高齢者の凍死が急増 凍死の原因とは

さまざまな説はありますが、2月は1年でも最も寒い時期とも言われています。私は昔、北海道に住んでいましたが、やはり1月から2月くらいまでは、一番寒かった記憶があります。そして、この寒い時期に気をつけないといけないのが「凍死」です。凍死と聞くと山奥で起きるようなイメージがありますが、実は家の中でも凍死は発生します。特に、家の中で凍死するケースは高齢者に多く、そのほとんどが「老人性低体温症」が原因と言われています。では、なぜ家の中で凍死をしてしまうのか紐解いていきたいと思います。

凍死とは

凍死をする人の体温は「20℃」を下回っています。人間の体は、通常36~37℃前後に保たれていますが、35℃を下回ると体温を保つために筋肉を引き締め、震えを起こしたりし、自発的に体を動かし熱を発生させようとします。

しかし、それをも上回る「寒さ」や「疲労困憊状態」にあると、熱を生み出す能力がなくなり、体温や思考力、判断力が徐々に低下していきます。

そして、30℃以下になると「重度の不整脈」「心停止」などといった状態に陥り、命の危険にさらされます。このように、寒さで死ぬ一歩手前のことを「凍沍」と言います。そして、20℃以下になると死亡「凍死」します。

毎年1000人の人が凍死で亡くなっている

厚生労働省が行っている「人口動態調査」によれば、凍死の割合は、月別で12月~2月の3か月間で全体の約77%を占めていることが分かっており、今の時期が最も注意が必要です。

下記に年間どれだけの人が凍死しているのか、厚生労働省「人口動態調査」のデータを基にし、グラフを作成しましたので、ご覧ください。※凍死:自然の過度の低温への暴露

熱中症の1.5倍の多さ

厚生労働省の報告によれば、国内で発生した凍死者数は、2000~2016年までで「約1万6,000人」にも達しており、これは、熱中症で亡くなっている人数の1.5倍に上ります。

また、2015年に日本救急医学会の調査では、全国の救急医療機関91施設に、低体温症で搬送されたうちの7割以上が屋内で発症していることが分かっています。そのため、家の中だからといって安心はできません。また、室内での低体温症は気づきにくいので注意が必要です。

早朝に亡くなるケースが半数以上

凍死で亡くなる主な時間帯は、早朝の5時台が最も多いことが分かっており、午前3時~9時までの時間帯が全体の半数以上を占めています。

また、死亡時の室内温度のほとんどが「11℃以下」で、外気温が「0~5℃」が多いことが分かっています。

冷え性と低体温の違い

高齢者の方で、夏でもよく「寒い、寒い」と言っている方はいますよね?それは低体温症とは別の場合があります。

冷え性

一般的に低体温症は、体温が36℃未満から低体温と呼びますが、冷え性には「体温が○○度以下」というのはありません。冷え性は、周りの人が寒さを感じない室内外気温でも「全身や手足、下半身」などが冷えてつらい症状をいいます。

また、冷え性の主な原因は、自律神経の乱れや筋肉量の低下、血液循環の悪化などです。さらに、甲状腺機能低下症や貧血、膠原病、閉館性動脈硬化などの持病を持っている人なら特になりやすいと言われています。

低体温症

低体温症は、外気温の寒さが、体内で熱を作る能力を上回った場合に起こります。例えば、極寒の環境に長時間過ごしていたり、冷たい水に長時間浸かるといった感じです。そのため、冷え性と低体温症とでは、根本的に原因が違うのです。

老人性低体温症

高齢者の方が屋内で凍死するほとんどが「老人性低体温症」が原因と言われています。高齢者は若い人に比べて、寒さに対する感覚が鈍くなっています。

通常、寒い時には、体の熱を逃がさないように血流を抑えようとします。しかし、高齢者のように寒さに対して感覚が鈍くなっていると、血流量が抑えられず放熱し続け、知らずに低体温症になり命を落とすことがあります。さらに、糖尿病や高血圧症、不整脈などといった持病を持っている方は特に危険です。

老人性低体温症の対策は

症状によって、加温の方法が変わりますので、注意が必要です。補足ですが、タバコを吸う方に向けてですが、タバコに含まれているニコチンは、血管を収縮させる作用があるため、結果、血流が悪くなるので注意が必要です。

軽度の低体温症の場合

体温が「35~33℃」程度であれば、加温を行えば自力で回復していきます。電気毛布や保温マットを使用し、炭水化物を含んだ暖かい飲み物(ゆっくり飲む)、パンなどを浸したコーンスープなどを飲むと中から温まるので、より回復が早くなります。

反対に、コーヒーや紅茶などには、カフェインが含まれているため、利尿作用があります。その結果、脱水症状に陥る危険性があるため、低体温症が疑われる場合には、飲むは控えた方がよいでしょう。

中等度以上の低体温症の場合

体温が「33度以下」は、ICU(集中治療室)にて呼吸管理と循環動態管理が必要となるレベルです。そのため、直ぐに救急車を呼んでください。

救急車が来るまでの間の対応ですが、軽度とは違って安易な加温は避けることをお勧めします。中等度以上になると、ソ径部(足の付け根)や脇の下を急激に加温をしてしまうと、冷たい血液が心臓に戻るため、急激に中心部の臓器の温度が下がりショック症状を起こす場合があります。また、体を無理に動かすと不整脈を誘発しますので厳禁です。

◇ 体温が「30℃以下」になると・・・

通常の加温法(体表面)では回復は見込めないため、最深部(体の核)を温めなけばなりません。そのため、「40度以上の加温・加湿」による酸素投与と、輸液(基本的に40度に加温)が必要になります。

一般の人ができる範疇としては、心肺停止状態ならば、救急隊員が到着するまで心肺蘇生を行い時間を稼ぐことしかありません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。毎年1000人前後の人が屋内で凍死で亡くなっています。記事でもお伝えした通り、高齢者の方は寒さに鈍くなっているため、知らずに老人性低体温症を引き起こし凍死する可能性があります。こういった、老人性低体温症により凍死者が増える背景には、年々増え続ける高齢者の増加や1人暮らしをする高齢者の増加、貧困層の増大です。周りで1人で暮らしている高齢者の方がいましたら、この寒い時期は凍死の危険性は十分にあるので、注意を呼び掛けるとよいでしょう。