高齢者のむくみの原因と解消法とは

【むくみ】とは、皮下組織に余分な水分が溜まっている状態のことを言います。高齢者の場合は膝より下からむくみやすい傾向にありますが、その原因は脚だけからとは限らず、全身疾患からきていることも多く見られます。ただ、それは必ずしもといったわけではなく検査をしなければ分からない場合が多いです。ここでの記事では、高齢者に多いむくみの原因と、その解消法について紹介したいと思います。

むくみの原因

むくみの原因を説明する前に、まず血液の流れを理解しなければなりません。血液は心臓から静脈を介して全身(頭~足先まで)に送られます。その血液の中には【酸素や栄養分】などが入っており、細胞から排出された【老廃物や二酸化炭素】などが入った血液が静脈を通して心臓に戻ります。これらを簡単にまとめると【①心臓➡②細胞が酸素・栄養分を取り込む➡③細胞➡④細胞から老廃物・二酸化炭素が排出される➡①心臓】という循環になります。

心臓から足先まで送り届けるのは比較的スムーズなのですが、足先から心臓に戻る過程(④➡①)が大変になります。それは重力に逆らって低いところから高いところに血液を送るからです。そこで効率よく送る役割を担っているのが【脹脛(ふくらはぎ)】となります。

よく脹脛は第二の心臓と言われるように、脹脛も心臓と同じで筋肉が伸び縮みすることで、それがポンプ機能となり血液を低いところから高いところに送り循環させます。しかし、これが何かの原因でポンプ機能の力が弱まると脹脛で血液が滞り、それが足のむくみの原因となります。

ちなみに、むくんでいると思われる脚を5秒間押してみて、1分間経っても痕が残っている場合はむくんでいると考えられます。

むくみには一過性と慢性的がある

実は、むくみには一過性と慢性的な原因があります。一過性というのは「足のマッサージをやったら治った」という場合がこれに当たります。反対に慢性的とは、内臓や血管等に異常がある場合に起こるむくみのことです。これは、一過性と違って「○○をやったら治る」という単純な話ではなくなります。次は、一過性と慢性的な症状について説明します。

一過性のむくみ

一過性のむくみは、病気が原因でむくんでいるわけではないので生活習慣を改めれば基本的には改善されることが多い傾向にあります。

● 運動不足による筋力の低下
・先ほどお伝えした脹脛の役割は、低いところから心臓に送り出すためのポンプの役割を果たしています。しかし、脹脛の筋力が低下するとそれに比例してポンプの機能が低下します。すると、当然ながら脚から心臓に送り出すポンプ機能が低下し、むくんできます。

● 過度な塩分と水分の摂取
・皆さんも経験があると思いますが、味の濃い物を食べた後は水分が欲しくなると思います。それは体内に水分を留まらせようとする機能が働くためです。それが塩分の摂り過ぎによるむくみの原因となります。

● 座りっぱなしの時間が多い
・長時間同じ姿勢の状態でいると、脹脛の動きが少なくなります。ポンプの役割というのは、筋肉の収縮によるものなので、座りっぱなしだと筋肉の収縮がほぼ行われないため、血流が滞りむくみの原因になります。

● 栄養不足
・カリウム、マグネシウム、カルシウムなどといったミネラルや、たんぱく質、ビタミンB1が不足するとむくみが出やすくなります。

慢性的なむくみ

一過性とは違い、慢性的なむくみは心不全や腎不全などの病気が原因で起こる場合があります。それらの病気が原因であれば、脚以外にも顔や手などの全身にむくみが見られたり、息切れや呼吸がしづらくなるといった症状が認められることがあります。

そのため、数日間~数週間以上むくみが続くようならば、何らかの病気の可能性がありますので病院受診をオススメします。

● 心臓の不調(心不全)によるむくみ
・心臓の役割でもあるポンプ機能が正常に働かなくなることで、血流が悪くなりむくみが生じます。

● アルブミン(たんぱく質)の不足によるむくみ
・血中にはたんぱく質の一種である【アルブミン】が存在します。アルブミンは血液中に存在し、血管内外の水分を調整する(水分の取込みや排出)役割を持っています。しかし、何らかの原因でアルブミンが少なくなると、水分調整が出来なくなり(血管の外側に水分が流れる)、むくみの原因になります。
・アルブミンが不足する主な原因としては【たんぱく質の摂取不足】【肝臓に障害:アルブミンが生成されない】【腎臓に障害:アルブミンを異常に排出させる】【腸管に障害:たんぱく質が吸収されない】などがあります。

● リンパ浮腫の影響
・ガンの術後の方に多く、ガン治療部位に近い腕や脚などのリンパ節を切除したことでリンパの流れが悪くなりむくみます。発症期間には個人差があり、術後すぐに発症する方もいれば、5~10年後に症状が現れる方もいます。ちなみに、術後ではなくてもリンパ浮腫が起こる場合もあり、原因の特定ができないことを特発性リンパ浮腫と言います。いずれにせよ、自然治癒できる病気ではありませんので、病院受診をオススメします。

● 下肢静脈瘤
・心臓へ送った血液が逆流して足に溜まってしまうことを言います。通常は逆流を防ぐ【静脈弁】というものがあるのですが、機能が悪くなると静脈内に血液が溜まり、静脈の壁にかかる圧力が高くなり、その壁が伸びたり、膨れたり曲がったりすることで静脈瘤が起きます。下肢静脈瘤が起きやすい人は、高齢者や運動不足の方、女性、肥満体質の方に多く見られます。

むくみの解消法とは

上記で説明したように、足がむくむ原因には一過性や慢性的なものがあるため解消法が異なります。一過性のように足がむくんでいるだけなら【マッサージや足の挙上、弾性ストッキングの使用、食生活の改善】などで良くなることが多いのですが、慢性的なむくみの場合はそれらを行っても解消しないことがほとんどです。高齢になれば、慢性的な原因が多いため「足が浮腫んでいるだけ」と軽視はせず、足がむくんでいたら、一度病院を受診することをオススメします。

一過性のむくみの解消法

慢性的な場合は、診察の結果で異なるため、ここからは一過性のむくみの解消法についてお伝えします。

● 水分と塩分に気をつける
・むくむ原因でもある水分と塩分(ナトリウム)を過剰に摂取しないことが大事です。特に、夏の時期に熱中症対策と言われ、冷房が効いた室内にもかかわらず水分と塩分を摂る高齢者の方は意外と多いので注意が必要です。
・カリウム(バナナ・りんご・納豆・ほうれん草など)を摂取することで塩分の排出が促進されるのでオススメです。また、血流が良くなるビタミンE(アーモンド・かぼちゃ・卵・ほうれん草など)を適度に摂ると良いでしょう。

● 睡眠をとる
・体を横にすることで、足に溜まっていた余分な水分が移動しやすくなります。また、血液の循環も良くなるため、腎臓への血液量が増え、余分な水分が尿として排出されむくみが軽減されます。

● 足を挙上する
・椅子に座る時、お尻と同じ位置まで足を上げます(挙上)。椅子の前に、同じ高さくらいの台があると良いです。もし、椅子と同じ高さの台がなくても、足を下におろしているよりはマシですので足を可能な限り上げてください。足を上げることで心臓に血液が戻りやすくなるので、むくみの軽減が期待できます。

● ストレッチ・マッサージを行う
・特に脹脛に溜まることが多いので、【揉む・さする・膝裏を刺激】してリンパ液の流れを改善すると良いでしょう。詳しい動きについては、下記参照です。

● 弾性ストッキング(医療用)を使用
・圧力のあるストッキングを履くことで足を圧迫しむくみが軽減されます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
高齢者の方で、脚がむくむ人は非常に多いです。また、脚がだるいという方も実はむくみが原因の可能性があります。しかし、それは内科的なものからきているのか、普段の生活の影響できているのかは自分では判断できないので「たかが脚!」と軽視するのではなく、一度病院を受診することをオススメします。