大、原油の安価購入、輸出の拡大】などの活発より一気に経済大国に成長。いわゆる、高度経済成長期でした。

それから50年経った日本は各国の高齢化率を抜き、世界一へと躍進。では、世界の高齢化事情はどうなっているのでしょうか?ここでは、広く一般的に言われている世界での高齢化問題の事情についてお伝えしていきたいと思います。

世界の高齢化率

平成30年度版、高齢社会白書でのデータを基に先進国の高齢化率の推移についてお伝えします。

※出典:内閣府

内閣府が公表したデータによると、日本以外での高齢化率も右肩上がりなのが分かります。

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アジア圏の高齢化率


※出典:内閣府

こちらも内閣府が公表している平成30年版のデータではありますが、アジア圏での高齢化率を見ると日本が断トツに高いのが分かります。しかし、今後の推移を見ると【中国・シンガポール・韓国】が急上昇し、日本の高齢化率に並ぶ勢いです。なぜ、この3か国は急上昇するのか。その原因の1つが少子化と言われています。

わが国も同様の問題を抱えていますが、近隣諸国でも少子化問題に直面しています。2019年12月時点での出生率は【中国:1.68%・シンガポール:1.16%・韓国:1.05%】となっており、この状態が継続したことが高齢化率の急上昇の原因でもあります。

世界の高齢化速度

高齢化の現状を表す指標として、総人口を占める65歳以上の高齢者の人口が7%で高齢化社会、14%で高齢社会、21%にまで達すると超高齢化社会となっています。

現在、超高齢化社会に突入している国は【日本、イタリア、ポルトガル、ドイツ、フィンランド、ブルガリア】の6か国です(2019年9月現在)。

内閣府は、各国の高齢化社会に到達した年代と、その年代から高齢社会までにかかった年数のデータを公表しているのでそれをお伝えします。

高齢化社会・高齢社会の到達年数 所要年数 (7%から14%までにかかった年数)
7% 14%
フランス 1864年 1979年 115年
スウェーデン 1887年 1972年 85年
アメリカ 1942年 2014年 72年
イタリア 1927年 1988年 61年
ドイツ 1932年 1972年 40年
イギリス 1929年 1975年 46年
日本 1970年 1994年 24年
中国 2001年 2025年(推計) 24年
シンガポール 1999年 2019年 20年
韓国 2000年 2018年 18年

※引用:内閣府より

各国の高齢化率を基に、高齢化の速度を比較したものです。この表の中で最も早く7%に達したフランスが、14%の高齢社会になるまでに115年もかかっています。対して、シンガポールや韓国は、フランスなどを含んだヨーロッパよりも遥かに速いスピードで高齢化が進んでいるのが分かります。そして、いかに日本を含むアジア圏での高齢化率が進んでいることが分かる結果となりました。

世界全体の高齢化率の推移

1950年 2015年 2060年(推計)
総人口 25億人 73億人 100億人
65歳以上人口(先進国) 6,274万人 2億2,057万人 3億5,770万人
高齢化率(先進国) 7.7% 17.6% 27.6%
65歳以上人口(途上国) 6,607万人 3億9,132万人 14億5,956万人
高齢化率(途上国) 3.8% 6.4% 16.3%

※先進国:EU・北米、日本、AUS、NZ。途上国:アフリカ、アジア(日本除く)、中南米メラネシア、ミクロネシア、ポリネシア。

1950年の先進国と途上国を比較すると、高齢者の人口数は大差はありませんが高齢化率には開きがあります。2015年になると途上国の方が高齢者の人口を上回っているのにもかかわらず、先進国の高齢化率は格段に伸び続けています。

先進国と途上国の高齢化率の開きについて言えることは主に3つあり、まず1つ目は途上国の総人口が多いため高齢化率が低くなっていること。2つ目は、先進国は年月が経つにつれて医療技術が向上し高齢者の生存率が上がり、それに伴い健康寿命が延びたこと。3つ目は先進国の少子高齢化が急速に進んでいることが言えます。

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高齢化による影響とは

現在、わが国でも高齢化問題に直面していますが、それは年月が経つにつれて世界各地でも日本に近い高齢化問題が出てきます。では、どのような問題が世界で起きるのか。

世界全体が貧困化していく

高齢化率が高いということは、現役世代より高齢者の比率が多くなることを意味します。高齢者が多くなることは、税金や保険料などの徴収が少なくなり、労働力も落ちるので国の成長に欠かせない生産力なども失われていきます。


※出典:内閣府

どんな時代も若者が次の未来作り、その国を支えていきます。しかし、高齢化が進むと上記の図のような負のスパイラルになるのは必須で、こうした事態が世界全体で起きてきます。

医療崩壊、医療難民の増加

人口100万人あたりの病院数は【日本:66.4、フランス:45.6、ドイツ:37.3、アメリカ:17.1、イタリア:17.6%、スペイン:16.7%(※アメリカ2016年、他17年のデータ)】となっています。高齢化が進展すれば日本ですら医療崩壊が起こると危惧されていますが、日本より病院数が少ない諸外国ではその医療崩壊は顕著に現れると考えられます。

医療崩壊の例を出せばイタリアが記憶に新しいと思います。昨年12月より武漢で新型コロナウィルスによる感染者が初めて確認され、2020年4月現在でもその蔓延は留まることを知りません。そして、イタリアでも新型コロナウィルスの蔓延が深刻な状況に陥っています。イタリアでの爆発的に増えた感染者の原因の1つが医療崩壊と言われています。

WHOの調査によるとイタリアの医療水準は2000年時点では世界第2位を誇っていましたが、2007年以降の金融機関危機以降、財政赤字などを削減するため医療費が削減され、国民千人あたりの病数が2000年時の4.2から3.2にまで減少しています。諸外国と比較すると【日本:13.1、ドイツ:8.0、フランス:6.0】。また、医師の早期退職や給与削減で医師不足も起こったのも要因と言われています。

Global Burden of Disease Study (2017)(世界の疾病負荷研究2017年版)によりますと、高品質な医療を受けるための医療従事者の確保は世界の半分程度と推計され、アメリカでは2020年に100万人、日本では2025年に250万人の看護師が必要とされています。

高齢になると、体の衰えにより病気の罹患率が増え、且つ重症化しやすいため、医療機関への受診率が増えます。しかし、そこに医療機関や医療従事者が潤沢でなければ、十分に医療が受けられず死亡する人は増えていくでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
高齢化社会を迎えた年ではヨーロッパ圏の国々が先でしたが、いつしかアジア圏の方が高齢化率、スピードの速さなどが顕著だということが理解できたと思います。そこには、少子化対策が十分でなかったことや、アジア圏でのインフラ整備による健康寿命の延伸などさまざまな要因があって加速しています。これからも世界は日本同様に高齢化の一途を辿っていくわけですが、どのようにして持続可能な世界にしていくのかが今後の課題となっていくことでしょう。