高齢者に多い低温やけどの原因とは

連日、列島各地で寒い日が続いており、多くの方がストーブや電気カーペット、湯たんぽなどの暖房器具で暖をとるかと思います。しかし、冬になると暖房器具の誤った使い方により「低温やけど」をしてしまう方が急増します。しかも、低温やけどをする多くは「皮膚の弱い高齢者」や「あまり動かな高齢者」だったりします。

まず、「やけど(熱傷)」というのは、簡単に言うと熱で皮膚の組織が傷んでしまうケガのことで、皆さんも、日常生活の中でやけどをしたことがあると思います。

通常のやけどの場合だと、高温な物に触れたら「あつッ!」となり、その直後に皮膚が「ジーン」と痛むと思います。しかし「低温やけど」の場合は、低い温度から発生するやけどのため、気づかぬ内にやけどが進行し、気づいた時には皮膚の奥まで損傷していることがあります。また、最悪の場合、皮膚が壊死してしまう可能性もあります。

前置きが長くなりましたが、ここでの記事では、壊死することもある低温やけどの発生の原因と対処法ついてお伝えしていきたいと思います。

低温やけどとは

「低温やけど」とは、体温以上60℃以下の熱源への長時間の接触、圧迫による局所循環障害が加わったことにより起こるやけどです。では、具体的に「低温やけど」とはどういったやけどなのか、詳しく見ていきたいと思います。

低温やけどの発生の原因

まず、結論から話しますと、低温やけどの発生の原因は「熱源の温度」と「熱源に触れている時間」が原因で起こるやけどです。

通常、高温の物に触れれば「熱い」「痛い」などと感じ、熱源から反射的に距離を取ると思います。私たちは、その反射のおかげで、皮膚と高温熱源との触れる時間が短く済みます。また、一瞬程度であれば、高温の物に触れても表皮(一番の上の皮膚)が損傷する程度です。

しかし、その熱源が「人肌より少し熱い程度(体温以上60度以下)」だった場合ならどうでしょうか。そのくらいの温度だと「熱い」という反射を起こす人は少ないはずです。寒い時期であれば、下手したら「程よくて気持ち良い」と思ってしまうかもしれません。

そういった感覚が、肌に(服の上からも同様)長い時間当ててしまうことになり、低温やけどを引き起こしてしまう原因になるのです。

どれくらいの時間から発生するのか

その方の皮膚の状態などで変わりますが、一般的には下記の「温度」と「時間」の接触で低温やけどが発生すると言われています。

◇ 低温やけど発症の目安

● 42℃・・・6時間
● 44℃・・・3~4時間以上
● 46℃・・・30分~1時間
● 50℃・・・2~3分
● 60℃・・・1分

※身体状況によっては、上記より「低い温度」「短い時間」で、低温やけどになる場合がありますので、あくまで目安としてご理解ください。

◇ 低温やけどの進行は、下記のように、少しずつ奥まで進行していきます。

● 「表皮」➡「真皮」➡「皮下組織」

よく冬の寒い時期に使う「カイロ」「湯たんぽ」「電気あんか」「床暖房」などの低温の暖房器具には、特に注意が必要です。

また近年では、ノートパソコンの長時間使用時(足など置く)や携帯電話の異常発熱等でも低温やけどをしたという報告がありますので、気をつけてください。

低温やけどの症状

一般的に「Ⅰ度:軽度」「Ⅱ度:中度」「Ⅲ度:重度」とやけどの程度が分かれています。

また、低温やけどの患部は「炎症の痕が小さい」「軽いやけどに似ている」といった少し分かりづらい特徴をしていますので、注意が必要です。

● Ⅰ度:軽度
・表皮だけ損傷。
・赤くなって浮腫んだり、ヒリヒリとした痛みがあります。
・主な治療は「軟膏」処置。
・数日で完治。

● Ⅱ度:中度
・真皮まで損傷。
・真皮での深さには「浅達性」と「深達性」に分かれています。
★「浅達性」では、赤くなった水疱になります。
・主な治療は「軟膏」処置。
・治癒期間:約2週間
★「深達性」では、蒼白か赤褐色の水疱になります。
・主な治療:植皮・デブリードマン
・治癒期間:約1か月

● Ⅲ度:重度
・皮下組織まで損傷。
・水疱もなく、皮膚がなくなり、組織が見えている状態になります。いわゆる、皮膚が壊死してしまっている状態です。
・主な治療法:植皮・デブリードマン
・治癒期間:自然治癒はほぼなし。
※デブリードマン:創面を切除。壊死組織を除去して創を清浄化する治療法のことをいいます。

低温やけどになりやすい人

低温やけどは、条件が整えば誰にでも起こり得るやけどです。しかし、体の状態によっては、通常より低温やけどになりやすい人もいます。

◇ 低温やけどになりやすい人の特徴

● 皮膚が薄い方
● 寝返りができない方
● 知覚や運動能力に麻痺がある方
● 糖尿病などの影響で手足の循環が悪い方
● 体の感覚が鈍くなっている方

上記の特徴は、高齢者に多いので暖房器具を使う際には、特に注意を払ってください。

低温やけどの怖いところ

低温やけどの症状については、上述で紹介した通りですが、一見そこまで酷いやけど痕には見えないので「これなら大丈夫」と見過ごしやすいやけどでもあります。

しかし、低温やけどの怖いところは、時間の経過とともに皮膚が徐々に壊死していくことです。低温やけどは、熱源との接触時間が長いため、皮膚の奥まで損傷していることが多く、損傷が広範囲であればあるほど血流がなくなっていくので、徐々に皮膚が壊死していきます。また、大やけどの場合と違い、気づきづらいため皮膚の壊死が進みやすいのです。

低温やけどをしてしまった時の対処法

もし、万が一低温やけどをしてしまった場合の対処法について、下記にまとめましたので、参考にしてください。

◇ 焦らず落ち着いて応急処置を・・・

● 流水で患部を「20~30分」程度冷やします。
※衣類を着た状態でやけどをした場合は、衣類を脱がずに「そのまま流水で冷やしてください」。無理に脱ぐと皮膚がめくれます。

● 冷やした患部を清潔なガーゼなどで覆います。(衣類を着ている場合は必要なし)

● 水疱は破かずそのままにしておく。
※破ってしまった場合は、液体だけを外に出し、破った膜を患部に張り付けておきます。
※破れた幹部から細菌などが入るため、破いてはいけません。

これらは、あくまで応急処置なので、直ぐに皮膚科などの医療機関の受診を行ってください。

また、東京消防庁でも、高齢者の低温やけどについて注意を呼び掛けていますので、一度ご確認ください。
「東京消防庁HP:http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/151118kouhyou_1.pdf