2018年4月の介護保険制度改正により決まった身体拘束等の適正化の推進。今回の改正の中身は、身体的拘束等の適正化を図るために、指針の整備や身体的拘束等の対策を検討する委員会を定期的に開催するなどを義務づけたものとなっています。
またこれらの内容に違反した施設等に対しては、基本報酬の減額となります。ここではこれらについてどの部分が変更となったのか、今後どのように施設は変わっていくのかなど、お伝えしていきます。
改正前の身体拘束の対応について
改正前の身体拘束の対応は、「やむを得ない状況」については認められています。そのやむを得ない状況について、下記にまとめましたのでご覧ください。
・「本人」「他人」の生命や身体に危険を及ぼす場合。(切迫状態)
・他の対応方法を検討したが、適当な代替え案がなかった場合。
・身体拘束を行うための、必要な手続きを取り(親族への説明・親族への同意・書面での同意など)、経緯や経過の記録を残す。
が、現在の身体拘束の主な対応となっています。これらを含めた、その他の対応は各施設の努力行為となります。
改正後の身体拘束に対する対応について
改正前については、身体拘束を行ったのみの対応だけでした。しかし改正後は改正前の内容に加え、「身体拘束をしていなくても行わなければならない要件」が追加されました。変更点については、厚生労働省からの公表文をそのまま載せましたので、ご覧ください。
1・身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を「3月に1回以上」開催し、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図る。
2・身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
3・介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
4.身体拘束廃止未実施減算 :(改正前)5単位/日減算 →(改正後)10%/日減算。
今後はどのように変わっていくのか
まず前述でお伝えした「3」の文章内容の研修期間についてですが、「年2回以上」を行わなければなりません。そして一番大きいのが減算です。厚生労働省より減算の適用については、2018年7月からとなっています。
しかし「6月までに施設の指針を作成したのち、委員会を開催し、研修体制を整備するように」と通知があります。そしていよいよ来月なのですが、もしこのような体制が出来ていないと、減算対象となります。
減算を1度されると、改善状況などの報告をしても、確認され適応されるまで「最短3か月間」はかかります。その間は減算対象ですので、施設の事業収入に大きな打撃です。
改正により職員の負担増加
今回の改正で、身体拘束についての意識が高まることは間違いありません。また誤った身体拘束の対応や体制を行っている施設に対しては減算されるため、施設も改正後の対策に力を入れるはずです。
しかし正直、職員の負担は大きくなります。ただでさえ、日常業務で追われている中に、委員会や研修の開催などを定期的に行わなければなりません。利用者や家族目線からは、良い改正案だと思いますが、こういった努力をする職員に対しての報酬の優遇はありません。報酬がすべてではないですが、実際に行うのは現場の職員です。
知識や能力があってもそれを実行するモチベーションが保てていなければ、今回の改正は絵に描いた餅になるような気がします。利用者に対する改正も必要ですが、現場で働く職員にも目を向け、働きやすい環境にしていくことも大事なのではないでしょうか。