長野県内2市 高齢者の定義を75歳以上へと提言

2018年9月に、長野県内の「長野市」と「松本市」2市で高齢者の定義を「65歳以上」から「75歳以上」に引き上げを提言しました。何故、長野県は社会保障制度の年齢要件である65歳以上から独自に変更しようとしたのか。その狙いについて、ここではお伝えしたいと思います。

高齢者の定義とは

ブラジルや中国では、「60歳以上」の人を高齢者と定義をされていますが、わが国を含め多くの国では「65歳以上」の人を高齢者と定義しています。しかし実際には、この65歳という線引きは曖昧です。

定義についての議論

2017年1月5日に、日本老年学会理事長が座長を務める「高齢者と定義を再検討をするワーキンググループ」が開催されました。

このワーキンググループでは、現在の高齢者は10~20年前と違い身体的機能の変化の兆候が、5~10年遅延し若返っていると分析しています。

特に、65~74歳の前期高齢者と呼ばれる年代については、心身の健康が保たれている高齢者が多く、また、活発的に社会活動に貢献している高齢者が大多数占めているという見解が出されました。

それを裏付けるかのように、内閣府でも国民に向けて「何歳以上を高齢者とするか」という調査を実施し、「70歳以上もしくは75歳以上」からが高齢者と考えている意見が多いという結果が出されました。

〇〇以上が高齢者と答えた割合
65歳以上 6.4%
70歳以上 29.1%
75歳以上 27.9%
80歳以上 18.4%

※参考資料:http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h26/sougou/zentai/pdf/s2-8.pdf

長野県の2市の狙いは

冒頭でお伝えした通りですが、9月から長野県市内の「長野市」と「松本市」が高齢者を65歳以上から75歳以上に引き上げの提言をした内容について、各市はその年代である当事者と企業側の意識を変え、高齢者に社会で活躍してもらうのが狙いだといいます。

また、長野県の人口は2018年4月時点で206万5168人。そのうち65歳以上の人口は64万3045人と全体の31.4%が高齢者が占めています。

年齢が上がるにつれて、就職率は右肩下がり

長野労働局の情報によると、2017年度55~59歳の就業率は40.5%だったの対し、60~64歳は35.0%、65歳以上に至っては21.8%と年齢が上がるにつれて右肩下がりでした。

体力や生活環境にもよりますが、55~59歳の就業率の約半分に留まっているのが現状です。

そのため、社会保険労務士や人事労務の経験者が、企業が65歳以上の方を雇用する場合に抱える課題や制度導入の環境整備の支援などを行う「65歳超雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザー」を2018年度から設置しました。

今後の高齢者雇用の課題について

10月22日に安倍首相が座長を務める未来投資会議では、企業の継続雇用年齢を65歳から70歳へ引き上げる方針を示しました。しかし、実際には企業側が高齢者を受け入れる体制うんぬんより、高齢者に対する負の先入観が大きいとされています。

私は、会社経営をしている友人数名に「70歳以上への引き上げについてどう思うか」と尋ねたところ、口を揃えて「正直困る」「ん~好ましくはない」と答えました。

その理由の中でも一番多かった答えが、年齢が上がるにつれて「順応性に欠ける」「新体制への柔軟性がない」「凝り固まった思考が時には周囲にとって悪となる」と答えました。

また高齢者の中には「経済的な理由で仕方がなく働いている人」と「やりがいを持って働いている人」の2種類存在し、前者の方が比較的多く、仕方がなく働いているためなのか、企業への貢献が乏しいと話していました。

これらの話は、全ての高齢者に当てはまるわけではありませんが、少子高齢化で人手不足がますます色濃くなっていく昨今。高齢者側と企業側の意識改革が、今後さらに重要になっていくことでしょう。

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