皆さんはわが国の高齢者数はご存知でしょうか。平成30年4月時点でのデータによると高齢者の数は3515万2000人となっています。「高齢者人口が3500万人突破~今後の高齢化問題はどうなっていくのか~」の記事でも記載していますが、わが国の高齢化率は過去最高を記録しました。
皆さんもニュースなどでお聞きになられたことがあると思いますが、わが国は超高齢社会に突入しており、それに伴い多くの問題を抱えています。その問題の1つが「孤独死問題」です。しかしよく孤独死という言葉を耳にしますが、実際どういったことが孤独死なのか、そしてその原因とは一体何なのか。ここでの記事では孤独死にまつわる内容について解説していきたいと思います。
目次
孤独死とは
現在孤独死における明確な定義はありません。一般的に認知されている孤独死の考えは、老衰や病気等により「誰にも看取られず1人で生涯を終える」だと思います。
1人暮らしの死のすべてが孤独死とは限らない
孤独死には明確な定義はありませんが、自殺や他殺による死については「孤独死」にはなりません。また警察の判断でも「自殺・変死・他殺」として扱われます。あくまで老衰や病気などによる死が孤独死といわれています。
ちなみにですが、病院や施設内での死も「孤独死」とはなりません。
1人暮らしの高齢者の割合
高齢者の人数については、冒頭でお伝えした通りです。わが国の人口は約1億2000万人いますので、人口の約1/4が高齢者となります。その高齢者の中で、どれだけ1人暮らしの割合を占めているのかをお伝えしていきたいと思います。
全世帯の「26.3%」が1人暮らし
平成27(2015)年の内閣府調べでは(平成30年7月現在で公表されている中では最新)、65歳以上の高齢者世帯数は「2372万4千世帯」です。ちなみにですが、わが国の全世帯数は「5036万1千世帯」 となっています。下記に年月と各世帯の動向についてまとめましたので、ご覧ください。
※情報元:内閣府HP
平成27年で高齢者の1人暮らしの世帯数は「6243世帯」で、全体の「26.3%」の高齢者が1人暮らしをしているということが分かります。
高齢者の1人暮らしの動向について
わが国は核家族化の影響により、男女ともに65歳以上の高齢者の1人暮らしは増加傾向にあります。現在まで分かっている高齢者の1人暮らしの人数は(平成27年最新)、男性約1,924人、女性約4,003人となっています。
また高齢者の1人暮らしを高齢者人口から割合にした場合、男性13.3%、女性21.1%となります。
下記の図の通りですが、昭和55年から平成27年までのデータを比較すると、男性は約3倍、女性は約2倍増加しているのが分かります。
なぜ増える?高齢者の1人暮らし
近年は「団塊の世代」が前期高齢者となり、それに伴い「高齢者」という単身世帯数が相対的に増えました。元々団塊の世代の人口数は他世代より多いため、65歳に到達すればそれに比例して増えます。これは一つの例なのですが、根本的に1人暮らしが増える理由はあります。次では1人暮らしが増える理由について紐解いていきたいと思います。
死別の増加が影響
まず年を重ねれば、当然若い時に比べて病気へのリスクが大きくなります。また同時に病気による死亡リスクもまた大きくなります。元々1人暮らしの方には当てはまらないですが、誰しも年を重ねればいつか配偶者は失います。
そのため、高齢者が増えれば増えるほど1人暮らしの高齢者が多くなる可能性が出てくるのです。
しかし配偶者が亡くなっても子どもと同居という手段もあるのでは?という疑問が生まれてきます。
現在分かっている統計データによると、妻と死別をした70代男性が子どもと同居する割合は、2010年時点で40%というデータが出ています。ちなみですが、1995年では57%というデータがあり、15年間で同居率が17%も減少しています。そのため、2018年現在の同居率が更に減少している可能性があります。
※みずほ情報総研による寄与度分析。藤森克彦『単身急増社会の希望』2017年、62ページ参照
今後は「団塊の世代」が後期高齢者になる「2025年問題」が到来します。高齢に伴いさらに配偶者と死別する可能性が上がるため、高齢者の1人暮らしは、より一層高まると考えられます。
孤独死の対策とは
家族がいる方であれば、1番の解決策はやはり「同居」です。家族がいない方であれば「施設入所」。これが孤独死を防ぐこの上ない対策だと思います。しかしそれらが出来ない環境にいる方はたくさんいると思います。そのため同居や施設入居という選択肢以外で、いかに現実的な方法で解決策を考えなければなりません。ここからは少しでも孤独死を防ぐ対策について紹介していきたいと思います。
地域にあなたのことを知ってもらおう
まずあなたという存在を知ってもらうことが大切です。孤独死というのは、誰にも知られずに亡くなることです。しかし地域の人があなたのことを気にかけているなら話は別です。
しかし今更ご近所付き合いなんて出来ないよという方も中にはいると思います。
実は皆さんが住まわれている地域には民生委員や町内会などが高齢者の見守りを行っています。
そういった人たちと、交流を図ることをお勧めします。交流と言っても無理に話す必要はありません。極端を言えば挨拶だけでも全然十分です。その地域で『1人で暮らしています』ということを周知してもらえればよいのです。
地域の見守り活動
民生委員や町内会の見守りとはどのようなことを行うのか。正直いうと地域独自でのやり方があると思います。しかし見守りとっても常に見られているという訳ではありません。基本的には定期的に訪問をし、軽い会話や挨拶程度です。
また訪問日以外でも、通りかかった際に「最近新聞がたまっていることが多い」、「雨戸が数日間閉まったままのことが多い」など何かと気にかけてくれます。そういったいつもと違う様子を感じた場合には、地域の窓口となっている地域包括支援センター(注)などに相談することになっています。
(注)地域包括支援センターとは
地域包括支援センターとは、高齢者の暮らしについての相談や問題解決などに特化した機関です。そのため相談があった場合や通報があった際は、そのお宅に訪問し、問題の解決に努めてくれます。
民間による高齢者見守りシステム
子どもが遠く離れて住んでいる、家族が同居を望んでいない、家族がいないなど様々な理由により1人暮らしを余儀なくされている方がいると思います。そういった方には、高齢者見守りシステムというサービスがあります。
高齢者見守りシステムの主な内容については「高齢者見守りシステムについて」詳しく記載していますので、こちらをご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
孤独死の原因については、それぞれの家庭環境、経済状況、地域環境などの事情が加味し、最終的に起きてしまうと思います。孤独死を防ぐという観点から言えば、「同居」「施設入居」が1番良いです。
しかししたくても出来ない方はたくさんいると思います。そういった方たちを支えていくのは、地域の力だと思います。そういった高齢者を地域がどのように高齢者を見守っていくかが、今後の課題となるのではないでしょうか。