数年前までは、特に気になりませんでしたが、最近のタクシードライバーを見ると高齢者がハンドルを握っていることが多くはないでしょうか。私も仕事柄よくタクシーを乗るのですが、3回に1回は「おじいちゃん」ドライバーに当たります。近年、高齢者ドライバーによる事故が後を絶ちませんが、プロであるタクシードライバーも例外ではありません。ここでの記事では、タクシードライバーの高齢化の現状と、高齢化による危険性について深掘りしていきたいと思います。
目次
タクシードライバーの高齢化
厚生労働省が実施している「賃金構造基本統計調査」の年代別就労者の割合推計で、タクシードライバーの年齢層の割合が、2005年時点では65歳以上が「5.6%」でした。しかし、2015年の調査では「27.4%」まで上昇していたことが分かりました。その他の年齢層については、下記の通りです。
● 55~59歳:18.0%
● 50~54歳:11.1%
タクシードライバーの平均年齢が59歳
2015年時点でのタクシードライバーの平均年齢は「59.0歳」で、10年前の2005年より「4.1歳」も上昇しています。全産業平均年齢の平均年齢上昇は「1.5歳」しか上昇していないことを考えると、いかにタクシー業界の高齢化が進んでいることが分かります。
なぜ高齢化が進むのか
タクシー業界の高齢化が進んでいる理由については、上げれば切りがありません。しかし、現在のタクシー業界の賃金や労働条件などを照らし合わせると若年層が選びづらい状況にあります。
賃金が安い
タクシー業界の高齢化が進む原因については、まず賃金の問題があります。国土交通省の推計で、全産業の平均所得は「約536万円」に対して、タクシードライバーの年間平均所得は2014年時点で「約302万円」と低いことが分かっています。
さらに、タクシードライバーは歩合制のところがほとんどのため、たくさんの客を乗せなければ、満足のいく給料がもらえません。そのため、若い世代の選択肢にはなかなか入りづらいのが現状です。
若者の免許証取得離れ
年齢 | 男性(2001年) | 女性(2001年) | 男性(2015年) | 女性(2015年) |
20~24歳 | 87.8% | 77.3% | 79.9% | 72.2% |
25~29歳 | 96.0% | 87.7% | 92.0% | 85.7% |
30~34歳 | 98.8% | 90.7% | 96.8% | 90.9% |
このデータは、警視庁の「運転免許統計」と総務省「人口動態統計」を基に作成したものです。保有率については、20~24歳でも7割以上はありますが、確実に免許証の保有率は年々減少しています。
◇ ワンランク上の免許証が必要
皆さんもご存知でしょうが、タクシードライバーになるには、まず第二種運転免許の取得が必要となります。さらに、第二種運転免許には「21歳以上」の年齢要件に加え、「普通免許の保有3年以上」といった要件があります。
そのため、どんなに早くても21歳以上からになるわけですから、若年層がタクシードライバーになるには、ある程度のハードルが設けられているのです。
拘束時間が長く体力勝負
タクシードライバーと聞くと「乗っているだけでしょ?」と思うかもしれませんが、タクシードライバーの勤務形態は不規則な生活が強いられ、且つ体力が必要となります。
法人タクシーの勤務形態の場合は、1回の乗務が8時間とした場合、ずっとその時間は座りっぱなしです。また、運転をするため気を抜くことは出来ません。そしてさらに、日勤のほかにも夜勤もあります。
そして極めつけは、20~30時間のインターバルを挟めば、最大21時間連続運転ができる「隔日勤務」も存在します。
はっきり言って、体を壊しかねない勤務形態です。そのため、不規則な生活になるため、生半可な気持ちではタクシードライバーは務まりません。さらに、お客を乗せられなければ給料にも響くので、精神的プレッシャーものしかかります。
ここまでのまとめ
まず、タクシードライバーの高齢化が進む理由については、若年層の免許証の保有者数が年々減少していることです。免許保有数の絶対数が減れば、当然若年層がタクシードライバーになる数も減ってきます。
次に、労働条件です。これは、タクシードライバーだけに言えることではありませんが、賃金が安いうえに、拘束時間が長く、そして不規則な勤務形態。また、2種免許を取得するには、いくつかの取得要件があります。
そのため、売り手市場の昨今、あえてタクシードライバーを選択する若者は少ない傾向にあります。また、こういった背景がタクシードライバーの高齢化を加速させているのです。
高齢タクシードライバーの危険性
次に高齢タクシードライバーの危険性です。最近、社会問題にもなっている高齢者ドライバーによる交通事故。これは、プロであるタクシードライバーも例外ではありません。年齢を重ねれば、人間誰しも体は衰えていきます。さらに、衰えは能力低下の他に、病気を発症するリスクもあります。
◇ あなたは命を預けたいと思いますか?
もし、その病気の発症が走行中だった場合はどうでしょうか?さらに、高速道路での走行中だったら?あなたは、そういった可能性を秘めているドライバーに、自分の命を預けたいと思いますか?と、脅すわけではありませんが、全く有り得ない話ではありません。それを次にお話します。
増える事故
この73歳のタクシードライバーは、乗客の荷物を下ろそうと運転席を離れたところ、タクシーが動き出したため慌てて戻ったが「慌てていたので、ブレーキとアクセルを踏み間違えたため」と話しています。
この事故については、タクシードライバーが「パーキング・サイドブレーキ」を入れ忘れたのか、本当に故障なのかは定かではありませんが、どんな時でもブレーキとアクセルを間違えることはあってはならない行為です。また、タクシードライバーは人を乗せる仕事、いわゆる「プロ」ですので、「単純なミス・ヒューマンエラー」では済まされないのです。
こういった事故のように、高齢者ドライバーになると、あらゆる状況でエラーを起こします。当サイトでも高齢者ドライバーの危険性については、再三お伝えしている通りですが、これは、プロであるタクシードライバーも例外ではありません。
運動能力の低下
高齢になるとあらゆる分野で能力が低下します。運転というのは、さまざまな神経を集中して操作を行います。
しかし、そういった運転に使う能力は、病気でもしない限り急激に低下するわけではないので、自身では分かりづらいです。また、長年運転を経験しているという「自信」や「過信」が加味して事故を起こす高齢者ドライバーが後を絶ちません。
当サイトでも、高齢者ドライバーの特徴について詳しくお伝えしている記事がありますので、一度ご覧ください。
突然死の可能性
タクシーは、5~6回縁石とぶつかった後、歩道に乗り上げ、乗客はスピードが落ちたところで窓から脱出し、軽いケガで済んだそうです。
その後タクシーの運転手は、搬送先の病院で死亡が確認されました。
こういった事故が頻繁に起きるわけではありませんが、激務に加え、上記で説明したような不規則勤務形態を行っていれば、当然、急に死亡する可能性は高まります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今はそこまで気にしなくても、月日が経てば間違いなく、高齢のタクシードライバーの人数はさらに増えます。
記事にも書いてある通りですが、プロでも高齢になれば必ず衰えます。運転は、車の操作だけ出来れば良いわけではありません。視覚や聴覚、神経などを生かし様々な状況をとっさに判断しなければなりません。つまり衰えるということは、こういった運転に必要な能力が低下するということです。
ただ、交通事故については、高齢者ドライバーに限ったことではありませんが、タクシードライバーの高齢化は着実に進行していることだけは理解してもらえたら幸いです。