近年、高齢ドライバーによる重大事故が相次いでいますが、事故の原因を聞くと「アクセルとブレーキを踏み間違えた」といった理由が多い気がします。実際のところ、年間6,000件余り発生しており、この件数はここ10年でほぼ変わらないと言われています。では、なぜ高齢ドライバーによるアクセルとブレーキの踏み間違い事故が多いのか、その原因について深掘りしていきたいと思います。
目次
ペダルの踏み間違い事故の年齢別比率
まず、原因の前に、本当に高齢者が「アクセルとブレーキの踏み間違い事故」が多いのかを年齢別に見ていきたいと思います。
年齢 | 比率 |
---|---|
24歳以下 | 12% |
25~34歳 | 7% |
35~44歳 | 6% |
45~54歳 | 7% |
55~64歳 | 9% |
65歳~74歳 | 16% |
75歳以上 | 31% |
(情報元:公益法人交通事故総合分析センターHPより)
データを見ますと、65歳以上の高齢ドライバーから多くなっており、75歳以上の高齢ドライバーになると、その割合が倍になっているのが分かります。
ペダルの踏み間違いの原因とは
上述したデータで、アクセルとブレーキの踏み間違いは、他世代と比べて65歳以上から圧倒的に多くなっていることが分かりました。次は、その原因について見ていきたいと思います。
構造上の問題
まず、根本的な話にはなりますが、「アクセル」と「ブレーキ」の操作が同じ「踏む」という動作で、正反対の働きをするペダルが近くに並んでいることが原因の1つだと考えられます。
ガニ股が踏み間違いを起こす
通常、運転時は「ブレーキに近い場所に右のかかとを置き、アクセルを踏み込む時は足を右に開く」と思います。しかし、高齢になると股関節が外に大きく開く(ガニ股)傾向にあります。
これだと右足を開かなくても、足先でアクセルを踏む状態になるため、咄嗟の時にブレーキを踏んだつもりが、実はアクセルだったということが考えられます。
さらに、バックで駐車をする際、後ろに体をひねるため、ガニ股だと踏み間違えてしまう原因にもなります。そして、上記での構造上の関係も加味され、踏み間違いのリスクはさらに高まります。
パニック状態
2019年5月、千葉県市原市で65歳の男が運転する車が、公園に突っ込み保育士の女性をはねた事故がありましたが、はねた男は「駐車券を取ろうとしたら急発進した」「気が動転した」と話しています。
踏み間違いによる事故は、パニック状態が最も事故を起こしやすいことが分かっています。
思い込みが強くなる
ここでの思い込みは「自分の判断は正しい」「自信過剰」「過信」ということです。
典型的な例をあげると・・・
2019年4月、東京・池袋で87歳の高齢者が暴走事故を起こした事故も同じです。事故を起こした高齢者は「アクセルが戻らなくなった」と言い続けています(思い込み)が、警察は車を検査し「異常なし」と診断しています。
この高齢者もアクセルをブレーキだと思い込んで、ペダルを踏み続け「何故、止まらない」「車が故障している」などとパニック状態になる一方で、車はさらに加速し、重大事故に繋がったと言えます。
また、高齢者講習を受講した高齢ドライバーの運転の様子が、一時ネット上で物議を醸しましたが、これらも「操作ミスや判断ミスを自覚していない」高齢者が目立ちました。これも「自分は正しく運転している」という思い込みの一種だと思います。
操作が多くなるとミスを誘発
単純な運転操作ならば、比較的踏み間違いは少ないと思いますが、運転の中でも操作が極めて多くなる場面が「駐車」です。下記に、駐車場に起こる事故の要因などをまとめました。
駐車の場面 | 事故発生のパターン | 推測される要因 | 加齢に伴う影響 |
---|---|---|---|
前向き駐車 | ・駐車位置から発進時 ・駐車中に、位置を調整する時 ・前向きに駐車する途中 |
・切り返し回数の増加 ・踏み替え回数の増加 |
・体が思うように動かない ・視覚機能の低下 ・空間認知能力の低下 ・情報処理の遅れと誤り ・注意力、集中力の低下 |
後ろ向き駐車 | ・バックで駐車する時 ・駐車位置を調整する時 |
・踏み替え回数の増加 ・DとRの切り替え回数の増加(AT時) ・体を後方にひねりながら、他の操作を行う |
「推測される要因」と「加齢に伴う影響」が運転の誤操作に繋がり、アクセルとブレーキの踏み間違いが引き起こされると考えられます。
踏み間違い防止グッズ
高齢ドライバーの踏み間違い事故を受けて、今、カーショップなどでペダルの踏み間違い防止グッズが売れています。その中でもより効果的なグッズを紹介したいと思います。
ペダルの見張り番
田舎の暮らしに車は必要…
これ買って母にプレゼントしなきゃだな!!#高齢者運転#ペダルの見張り番#ペダルの踏み間違え#急発進防止装置 pic.twitter.com/qbvR9LHYfo— hitomi (@Eyes_staff) June 7, 2019
この商品を装着すると、停止中や時速10キロ未満であれば、急にアクセルを踏んでも警告音が鳴り、エンジンが回転しない仕組みになっています。
そのため、ペダルを踏み間違えても急発進の防止ができます。ちなみに、アクセルをゆっくり踏めば、いつもと変わらず発進ができます。
しかし、この商品は、東京・池袋で起きた暴走事故以降、品薄状態が続いています。また、車種によって商品の型番が変わりますので、自身の車と合わない物を購入しても装着できないので注意が必要です。
価格は、3万~4万台で購入できます(工賃は別)。
ワンペダル
ワンペダルとは、「足を右に傾けるとアクセル。踏めばブレーキ」といった、1つのペダルに足を置いたまま「アクセルとブレーキ」が操作できるペダルです。
このペダルにすることで、咄嗟の時でも「踏み間違い」がなくなり、 ブレーキをかけるまでの時間も短くなるため、事故を防ぐことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「アクセルとブレーキの踏み間違い」の原因をまとめると・・・
● 駐車時の操作が多い。特に、バック時に体をねじる際に足元の位置認識が狂いやすい。
● パニック状態になると、冷静な判断ができなくなる。
● 思い込みで、正しい判断が遅れる。
● 「アクセル」と「ブレーキ」の操作が、同じ「踏む」という動作で、正反対の働きをするペダルが近くに並列になっている。
ペダルの操作ミスを減らすためにも、防止グッズをぜひ活用していただき、事故を防いでもらえたらと思います。