生活保護を受けていても老人ホームに入れるのか?

厚生労働省の被保護者調査(令和元年12月分)によると、わが国の生活保護世帯は163万7,003世帯、うち高齢者は89万6,335世帯(単身世帯:82万970世帯/2人以上:7万5,365世帯)となっています。

高齢者世帯に至っては、前年同月より1.6%増加している状態です。また特に注目してもらいたいのが、単身世帯の数が9割という点です。生活保護を受給者する人の多くは親族の手助けが得られない人がほとんどです。
すると、単身世帯ということは体を悪くした際、介護をしてくれる人がいないことになります。もちろん、在宅介護を受けながら1人暮らしはできますが、どこかで限界は来ます。

そうなると最後の砦・終の棲家となるのが【老人ホーム】です。ただ、老人ホームとは言えでも収入や家族構成、要介護度などといった情報で入居者(入所者)を選ぶ時代となっています。
そうした中で、社会的不利とも言われている生活保護の高齢者が老人ホームに入ることができるのかを、ここではそのことについて深掘りしていきたいと思います。

生活保護を受けていても老人ホームに入れるのか?

結論から言うと入れます
では、どういった老人ホームなのか?次で見ていきたいと思います。

特別養護老人ホーム

真っ先に選択肢として挙がるのが【特別養護老人ホーム(以下、特養)】です。特養は、有料老人ホームなどと比べても費用が断トツに安く、且つ所得に応じて費用負担の軽減があるため、費用の問題はほぼなくなります。ただ、特養に入所するには【要介護3以上】の条件を満たす必要があります。

まず最低ラインの要介護3のレベルとは【立ち上がり・歩行・食事・排泄・入浴・着替え等】といった動作をする際に、ほぼ全面的な介助が必要な状況、且つ常に誰かの介助や見守りを必要とする状態のことを指します。そして、要介護4.5のレベルは、要介護3よりさらに悪化した状態で、いわゆる寝たきり状態のレベルとなります。

ちなみに、特養は申し込み順に入所出来るわけでなく、状態が重い人から優先的に当選します。極端に言えば、仮にあなたが5年前に入所の申し込みをしたとして、あなたより状態が重い人が昨日申し込んだ後、1床の空きが出た場合、その人が入所になります。

つまり、最低ラインである要介護3を満たしても入所の申し込みが出来たというだけで、すぐに入れないことの方が多いのが今の現状です。地域によっては何百人待ちというところもあり、【申し込み=すぐに入所】ではありませんのでご注意を。

有料老人ホーム

民間施設が運営している【有料老人ホーム(以下、有料)】です。有料は、特養よりも施設件数が多いので、競争率が落ちるので条件さえ合えばすぐに入居できる可能性はあります。ただ、生活保護受給者に支給される家賃扶助・生活扶助(家賃や生活費)には、当然規定額があるので規定の額範囲内に収まる施設でなければなりません。

民間施設は、月々の費用が高額になる傾向にあり、入居一時金が必要な施設もあります。ですが、入居一時金がない施設もありますので希望は捨てないでください。

ちなみに、家賃扶助や生活扶助の額については、物価や賃貸相場などで加味されるため、居住地の市区町村によって異なります。有料であれば、一般的には都心部より郊外にある有料の方が見つかりやすい傾向にあります。例えば、東京都でも23区ではなく、他県に隣接する施設や山奥にある施設と言った感じです。

ただ、希望する物件が見つかっても市区町村で金額が異なりますので、費用面をよく調べ、且つ生活保護受給者を受け入れてくれる施設なのかをよく精査することが重要です。

費用負担について

生活保護受給者の場合は、老人ホームの家賃・管理費は住宅扶助として定められた規定額内で老人ホーム側に支給されます。

介護保険サービスについては、通常であれば1~3割負担になりますが、生活保護受給者の場合は【介護扶助】が適用されるため、自己負担はありません。生活費(食費・光熱費)については、生活扶助として必要な額が支給されます(医療の場合は、医療扶助)。

ただ、金額については各市区町村で決められているため、規定額内に収まる老人ホームを探す必要があります。

生活保護受給者用の料金体系の設定の有無

老人ホーム・高齢者住宅等に、生活保護受給者用の料金体系の有無について調査した結果が下記の通りです。

ある ない 無回答
介護付き有料老人ホーム 9.5 62.6 27.9
住宅型有料老人ホーム 28.4 52 19.6
サ高住 23.9 48.8 27.3

※出典:公益社団法人「全国有料老人ホーム協会」平成25年度有料老人ホーム・サービス付高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書より

介護付き有料老人ホームは極端に低い値になっていますが、他2つの住宅では20%台となっています。無回答がどちらなのかは気になるところですが、全くないわけではないので自身の経済状況や生活環境にあった老人ホームが見つかる可能性はあります。

生活保護受給者の入所に対する懸念

本記事では、生活保護受給者でも老人ホームの入所・入居ができる点について触れました。ただ、すぐに見つかるのかと言えばそうではありません。あってはならないことですが、生活保護受給者を敬遠する施設は少なからず存在するからです。

大きな理由の1つが生活保護受給者には身寄りがいないことがネックになってきます。それは、家族構成がしっかりしている人であれば、施設で何かあった場合や連絡事項などすぐに家族と連絡が取れスムーズに事が進められますが、身寄りがいない人だと施設側が苦労します。さらに、認知症を患っている人ならなおさらです。

私が介護施設に勤めていた時に実際に直面したことで言えば、夜間帯の救急搬送の時です。通常であれば家族に連絡し、施設もしくは直接病院に行ってもらうのですが、身寄りがいなければ、施設職員が付き添うことがほとんどです。夜間帯であれば人数は少ないため、1人でも欠ければ施設側は大変苦労します。

こうした理由などから、生活保護受給者を敬遠する施設はありますので頭の片隅に置いておいてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
老人ホームに入所・入居する状況だと、恐らく担当ケースワーカーに老人ホームについて相談していることだと思います。ケースワーカーも多くの高齢者の生活保護受給者と関わっているため、そうした人たちを受け入れてくれる施設の情報は豊富に持っています。もし、現住所に該当する施設がない場合は、他の市区町村を探すことになります。

決まった場合は、移管手続きになりますが、細かい手続き内容についてはケースワーカーがアドバイスしてくれるので問題ありません。積極的に自分に合った施設を探すと良いでしょう。