身元保証人がいない高齢者は入所が難しいのか?

公益財団法人成年後見センター・リーガルサポートの実施による全国の施設(1,521)を対象とした(有効回答数が603施設)アンケートの調査結果によると、親族などの身寄りのない高齢者に対して、施設入所を拒否する介護施設が3割もあることが分かりました。

そもそも身元保証人がいないからといって、施設入所を拒むことは出来ません。それは身元保証人がいないというだけでは、断るための正当な理由にはならないからです。ここでの記事では、何故身元保証人がいないだけで断られてしまうのか、そして断ることのできる正当な理由とは何なのか、それらについて皆さんにお伝えしていきたいと思います。
※データ情報元:公益財団法人成年後見センター・リーガルサポート

9割の施設で、身元保証人の有無が求められている

どれだけの施設が身元保証人を重要視しているのか、全国の施設等を対象とした身元保証人の有無を求めるアンケート調査を行いました。そのアンケート結果によると、9割の施設が身元保証人の有無を求めていることが分かりました。では何故9割の施設は、身元保証人を求めているのかについて問うたところ、以下のような回答がありました。

  • 利用料金の支払い
  • ケアプランを含む計画書などの同意
  • 債務の保証
  • 医療行為の同意
  • 居室などの引き渡し
  • 遺体や遺品の引き取り
  • 緊急の連絡先
  • 葬儀の手続きなど
  • 身柄の引き取り

という回答がありました。いずれも施設内で支援を行うために必要な手続きばかりです(死後の整理については別)。それもそのはず、入居中に高齢者の病状により本人が対応できないケースというのは多々あります。
上記の内容についても本人の了承がなければ、話が進まないケースばかりです。
そのためそのような状況になった場合に、身元保証人が代行となり同意や手続きを行うことにより、物事が進められることが出来るため、有無の確認を行っていると考えます。

7割の施設が身元保証人不在者に成年後見人を検討・活用している

やはり身元保証人が不在では、施設側も前述で挙げた内容などから業務に支障をきたします。施設側に身元保証人がいない場合の対応策についてアンケートで確認したところ、7割の施設が成年後見制度の検討や活用を図っていることが分かりました。

入居者に成年後見人がいることにより「後見」「保佐」「補助」と権限は変わるものの、「財産管理権」と「身上監護」を後見人が担うことになります。

ただ注意しなければならないのは、成年後見人等の場合は、身元保証人にはなれないので注意が必要です。成年後見制度についての記載は「成年後見制度とは?【解説付き】」で紹介しています。
おそらくですが、手続きなど法定代理人に関わる部分に関しては、成年後見人を検討しているということだと思います。繰り返しにはなりますが、成年後見人等の場合は、身元保証人にはなれません。

約36%の施設が正当な理由を知らずに、入所の拒否をしていた

アンケート用紙の質問に、「身元保証人等がいないことを理由として施設入所を拒否してはならないことを知っているか」という問いに対して、有効回答率の約36%の施設が「知らなかった」と回答しています。

そのため、正当な理由に当たらないにもかかわらず、約36%の施設も権利のある高齢者を断っていた可能性があることを考えると恐ろしいことです。しかし正当な理由とは一体、どういう理由なのか。下記に正当な拒否理由についてまとめましたので、ご覧ください。

(1)当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合
(2)利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合
(3)入院治療の必要がある場合
※情報元:厚生労働省より

の3つしか存在しません。本来は「介護者がいない」、「介護ができない」などの理由で「介護施設」に入所するというのが本来のあるべき姿です。そのため、身元保証人がいないからといって入所の拒否をしてはならないのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか
ここでの記事は、身元保証人がいなければ施設に入所できないことがある現状についてお伝えしました。基本的に施設側は、正当な理由がなければ「入所の拒否」はできません。その理由については前述でお伝えした通りです。

しかし、施設側も「身元保証人」がいないから入所できませんとストレートに断りません。恐らくではありますが、「現員から利用に応じきれないので、待機になります。」などと角が立たないような理由で断ってくると思います。

本来ならあってはならないことなのですが、アンケート結果を見る限りでは、大半の施設は身元保証人がいない高齢者を警戒していると思いますので、今後これらについての対策が必要となることでしょう。