高齢者は注意 新型コロナウィルスの症状・予防策

新型コロナウィルスが日本を含む世界で猛威を振るっています。各国が発表した感染者数の統計で、現在2020年3月14日時点で138の国と地域で14万5,360人が感染し、うち5,416人が死亡しました。中国では8万0,817人、死亡者3,177人。さらに、感染源の中国以外で感染者が多い国が上位から【イタリア:感染1万7,660人・死亡2,543人】、【イラン:感染1万1,364人・死亡1,289人】、【韓国:感染7,979人・死亡110人】、【スペイン:感染5,232人・死亡2,086人】。

日本では、701人が感染し、うち10人が死亡しています。当初、高齢者がかかりやすいと言われていましたが、若年層でも多くかかっており、油断ならぬ状況です。しかし、高齢者の場合は免疫力の低下により症状が重症化する傾向にあるため一概に若年層と比較してはいけないのも事実です。
新型コロナウィルスの症状や予防策について、様々なメディアで報じていますが、ここでの記事でも確認の意味、啓発の一環として新型コロナウィルスの症状や予防策についてお伝えしたいと思います。

新型コロナウィルスの症状

現在までに、人に感染するコロナウィルスは7種類見つかっており、その1つが世間を騒がせている新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)です。このうちの4種類のウィルスが一般的な風邪が原因で起こり(全体の10~15%を占める)、多くは軽症。残りの2種類のウィルスは【重症急性呼吸器症候群(SARS)】や【中東呼吸器症候群(MERS)】となっています。

補足として、2020年2月11日、WHOは新型コロナウィルス感染症を【COVID-19】と名づけています。一方で、国際ウィルス分類委員会はSARSを引き起こすウィルスの姉妹種として【SARS-CoV-2】と名づけています。

現在、病名とウィルス名が異なっていますが、私たち市民からすれば大した問題ではなく、むしろ一番知りたいのは、症状や予防策、対処法だと思います。

新型コロナウィルスによる感染症の症状については下記のとおりです。

  • 頭痛
  • 咽頭痛(喉の痛み)
  • せき
  • 鼻水
  • 発熱(37.5以上)
  • 倦怠感
  • 下痢
  • 嘔吐/吐き気
  • 筋肉痛

※症状が悪化するにつれて息切れ・呼吸困難などが起きる。

潜伏期間については、現時点で1~12.5日(多くは5~6日)とされています。感染の疑いがあるも未感染者については、14日間の健康観察が推奨されています。

初期症状は風邪の症状と似ている

新型コロナウィルスに感染した際の初期症状は、基本的には風邪と変わらないため判断が困難なケースが多いという報告があります。強いていうなら、風邪のわりに少し怠さが強かったり、症状がいつもより長引いているという点が風邪との違いということです。

厚労省の分析(北海道などのデータ)では、症状の軽い人が気づかぬうちに人と接触し、感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられています。

感染していても初期症状が風邪の症状と見分けがつかないため、4日以上風邪の症状が長引くようならば、帰国者・接触者相談センターに問い合わせ、指示された医療機関に受診することをオススメします。

重症化する人の特徴とは?

世界で最も感染が確認されているのは中国です。その中国のデータによりますと、60歳以上の人が重症化や死亡リスクが高く、特に死亡した人の21.9%が80歳以上の高齢者だったことが分かっています。その中でも持病がある高齢者は特に死亡リスクが高いということです。

持病がある高齢者は危険

持病がない患者で死亡した方が全体の1.4%に対し、持病がある患者で【心疾患・血管系疾患:13.2%】【糖尿病:9.2%】【高血圧:8.4%】【慢性呼吸器疾患8.0%】【がん:7.6%】とされています。特に、がん患者の重症化頻度は高く、悪化までの日数が短いことが分かっています。

世界的に注目されたダイヤモンドプリンス(以下、クルーズ船)のケースでは、クルーズ船に乗船し、新型コロナウィルスに感染した人の中には人工呼吸器をつけ、集中治療室で治療を受けた重症者は31人(3月6日時点)います。さらに、重症者のうち、15人が持病持ちであることが確認されており、年代別では80代が3人、70代が19人、60代が10人となっています。

なぜ、高齢者は重症化しやすい?

極端な説明をすると、高齢者は通常時でも免疫を若年層より多く使用しており、新たに入ってくるウィルスに対して余分な免疫がない状態にあるのです。それに加え、基礎疾患(持病)を持っている高齢者は、基礎疾患が悪化しないよう疾患がない人より多く免疫を使っているため、よりウィルスに対抗できなくなっています。

そうしたことから、高齢者や持病がある人は若年層より新型コロナウィルスにかかりやすく、初期の段階で症状を抑えることができず、重症化してしまうのです。

重症化するとどうなる?

重症化する人も、最初は上記で紹介した風邪症状から始まり、約5~7日ほどで症状が急速に悪化しているのが確認されています。これまで確認されている重症化し症状については、【急性呼吸促迫症候群(ARDS)】【敗血症性ショック】【多臓器不全】【肺炎】などを発症し、最悪の場合死に至っています。

新型コロナウィルスの主な感染経路は?

現時点で考えられている感染経路は【飛沫感染】と【接触感染】の2つです。国内の感染状況から見ると、空気感染は起きていないと考えられています(2020年3月14日時点)。

飛沫感染
・ 感染者の飛沫(くしゃみ、咳、唾など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを鼻や口から吸い込んだことで感染します。

接触感染
・感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れると感染者のウイルスが付きます。そして、未感染者がその部分に接触すると感染者のウイルスが未感染者の手に付着することで、感染者に直接接触しなくても感染します。

飛沫感染は、屋内などでお互いの距離が十分に確保できない状況(密室・人混みなど)で一定時間を過ごすと感染確率が高まりますので注意が必要です。接触感染は、電車やバスなどのスイッチ、手すり、つり革、ドアノブ、エスカレーターの手すりなどが考えられます。

食品を介して感染はするのか?

現時点(2020.3.14現在)では、食品そのものから新型コロナウィルス感染症になったという報告はありません。ただ、食品や食事等を配膳する方からの感染、上記で紹介した接触感染から感染することは十分にあります。

特に高齢者の方へ食事介助をする人は、直接ウィルスを取り込ませてしまう可能性があるので注意が必要です。

補足ですが、コロナウィルスは【熱(70度以上で一定時間)】および、【アルコール(70%以上)】に弱いことが分かっています。

高齢者が感染しないための予防法とは

結論から言うと、【感染症対策:(手洗い:石鹸・アルコール消毒)・うがい】と【健康管理】が最も有効とされています。

現在時点で分かっている感染事例では、換気が不十分なスポーツジムや屋形船といった1人の感染者から多くの人に感染が拡大したと疑われる事例が多数存在します。また、一部の地域では小規模患者クラスターも発生しています。

こうしたことからも、人混みの多い場所(公共交通機関・百貨店・イベント会場など)は極力避けることが大事です。
※小規模患者クラスター:感染経路が追えている数人から数十人規模の患者の集団。

福祉施設の利用は止めるべきか?

ディサービスやショートステイといった高齢者が多く集まる介護サービスを利用している人もいると思います。正直なところ、サービスを利用することで生活が成り立っている人もいるので、一概に「利用は止めるべき」とは言えない部分があります。

現在、厚労省は各施設等に、職員は出勤前に検温や体調チェックの実施や、感染対策マニュアル等に基づき、施設職員や高齢者、面会者、委託業者等へマスクの着用を含む咳エチケットや手洗い、アルコール消毒、食事介助前の手洗い、清潔な食器の提供など感染経路を遮断するための取り組みを強く要請している状況です。

ただ、感染対策をしていても完ぺきではありません。症状自体も風邪症状に似ているため、いつもの風邪だと勘違いし人前に出てしまうこともあるでしょう。最近ではこのような感染ケースもよく聞きます。

※兵庫県のディケア施設で50代介護士と80代男性2人感染

兵庫県のディケア施設で50代介護士と80代男性2人感染

そうした上で私から言えるのは・・・

● 利用当日に体調が優れない場合は、利用を見合わせる。
・体調が悪い時は、免疫力が低下しているため新型コロナウィルスに感染しやすくなります。また、自分が感染している可能性もあるので、自宅で様子を見て症状が落ち着かない場合は病院を受診してください。
● 無理に運動や入浴は行わない。
・運動や入浴を行うと、少なからず免疫力が低下します。当日の体調を見て判断してください。入浴については、湯船につかるのではなくシャワーに代替すると良いでしょう。
● 週の回数を減らす。
・施設に行く回数が増えるほど、感染リスクは高まります。回数を減らすことで感染リスクを減らすことができます。また、週によっては人の出入りが多い日、少ない日がある施設もあります。ケアマネジャーや施設担当者などと相談し、人が少ない曜日に変更するのも手です。

まとめ

新型コロナウィルスの感染者は日に日に増えており、終息の兆しが未だ見えてこない状況です。特に感染する人や重症化する人は高齢者に多く、世界の中で最も高齢化率が多い日本では深刻です。

感染予防については、規則正しい生活を送り、免疫を少しでも下げないようにし、手洗い・うがいといった感染対策を徹底するところから始まると思います。

また、人が多い場所は、空気の流れが悪くなるためウィルスが蔓延しやすくなります。今の時期は極力、不要不急の外出は避けることをオススメします。

参考文献:※引用元:厚労省
東京都健康安全研究センター
ウイルス分類学国際委員会
国立がん研究センター