高齢者の体温における正常値や基準値について

体温は、血圧やSPO2と同じで体調を表すバロメーターの1つと言っても過言ではありません。最近では、新型コロナウィルスの感染の有無の目安にもされ(現在は風邪症状が2日以上続く場合等へ変更)、健康状態を確認するためには必要不可欠になっています。ただ、高齢者の体温は若者とは少し温度が異なり、高齢者の方が低く測定される傾向にあります。では、高齢者の体温の正常値・基準値は一体何℃なのか?ここでは、高齢者の体温についてお伝えしたいと思います。

高齢者の体温の基準値

結論から言うと、高齢者の体温の基準になる温度は36.66℃です。

日本老年医学会雑誌によりますと、65歳以上の男性943名、女性1671名(自力で生活をしている者)を対象に腋窩(腋の下)測定を行い、その際、高齢者の体温と比較するために成人にも腋窩測定を同時に実施しました。

結果、高齢者の基準値(論文では平均値)は36.66℃、成人は36.89℃。その差は0.42℃で高齢者の方が少し低い値が出たことが分かりました。高齢者の男女別で言えば、男性36.55℃(成人男性との差:0.34℃)、女性36.72℃(成人女性との差:0.42℃)と高齢女性の方が高い結果になりました。

また、腋窩測定は体型により左右されることも分かり、肥満の人ほど体温が低いことが分かっています。

※参考文献:日本老年医学会雑誌より

高齢者の体温の正常値・異常値

一般的に言われている正常値は36~37℃前後、異常値については35℃以下、38℃以上です。ちなみに、37.5~37.9℃が微熱と言われています。ただ、高齢者だと体温の変化に鈍いため、特に低体温などには注意が必要です。

これらの正常値と異常値は、あくまで1つの目安としてください。体温は個々人で異なるため、定期的に検温を行い、普段の自分の体温を知っておくことが重要です。

高齢者の体温が低い原因

人間の体には最適な体温に保つ機能が備わっています。ですが、高齢になると体温が低く測定される傾向にあります。では、なぜ高齢者は低く測定されるのでしょうか。

基礎代謝の低下

基礎代謝というのは、生命活動を維持するために必要最低限のエネルギー量のことを指します。その必要最低限を表す条件としては、空腹時や早朝時、安静時のことを差しますため、バリバリ運動している人や日々活動している人だと必要最低限のエネルギー量は異なってきます。一般的に言われている成人男性の基礎代謝量は約1,500キロカロリー、女性は約1,200キロカロリーが必要とされています。

人は、生命維持のために体の中で熱を作りますが、その役割を担っているのが【筋肉と肝臓】です。筋肉の役割は、ブドウ糖などをエネルギーに変換。肝臓は、食べ物から取り込んだ栄養素を代謝し熱を作り出します。

しかし、年齢とともに筋力や肝臓は衰えていきます。それが基礎代謝の低下に繋がります。特に筋力に至っては、高齢に伴い筋肉量や運動量が減るため、熱を作り出す機能が極端に衰えます。そのため、高齢者は若者と比べて体温が低くなる傾向にあります。

体温調整機能が低下

体温調整を行っている機能は視床下部と言われる脳の一部です。視床下部の役割は、簡単に言えば、エアコンの自動調節機能のようなもので、体の適温に向かって上がったり下がったりしてくれます。

例えば、80℃のサウナに入っても体も一緒に80℃にはならないのは、視床下部が体の温度を適正に保つように指示をしているからです。視床下部は予めセットされた温度(適正温度)になるように調節してくれているため、体温は一定の温度を保っています。

ただ、加齢に伴い視床下部は徐々に衰えていくため、体温調整が上手く出来なくなっていきます。外気温は高いのに「寒い、寒い」といって厚着している高齢者を見たことはありませんか?それは体温調整が上手くできないためです。加えて、上記の熱を作り出す機能も衰えているため、高齢者は体温が低くなりやすくなっています。

体温は時間帯で変化する

人の体温は1日のリズムで変動するため、体温は正確には一定ではありません。人は24時間単位で【朝・昼・夜】の体温リズムがあります。その1日の中で人は産熱(熱を産む)、放熱を繰り返して生きています。これを産熱と放熱の概日リズムと言います。

一般的に言われている産熱と放熱の概日リズムは、昼間に産熱量が増え体温を上昇させ、夜間・朝に向かうにつれて放熱量が優位になり体温が低下していきます。朝測定した体温と昼間測定した体温が違うのはそのためです。

ただ、体調が良好であれば昼間と夜間との温度差1℃未満であることが多いですが、1℃以上の差がある場合は何らかの病気(風邪含む)にかかっている場合があるので、高齢者の方は特に油断は禁物です。

そうした変化を見極めるためにも、時間ごとに自分の平熱を覚えておくことが体調管理をする上でとても重要になります。

体の部位で温度は変わる

基本的には、体温は脳や臓器がある部分が高く、生命維持のためにある一定の温度に保っています。これを【中核温】といいます。ただ、検温する時に脳や臓器に体温計を指して検温をするわけにはいきません。そのため、体の中心部や脳に近い部分で測ることで、より正確な体温を測定することができます。

一般的には、ワキ・口腔内・耳・肛門からになりますが、欧米では口腔内、日本ではワキが主流の測る部位となっています。ただ、口腔は口に加えるだけで済みますが、ワキの場合はワキの中心部に当てたり、角度、深さなど調整する必要があるため、実は測定の難易度が少し上がります。

そのため、正確に測るためにも本人にあった体温計を手に入れる必要があります。

高齢者のオススメの体温計を紹介

現在、昔と違ってさまざまな種類の体温計があります。大きく分けて3つのタイプがありますので、下記で紹介します。

① 実測式体温計:測定部位のその時の温度を測定する体温計です。昔でいうところの水銀体温計です。正確に測定する場合はワキで約10分、口腔内では約5分が必要で、時間はかかりますが正確な体温を測定できます。

② 予測式体温計:検温開始から温度と温度変化を分析・演算方法により、ワキ約10分後、口腔内では約5分後の体温を予測する体温計です。予測式は、実測式のデメリットを補うために開発された体温計と言われています。

③ 赤外線センサー体温計:赤外線センサーで温度を捉えて測定する体温計です。測定時間は最短0.5~1秒から可能。赤外線センサーなので体に触れることなく検温ができます。

実測式が正確な体温が測れるのでオススメなのですが、時間がかかるのがデメリットです。

例えば、認知症の方でジッとしていられない人もいますので、そうした方は実測式は向いていません。かと言って、医師の指示で予測ではなく正確な体温が必要とされている人では予測式ではダメです。

こうした例えのように体温計は、その人の環境で使う種類は変わります。ここでは、上記3つ特徴をふまえた高齢者にオススメの体温計を紹介したいと思います。

予測式体温計

こちらの商品は、ワキ・直腸・口腔での検温が可能な体温計です。予測式なので検温測定は早く、8秒で測定結果がでます。そして、最終測定値が記録されるので前回測った体温と比較することができます。また、液晶画面に表示される文字は大きいため高齢者にも優しい商品となっています。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【在庫】電子体温計 MC-681 けんおんくん
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こちらの商品は、先端が平らになっているのが特徴です。先端が丸形だと接地面積が少ないためエラーが起きやすいのですが、平らだと接地面積が大きいため挟みやすくエラーが起きずらいため誰でも正しく検温することができます。また、耳が遠い高齢者に向けて、検温終了ブザー音が高温と低温を組み合わせた音になっているので、終了音が聞き取りやすくなっています。

検温スピードは平均20秒。最終測定値機能、オートパワーオフ機能(自動電源OFF)が備わっています。

実測式+予測式体温計

こちらは、実測式と予測式機能が備わった体温計です。約20秒で測定される体温は予測式。20秒経過後からは実測式測定に自動移行します。モニターにはバックライトが備わっているため、夜間や暗い場所でも測定結果が見られます。

赤外線センサー体温計

この商品は、赤外線センサーで熱を感知するため体に触れることなく、0.5秒で測定することができます。体に触れることがないので衛生上によく、認知症などでジッとしていられない人でも瞬時に検温できるため、大変便利な体温計です。

まとめ

体温は体の状態を表すバロメーターの1つです。ですが、そのバロメーターも朝・昼・夜で異なります。また、高齢者の場合は温度の変化に鈍いため、定期的に検温を行い自分の平熱を知っておくことが健康管理の一環として重要です。本記事でもお伝えしましたが、体温の正常値は36~37℃前後です。もちろん、個人差はありますが、通常より1℃以上異なる場合は何らかの病気を疑い、病院受診を強く勧めます。