高齢者が高血圧になる原因と予防策とは

わが国の高齢者の高血圧の有病率は非常に高く、高血圧が原因で合併症を発症し、それが原因で亡くなる人は多くいます。
厚生労働省が3年ごとに実施している高血圧の患者調査によると、平成29年調査(2020年3月時点では最新)では、継続的な治療を受けている高血圧の総患者数は993万7,000人。

1年間に高血圧で死亡した人数は9,567人で、高血圧が関連する脳血管疾患による死亡総数は1億9,880人となっています。この人数は高齢者だけではないですが、高血圧は加齢とともに増加し、75歳以上の高齢者の8割が罹患していると言われています。
では、なぜ高齢者は高血圧になりやすいのか。ここでは高血圧になる原因、予防策などをお伝えしたいと思います。

高血圧になる原因

高血圧とは、安静時の血圧が正常値より高い状態のことを言います。高血圧が長期間続くと血管に負担がかかり、やがて血管内壁が傷ついたり、弾力性・柔軟性がなくなって固くなり、動脈硬化を引き起こす厄介病気です。

高血圧の症状は、自覚症状が出づらく気づかぬうちに身体を蝕んでいきます。その状態を放置しておくと合併症(動脈硬化・心疾患・脳卒中・慢性腎臓病など)を引き起こし、ある日突然死に追いやることもあるから【サイレントキラー】と呼ばれるほどの恐ろしい病気でもあります。

ちなみに、高血圧の定義は140/90mmHg以上です。さらに140~159/90~99mmHgをⅠ度高血圧、160~179/100~109mmHgをⅡ度高血圧、180/110mmHg以上をⅢ度高血圧と分類されています。

高齢者は高血圧になりやすい?

※参考:厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室より

こちらは、第5次循環器疾患基礎調査のデータを基にして作成したものです。対象者は、全国の30歳以上の男女で、総数は8,369人(男:3,854人・女:4,515人)。結果については、最高血圧140、最低血圧90以上の割合を示したものです。

高齢者が高血圧になりやすい主な理由は、加齢により血管の弾力性が失われることが一番の原因とされています。いわゆる、弾力性が失われると血液の流れが悪くなり、自立神経の働きも低下するため、血管の収縮や拡張がうまく働かなくなるためです。

高血圧には大きく分けて2つの種類がある

高血圧には大きく分けて2種類あります。それを次でお伝えします。

本態性高血圧症

血圧が高くなる原因が特定できない場合に診断されます。本態性高血圧症は、遺伝や生活習慣(不摂生:塩分の摂りすぎ・運動不足・肥満・不眠など)が原因で起こる高血圧と言われており、主に30~60歳くらいで発症すると言われています。高血圧症患者の80~90%を占めており、高血圧症患者のほとんどが本態性高血圧であることが多いです。

本態性高血圧症の症状はほぼなく、無症状で経過することが多いのが特徴です。無症状だけに放置されやすく、気づいた時には重篤な状態になる場合があるので注意が必要です。

二次性高血圧

他の疾患が原因で直接血圧が上がるような疾患がある高血圧を二次性高血圧と言います。一般的には、35歳以下もしくは60歳以上の高齢者が発症することが多いのですが、本態性高血圧より罹患率は少ないとされています。

高血圧から二次性高血圧として発見されやすいのは、腎血管性高血圧(所見:急な血圧上昇、低カリウム血症)、睡眠時無呼吸症候群(所見:肥満・昼間の眠気)、薬剤誘発性高血圧(所見:薬物使用歴、低カリウム血症)などです。

高齢者が注意すること

高血圧は1つの事柄で発症することが少なく、いくつもの原因が複雑に絡み合って発症します。また、自覚症状に乏しく、時間帯などで血圧が変動するので定期的に血圧測定をすることが重要です。

しかし、ただ闇雲に血圧を測定するのではなく【起床時・食事前後・入浴前後・就寝時】といったように1日の中で「○○時・前後」に測定することが望ましいとされています(気分が悪い時に測るのは言うまでありません)。まず、その中でも下記のような高血圧もありますので、お伝えします。

仮面高血圧
・医療機関、介護施設で測ると測定値が正常なのに対し、自宅で測定すると高い数値が測定されてします。降圧剤による治療中に起こることが多いと言われています。
早朝高血圧
・起床時に血圧を測定すると日中より高い数値が出てしまう。早朝高血圧は、医療機関や介護施設といった場所で測定しても正常値なので自己申告や血圧手帳を見せない限り発見されづらい傾向にあります。また、心筋梗塞を発症する人の多くは早朝と言われています。
白衣高血圧
・医療機関などで測定すると高い数値が出てしまう。これは、不安や緊張といった一時的な事象からくるものが多いです。

糖尿病の合併症に注意

高血圧と関係して合併症を起こす病気はさまざまありますが、その中でも高血圧と糖尿病は深くかかわっています。
糖尿病の有症率は、高血圧の人とそうでない人を比較すると、糖尿病になる確率は高血圧の人の方が2~3倍高いことが分かっています。

それらの病気を罹患する因果関係は【動脈硬化】にあるとされています。動脈硬化の主な原因は、不規則な生活、肥満などです。これらは互いに悪影響を与え続けながら動脈硬化が進み、ある日突然発症します。

厄介なことに2つ病気が合併すると、心臓病や脳血管疾患といった病気に併発しやすく、通常の人より6~7倍も高いと言われています。もし、高血圧と医師に言われたら、糖尿病についても相談しても良いかもしれません。

水分不足

脱水症状と聞くと夏をイメージすると思いますが、冬の時期でも起こります。高齢者は体質上のどが渇きにくくなりますが体内では着実に水分は減っています。水分補給を怠ると血液はドロドロ状態になります。

特に睡眠中は水分補給ができないので、夜から朝にかけて血液が粘っこくなり血が固まりやすくなっています。朝方は血が固まりやすくなっている上に、高血圧の人は血圧が高いので、心筋梗塞などを発症しやすくなるので注意が必要です。

そうしたことを防止するためにも、寝る前や起きた時にコップ1杯分の水分を必ず摂るようにしてください。

ヒートショック

寒い時期や早朝など、暖かい場所から寒い場所へ移動する時に起こるのが【ヒートショック現象】です。室内でよく起こると言われているのが、暖かいリビングから【脱衣所・浴室・廊下・トイレ】です。

人間の血管は、暖かいと血管が緩み血圧が下がり、寒いと血管が収縮し血圧が上がります。寒暖差が激しい場所に移動することで、急激な血圧の変化に血管や心臓が大きな負担となり、ヒートショックを引き起こしてしまいます。

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血圧計の選び方

高血圧が心配な方は定期的に測定することが大事です。それは、上手く血圧がコントロール出来ているかを日々管理することで、最悪な状態を回避することができるからです。

恐らく、高血圧が心配な方だと何らかの血圧計は持っていると思いますが、実は血圧計にはいくつか種類があります。それぞれに特徴がありますので、自身の生活スタイル適した血圧計を選ぶと良いでしょう。

上腕式血圧計

上腕巻きつけタイプ

医療機関が最も勧める血圧計です。巻きつけタイプはカフ(測定時腕にはめる部分)調整ができるので、腕が太い人や細い人でも幅広く使うことが出来ます。また、コンパクトサイズなので家の中でも気軽に持ち運べます。ただ、正しい位置でカフを固定させるには少し慣れが必要です。

ちなみに、この商品は測定結果の文字が大きくて見やすく、カフが正しく巻けているかどうかをチェックしてくれるので安心して測ることができます。さらに、2人分の血圧が記録(60回)できるため夫婦共同で使うこともできます。

全自動タイプ

腕に巻きつけるタイプとは違い、腕を測定器に通すだけで測ることができ、上腕式の中では最も正確に測ることができます。また、腕を通す部分は可動式なので体にあった位置することができます。ただ、このタイプは値段が高く、持ち運ぶには重いというところが難点です。

手首式血圧計

手首式は、軽く且つ、小さいので場所を選ばずに測定できるのが最大の特徴です。ただ、手首式は血圧計を心臓の高さに合わせる必要があります。

この商品は、バックライト付きなので暗い部屋でもモニターの数値を見ることができます。また、正しい位置で測定できているかを知らせてくれるサポート機能がついているので、安心して測ることができます。

そして、アプリをダウンロードすれば、携帯電話から血圧データ(グラフなど)を簡単にチェックすることができます。

高血圧の予防法

基本的には【食事療法】と【運動療法】です。

● 食生活の改善
・塩分を一日6g未満、野菜や果物、コレステロールや飽和脂肪酸(牛肉・バター・卵など)の摂取を制限することが有効とされています。
● 定期的な運動
・有酸素運動を中心に、定期的に無理のない範囲で行うことが有効とされています。
● 肥満を解消
・BMI値をはかり、BMI25未満を目指す。BMI測定:体重[kg] ÷ {身長[m]}×2 。
● 禁煙
● 極力飲酒を控える
・エタノール換算で、1日男性20~30ml以下、女性10~20ml以下。
● ストレスをため込まない

まとめ

いかがでしたでしょうか。
本記事でもお伝えしたように、高齢者は高血圧になりやすい傾向にあります。やはり、それには加齢の影響によるものが大きく、血管の弾力性等が失われ、血管の収縮や拡張が上手く行かなくなるのが一番の原因とされています。

また、高血圧には大きく分けて2種類あり、多くのは人は本態性高血圧症(原因が特定できない)だとされています。しかし、この場合は生活習慣の乱れが原因で起こることが殆どです。そのため。記事内で紹介した食事療法と運動療法を日常的に取り入れることで予防することができます。

高血圧はさまざまな病気を誘発するので、すでに発症してしまった人もこれ以上悪化させないためにも生活習慣の見直しをすることが重要です。

※参考文献:厚生労働省「糖尿病調査」/日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編「高血圧治療ガイドライン2014」より