現在高齢化に伴い、買い物弱者と呼ばれている人たちが数多く存在します。もしこのまま買い物弱者が増え続けることになれば、高齢者の生活の質の低下を始めとする高齢者に纏わるあらゆる問題が引き起こされてきます。ここでの記事では、なぜ買い物弱者が増えてしまっているのか。その現状と国が取り組んでいる対策について紹介したいと思います。
目次
買い物弱者とは
大型商業施設の建設などによる地元商店街の衰退、高齢により買い物に行くために外出が出来ないなどの理由から、高齢者を中心とした買い物事情に苦労している方を「買い物弱者」といいます。またこの問題についてわが国では「食品アクセス問題」として取り上げられており、今後このような問題を社会全体でどのように解決してくかかが課題となっています。まずこちらのデータをご覧ください。
対策が必要としている背景
引用元:経済産業省HPより
こちらのデータを見る限りでは、買い物弱者の背景としては、高齢化の影響によるものが大きく占めています。
また数値は他より低いですが、「公共機関の廃止・条件低下の背景」に関しては、23年度時点では「36.3%」だったのに対して、29年度には「41.5%」にも上昇しており、年度を増すごとに他の背景と比べるとパーセンテージの伸びが高くなっていることが分かります。
こういった背景には、高齢化の進展や既存の商店街の衰退などの問題が加味して上昇した可能性が考えられます。
また現在わが国の買い物弱者の人数について経済産業省の調べでは、「700万人」と推計されています。こちらの算出方法については、60歳以上の高齢者人口4,198万人(平成26年10月1日時点の人口)×「日常の買い物に不便と答えた人」の割合:17.1%から算出したものとなっています。
全国の市町村の「82.0%」が買い物弱者の対策が必要
経済産業省の方で、全国の1,741市町村に「買い物弱者に対する対策は、現時点で必要を要するか」とアンケートを行ったところ、964市町村(全体の82.0%)の市町村が必要と答えています。
現時点で対策を必要としている市町村数
※全国で市町村数が変動しているためパーセントに変化あり。
引用元:農水省Hpより
このうち、何らかの対策を行っている市町村は594で、実施率が61.6%。対策を検討中の市町村が78であり、対策や検討をされていない市町村が292ということが分かっています。
対策や検討をされていない市町村の背景として、「食料品の買い物等が不便な住民が相対的に少なく、対策の必要性が低い」が最も多い理由とされています。
買い物弱者への国の取り組みとは
買い物というのは、日常生活の質の向上を始めとする、生活を営む上で重要な活動です。買い物という活動を失えば、日常生活の質が落ちるのはもちろんのこと、必要な物が手に入らないことにより病気のリスクを上げてしまったり、地域との関係が薄れてくるなど、さまざまな問題が起きてきます。そのため、買い物弱者への対策は一過性のものではなく、持続的な買い物対策が重要となります。
買い物弱者を対策する専門の府省がない
現在の政府には買い物弱者の対策を専門とする府省がなく、一部の府省と地方公共団体の補助事業等の一部でしか取りまとめがされていません。
そのため、買い物問題で「この問題については、A府省が対応」「この問題については、B府省」といった感じで、つぎはぎな状態なのが実情です。
移動販売の許可の緩和
そんな中、厚生労働省より移動販売に関する規定の見直しが行われました。厚生労働省は、買い物弱者の対策に取り組む事業者の負担軽減の観点から、複数の都道府県知事等の管轄区域で移動販売を実施しようとする事業者に、他の都道府県知事等の移動販売許可を取得している場合については、新たに取得せずに営業が出来るよう都道府県に周知を行いました。
またさらに、移動販売において取り扱う食品の再包装を行わなくてもよい等、適切な衛生管理状態を保つことが出来ていたら都道府県知事等の判断により、流水式手洗設備の設置を義務付けなくても良いと都道府県等に周知を行いました。これらの見直しにより、移動販売を取り扱う事業者が、更に業務がしやすくなりました。
そのため、スーパーがない場所に住んでいる方や買い物に行けない高齢者の自宅付近に、今まで以上に移動販売が来る業者が増えると思います。
☆ここでのポイント☆
●都道府県の判断により、都道府県の移動販売許可を取得していたら、他
の都道府県の許可なしで、営業ができるようになる。
●都道府県の判断により、適切な衛生管理を行えていたら、流水式手洗設備の設置義務がなくなる。
新たな取り組み・・・商用ドローン
移動販売の中でもまだ実験段階ですが、商用ドローンの運用を目指している各関係機関が多数存在します。商用ドローンは様々な用途に利用されていますが、わが国ではドローンを飛ばすためには厳しい規定が設けられています。
・空港周辺上空は禁止
・150m以上の上空は禁止
・民家などの密集地は禁止
・ドローン禁止空域での飛行(インターネットにより確認できる)
・目視外での飛行は禁止
上記で紹介した規定についてはほんの一部です。基本的には国土交通省の申請も行わなければなりません。
また目視外での飛行については、許可制になっています。しかし操縦者の代わりに、目視で監視できる者を配置することが義務付けられているため、商用ドローンの実質運用は出来ない状態です。
ただ政府は2020年以降に商用ドローンの本格解禁を目指し検討しています。商用ドローンの規制を見直していることから、新たな企業が参入しやすくなり、商用ドローンの実用性がより現実味が出てくると予想されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
わが国では買い物弱者が約700万人いるとされています。しかし高齢化の影響により、この人数はさらに増えていくと予想されています。買い物弱者が増えてきた背景としては、高齢によるものや、近所などの商店街の衰退などが挙げられています。
政府でも、現在の状況をそのままにしているわけではありません。移動販売車の規制の見直しや商用ドローンの規制の見直しなど、少しでも高齢者が遠くへ買い物に出向かなくても済む方法を検討し取り組んでいます。
しかしこういった取り組みも民間企業が数多く参入しなければ、絵に描いた餅となります。いかにこの取り組みを衰退させず、維持、そして発展させていくかが今後の課題となっていくことでしょう。