認知症の便秘を見分ける方法

認知症の方は、便秘からくる「不安」や「苦痛」など、相手に上手く伝えることが出来ません。健康な方ですと、何日間も排便がなければ、下腹部の張りや痛みなどから、何らかの対応をすると思います。

しかし認知症の方は、便秘の原因や、不快感の元が便秘によるものと理解できないことからパニックに陥り、認知症が悪化したと捉えられる行動をとります。そのため、認知症が悪化したと誤解する介護者(家族)もいます。

ここでは、認知症の方が便秘になると起こす行動や、便秘を見分ける方法についてお伝えしたいと思います。

高齢者は慢性便秘になりやすい

まず、高齢になると便秘になりやすい体質になります。いわゆる「慢性便秘」というものなのですが、慢性便秘にはいくつか原因がありますので、紹介していきたいと思います。

慢性便秘の原因

● 水分摂取量の減少
・高齢になるにつれて、喉の渇き感じにくくなるため、水分摂取が消極的になります。そのため、便が硬くなり、排便の頻度が徐々に減少していきます。

● 食事量の減少
・若いころと比べて、活動量が少なくなるなどして、食事量も自ずと減ってきます。そのため、排便に必要な栄養素が確保できなくなるため、慢性便秘の原因になることがあります。

● 筋力の衰え
・通常、排便をする時は、肛門周辺の筋肉を緩ませて排便を促します。しかし、筋力の低下により、肛門周辺の筋肉が上手く使えず、便を押し出す力が弱まります。そういった理由からも、慢性便秘の原因になります。

● 運動量の低下
・高齢になると、活動量が低下するため運動不足になりがちです。運動不足になると、腹筋が衰え、腸の働きが鈍くなるため、慢性便秘の原因になります。

● ストレスによる影響
・高齢者の方は、「病気」「生活」「家族」「金銭」などさまざま理由からストレス感じやすくなります。副交感神経が優位の時に、腸の働きが活発になるため、ストレスの影響を受けていると、慢性便秘に陥る可能性があります。

認知症の便秘を見分け方

排泄時に、最後まで付き添っている介助者でしたら、排便が何日間していないか分かると思います。

しかし、そうでない介助者ですと、排便をカウントするのは難しいと思います(流されてしまう可能性もあるので)。

基本的に、認知症の方は「便秘です」「最近出ていない」と答えられる方は多くはありません。もちろん、認知症には、軽度や重度で症状も異なるので、全ての認知症の方が該当する訳ではありませんが、しかし、認知症の症状が重ければ重い程、その傾向は顕著です。

認知症の方が便秘になると・・・

自分の体に何が起こっているのかは分からないけど、「変な気分」「何か分からないけど気持ち悪い、怖い」「私の体はどうしちゃったの?」など、認知症の方でも不安を感じとることは出来ます。

しかし、その不安から混乱を招き、普段では考えられない行動を取ることがあります。

次にお伝えするのは、認知症の方が便秘に苦しんでいるサインについてお伝えします。

行動や心理状態がコントロール出来なくなる

基本的に現れるのが、BPSD(周辺症状)関連です。BPSDを便秘に置き換えて、簡単に説明すると・・・

便秘で、不安や混乱によるストレスが加わり、「行動」や「心理症状」が上手くコントロールが出来なくなる現象です。

下記に、どういったことがコントロールが出来なくなるか、いくつかまとめましたので、ご覧ください。

● 徘徊が多くなる(帰宅願望など)
・便秘によるストレスや不安感から、絶えずソワソワするようになります。自宅にいるにも関わらず、不安から逃れようと「家に帰る」などといった言動もみられる場合があります。

● 暴言・暴力が多くなる
・上記の例に付随するケースですが、徘徊をしているところを説得すると、不安を助長する者と思われ、敵意を現すといった行動を取ることがあります。また何気なく話しかけただけで、怒鳴るなど怒りっぽくなる場合があります。

● 睡眠障害
・便秘によるストレスの影響で、入眠ができない場合があります。ストレスの影響を受けていると交感神経が優位になるため、眠れなくなる場合があります。

● 異食行動
・いわゆる食べ物以外の物を食べる行動です。不安などからのストレスから異食をしてしまうケースがあります。この行動もBPSD(周辺症状)の一つです。

何度もトイレに行くと訴える

トイレを訴える回数が多くなる場合があります。あまりにも多いと「さっき行ってきたばかりでしょ」「トイレに行っても出てないでしょ」と思うかもしれません。

しかし、排泄がない場合でも、便を出そうとして出せないでいる可能性があります。また、付随して「そわそわ」している場合もありますでの、注意深く観察してみて下さい。

食欲不振

便秘になると、言うまでもなく腸内に便が詰まっています。便が詰まっていると、腸に食べ物を送りづらくなるため、胃の中に食べ物が残りやすくなります。そのため、食欲がなくなり、食事を拒否するようにもなります。

まとめ

いかがでしょうか。私は認知症の方を支援していた時に「認知症がひどくなった」と誤解をしていた時がありました。実際に、主治医に相談すると「便秘ですね」と診断され、薬や浣腸であっさり解決なんてことが多々ありました。

そのため、ここで紹介した行動が顕著に現れた場合は、まず便秘を疑ってみて下さい。また、いつ最終排便をしたのか分からない場合は、専門医などに相談し、指示を仰ぐことを勧めます。

むやみに、下剤など自己判断で使用することは危険を招く場合がありますので、絶対にしないでください。