VR技術で高齢者の生活を支える~QOLの向上~

VR(バーチャルリアリティー)というのは、いわゆる「仮想現実」のことです。VRは、インターネット上で仮想の世界を作り出し、まるで現実世界にいるかのような体験をさせてくれます。新宿区歌舞伎町にもVRのエンターテインメント施設がありますが、VRはゲームなどの分野で多く使われているイメージがあると思います。しかし、そんな中、福祉の分野でも、VRの技術を活用して高齢者の生活を支える事業が広まりつつあるのです。ここでの記事では、福祉の分野でも広がりつつあるVR技術について、深掘りしていきたいと思います。

1人暮らしの高齢者をVR体験で救う

平成27年の内閣府の調べでは、高齢者の1人暮らしの世帯数は「6243世帯」で、全体の「26.3%」の高齢者が1人暮らしをしているということが分かっています。1人暮らしをしている高齢者の中には、家族が遠方にいるなどの理由で、なかなか家族と触れ合う機会がないといった悩みを持っていたりします。また、孤独というのは「うつ」や「認知症」の発症に繋がる可能性を大いに秘めています。

そういった対策として、今はテレビ電話などで画面越しに会話することが出来る時代ですが、VRの技術を活用すれば、さらにテレビ電話を超えた世界を体感することが出来ます。

● 南あわじ市「あわじ国」のVR動画より

紹介した動画は、南あわじ市が制作したものですが、この動画のように、1人暮らしをしている高齢者に向けたVRコンテンツがもっと増えれば、孤独が少しでも解消するかもしれませんね。

VRの多様性

笑わなかった高齢者が笑顔を取り戻す

2018年、コネチカット州ノーウォークの高齢者施設で、仮想現実(VR)プラットフォーム「Rendever」がVR体験を行いました。体験者となったのは、認知症で何週間もほとんど口をきかず、笑顔も見せなかった入居者の女性です。

その女性には、子犬がたくさんいる部屋の仮想体験をしてもらいました。それが、下記の動画の女性の反応です。

動画の女性は、笑顔を見せ、時にはキスをする姿も見せています。こういったVR技術を生かし、閉ざしてしまった心も復活させることができるのも、VRの魅力の1つなのかもしれません。

回想法VR

賛否はあるとは思いますが、VRの技術を取り入れて回想法を行えば、さらにリアルな回想法が行えるのではないかと私は考えます。

◇ 回想法というのは・・・

長寿科学振興財団からの抜粋ですが、回想法とは「自分の過去のことを話すことで、精神を安定させ、認知機能の改善が期待できる心理療法」とされています。

つまり、本人が昔に経験したことを思い出しながら話すことで、適度に脳への刺激となり、認知症の予防などに繋がるということです。そのため、老人ホームやディサービスなどでも、レクリエーションの一環として「回想法」を用いているところは多いです。

しかし、VR技術を回想法に取り入れるには、まだまだ研究が必要となるでしょう。認知症といっても症状は人によって異なります。そのリアルな世界が、逆に悪影響を及ぼす可能性も無きにしも非ずだからです。

昔の思い出をリアル(VR)に

突然のカミングアウトですが、私の父は現在ガン治療のため入院をしているのですが、そんな父が私に「新婚旅行で行った、竹富島の海が見たい」と言いました。治療中なので、もちろん父は行けないのですが、そんな時にVRがあるととても便利だなと感じました。恐らく、私の父のように、行きたくても行けない状況の方はたくさんいると思います。

そういった願いを仮想現実で、実現させることができるのが「おもいで眼鏡」というVRです。まず、こちらの動画をご覧ください。

こちらの「おもいで眼鏡」を開発したのは、株式会社Froritという会社です。おもいで眼鏡とは、希望者が体験した場所やシチュエーションなどをVRの専門スタッフが細かく聞き取りし、その情報を基に、特殊カメラで360度の3D動画を撮影をします。

その後、撮影動画を編集し、専用のVR機材を通じて体験することができます。価格については「5~80万円」となっています。幅広い値段の理由については、撮影内容や場所などによって異なるためです。

◇ 行きたい場所があるけど、行けない・・・

「寝たきり生活をしている高齢者の方」や「物理的に行けない高齢者の方」などさまざまな理由で行きたい場所に行けない方はたくさんいると思います。

そんな時に、「おもいで眼鏡」を活用してもらえば、少しでも行った気分を味わえるのではないでしょうか?

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ここでの記事で紹介した通り、仮想現実だけれども、人を笑顔にしたり、思い出の場所に行くことができたりと、VRには多くの可能性が秘めています。こういった技術を活用していくことで高齢者の生活の質(QOL)の向上に繋がっていくような気がします。しかし、まだVRのコンテンツは発展途上ですので、今後さらに高齢者に寄り添ったVRコンテンツが出てくることを私は期待します。