高齢者は多病する人が多い~多病する人の特徴とは~

年を追うごとに、人は徐々に衰えていきます。その衰えが、さまざまな病気の誘発に繋がる可能性があります。もちろん、病気1つせずに生涯を終える方もいるかもしれませんが、大体の人は何かしらの病気にかかる人が多く存在します。そして、一番怖いのが1つの病気にかかると、さらに違う病気を誘発してしまうことです。都内に住む75歳以上の高齢者を対象に、東京都健康長寿医療センターの石崎達郎研究部長、光武誠吾研究員らの研究グループの研究で、約8割の高齢者が多病していることが分かりました。では、なぜ高齢者は多病をしてしまうのか。ここでの記事では、東京都健康長寿医療センターの研究内容および結果を基に、それらについて紐解いていきたいと思います。

高齢者で最も多い病気の組み合わせ

高齢者の多くは、1つの病気だけしか持っていないというのは少なく、例えば「脂質異常症を元々持っており、ある時を境に、それが原因で糖尿病になってしまった。」といった感じで、病気が病気を呼ぶ「負の連鎖」が起きやすくなります。原因については、老化もそうですが、元々持っていた病気が原因で誘発しやすくなる場合が多いです。そういったことから、気がつけば多病になってしまう高齢者は多くいます。

病気が多いだけではない済まない

多病は、ただ病気が多いだけはなく、さまざまなことに弊害が生じます。まず、医療方針です。たとえば、この病気があるから「この薬は使えない」「この治療はだめ・・・」など、医療方針(受診・検査・治療)を複雑にします。

また、通常よりも著しく心身機能の低下を招いたり、それに乗じてQOL(生活の質)の低下もしていきます。さらに、病気が多ければ多い程、病院にかからなければならないため、医療費の負担が増えます。

男女ともに高血圧が半数以上持つ

東京都健康長寿医療センターの研究グループは、東京都に住む75歳以上の後期高齢者「約131万1,116人分」のレセプト(月ごとの診療報酬明細書)情報を分析し、多病の実態、頻度の高い疾病の組み合わせを把握し、関連要因などを分析しました。

研究グループの結果、男女ともに高血圧を発症する割合が半数以上で、男性59.4%、女性58.6%でした。下記に他の疾患について、まとめましたのでご覧ください。

男性 女性
高血圧 59.4% 58.6%
脂質異常症 29.9% 38.9%
冠動脈性心疾患 28.7% 24.3%
糖尿病 18.3% 11.5%

さらに、この結果を解析したところ、東京都に住む後期高齢者の約8割が、2疾患以上の慢性疾患を持っており、3疾患以上の疾患になると、その割合が約6割にも上りました。

最も多い疾病の組み合わせとは

3疾患以上多病している結果について、最も多い3疾患の組み合わせを性別ごとにまとめましたので、下記をご覧ください。

疾患の組み合わせ 男性
高血圧・潰瘍性疾患・虚血性心疾患 12.4%
高血圧・脂質異常症・潰瘍性疾患 11.0%
高血圧・脂質異常症・虚血性心疾患 10.8%
高血圧・脂質異常症・糖尿病 6.5%

疾患の組み合わせ 女性
高血圧・脂質異常症・潰瘍性疾患 12.8%
高血圧・潰瘍性疾患・脊椎/関節疾患 11.2%
高血圧・脂質異常症・変形性関節症/脊椎障害 10.7%

高血圧とは(簡単に)

上述の結果では、男女ともに「高血圧」を患っていることが分かります。高血圧と聞くと、「ただ血圧が高いだけじゃないの?」などと軽く思っている人もいるかもしれませんが、実は高血圧というのは、大病と隣り合わせな病気です。

なぜ、高血圧になるのか

高血圧というのは、血液がドロドロした状態が続くと、血管の柔軟が失われていき、その状態が続くと、高血圧になります。

ちなみに、本態性高血圧症、家族性高血圧症(遺伝的なもの)、薬の影響などでなる高血圧は例外です。
※柔軟性が失われる=動脈硬化
※ドロドロ状態=粥状硬化:血管壁にヘドロ(悪玉コレステロールなど)がこびりつく状態

なぜ、高血圧は危険なのか

例えば、運動などをすると多くの血液を全身に送らなければなりません。そうなると、通常より心臓にかかる負担が大きくなります。

もしここで、高血圧を患っていると、先ほど説明した通り、血管の柔軟性が失われている状態、いわゆる「動脈硬化」が進んでいる状態なので、勢いよく流れる血液の圧に耐えられなくなり、その結果、血管が破壊されます。

それが、頭なら「脳出血」、目なら「眼底出血(糖尿病者に多い)」といった症状が引き起こされるのです。そのため、高血圧というのは、ただ血圧が高いだけと安易に考えてはいけない病気なのです。

多病をする高齢者の特徴

研究グループは、多病をする高齢者の特徴について分析しました。その分析結果について、下記にまとめましたので、ご覧ください。

● 性別 男性
● 年齢 85~89歳
● 負担割合 医療費が1割負担
● 医療状態 ・「在宅医療を受けている(訪問診療や訪問看護など)」
・「外来受診施設数が多い」
・「入院回数が多い」

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回の研究内容と結果は、都内に住む後期高齢者のデータでしたが、多病する割合は8割もいることが分かりました。また、その中で3つ以上を病気を持っている割合が約6割です。これは、全国のデータではないので、多い少ないという判断はつきにくいですが、高齢になると多病する確率は上がるのは間違いないことが分かります。記事内にも記載していますが、多病は、日々の生活の質を下げるとともに、医療費の負担も大きくなります。病気が少ないことに越したことはありませんので、日々の生活を見直してみるのも良いと思います。