高齢者生活の新しいインフラ 御用聞きのサービスとは

今、東京23区内で、高齢者のちょっとした困りごとを解決してくれる「御用聞き」というサービス業者が人気を集めています。いわゆる、便利屋なるものなのですが、主な作業は「ゴミ出し・蛍光灯の交換・草むしり」などといった軽作業から大型ゴミの排出、家具移動といった重作業など幅広く対応してくれます。私も在宅のケアマネジャーをしていた時は、高齢者に「介護保険サービスの適用外の作業をやってくれるところはないかい?」などの相談はよくされました。では、「御用聞き」とは一体どういったサービス業者なのか、深掘りしていきたいと思います。

「御用聞き」とは

まず、冒頭でもお伝えしましたが、御用聞きは「ゴミ出し・蛍光灯の交換・草むしり」などといった高齢者がするには、少し大変な仕事を行ってくれる「便利屋さん」のことです。

元々、御用聞きの主な活動拠点は、板橋区・練馬区で行っていたそうですが、2019年6月からは東京23区全域に活動範囲を広げ、さらに、年内には多摩地域にも拡大する予定ということです。それだけ、需要があるということですね。

御用聞きの料金設定

ゴミ出しなどといった軽作業は「5分:100円」、粗大ごみなどの大掛かりな作業については「5分:300円」。また、パソコンやスマートフォンの設定や指導なども特別料金で請け負ってくれるということです。

ヘルパーを頼めばいいのでは?

介護保険サービスでも、御用聞きに近いサービスはあります。いわゆる「生活援助(ヘルパーが自宅に来て家事代行)」と言われるものですが、介護保険サービスは電話1本ですぐ利用できるわけではありません。

利用するには「介護保険の新規申請」と「サービスを利用する目的・利用した後の成果」などが書かれた介護計画書が必要になります。

また、料金については「5分:100円」といった料金形態ではなく、およそ「20分以上45分未満:約181円」、「45分以上:約223円」の2種類から状況などに応じて決まります。※地域差あり

一見、料金だけを見れば安く思いますが、依頼できる内容はとても限られています。さらに言えば「自立した生活を営む上で絶対に必要な事(料理・掃除・買い物・ゴミ出しなど)」と「介護保険サービスを使わざるを得ない状況」でなければ利用はできません。

あくまで、介護保険サービスは、国民の保険料と税金で成り立っているので、家政婦のようにはいかないのが現状です。

ちなみにですが、私が高齢者に生活援助を依頼された時に言われた「利用できない依頼」について下記にまとめましたので、参考程度にご覧ください。

介護保険で頼めないサービス 理由
・草むしり ・草が生い茂っても、生活そのものに影響がないため。あくまで生活する場所は、室内。
・酒、タバコなどの嗜好品の買い物 ・自立した生活をする上で、必要な物ではない。また、ヘルパーが行わなくても日常生活を営む上で支障がないため。
・専門店(物産展など)、遠方の店、高価な食材(いつも食べないような食材)、インターネット注文などの買い物 ・基本的に、介護保険サービスの「生活援助」は、自立した生活を営む目的で存在します。左記の事由は、日常的に行われる(頻繁に)家事の範囲を超えているため「家族や自費サービス、便利屋さんなどにお願いします」となる。

・固い瓶の蓋開け
・電球交換
・大型ゴミの排出
・大型家具を動かしてほしい(模様替え)
・物の移動
・携帯電話、インターネットなどの設定の依頼
・生活空間以外での掃除の依頼
(物置・家族が使っている空間・庭・除雪など)
・通販などで買った家具などの組み立て

※自治体によって許可している場合もあります。

こういった内容の事は、介護保険サービスでは利用できません。なので、家族や便利屋さん、ボランティア団体などにお願いするほかありません。

ちなみに、訪問介護事業所(ヘルパーを派遣する所)でも、自費サービス(保険対象外もOK)を行っている事業所はあります。

料金は、概ね「1時間枠から2,000円~」。ただ、その事業所で「当事業所で、介護保険サービスを利用している人だけが可能」といった条件を付けている場所も少なくありませんので、注意が必要です。

なぜ御用聞きが人気に?

若い時だと体が動くので、先ほど紹介した「利用できない依頼」などの事が生じても全く問題ないと思います。

高齢になると、今まで何気なくやっていたことが出来なくなり、それを誰かに頼めるところがなく生活が不便になる。且つ、介護保険サービスも適用外。そんなところに、5分100円からやってくれるのなら頼みたくなると思います。

介護保険サービスや行政支援の隙間を埋める

私も介護保険サービスでは対応できない依頼については、インフォーマルの便利屋さんをよく紹介していました。私の便利屋さんのイメージは「手が届きそうで届かないところをやってもらえる」という感じでした。

ちなみに、御用聞きの客層は「65~75歳の女性」が最も多く、リピート率は8割ほどだということです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
本文でも紹介していますが、このサービスは介護保険や行政支援では対応できないことをやってくれるサービス事業者です。

やはり、フォーマルのサービスというのは、ルールや制限があり、ちょっとした困りごとというのは、意外と対象外になりがちです。日々の生活にお困りな方は、一度相談してみると良いでしょう。