アメリカは、原則として個人の生活に干渉しないという自己責任の考えと、連邦制で州の権限が強い国です。
それは、社会保障制度のあり方にも言えることです。日本の社会保障制度は、政府が高齢者全ての生活に保証をしてもらえますが、アメリカの高齢者はどのように生活をしているのか、ここでの記事で見ていきたいと思います。
アメリカの高齢化率
まず、アメリカの高齢化率についてですが、先進国の中でも比較的緩やかに上昇している国でもあります。下記に、アメリカの高齢者の人口数と高齢化率の推移をまとめましたので、ご覧ください。
(千人:%)
高齢者人口 (人口) |
高齢化率 ※()は日本の推移です。 |
|
2010年 | 39,935人 (312,253) |
12.8% (23.0) |
2015年 | 45,923人 (325,723) |
14.1 % (26.6) |
2020年 | 53,533人 (338,427) |
15.8% (28.9) |
2030年 | 69,461人 (360,894) |
19.2% (31.2) |
2050年 | 81,547人 (394,976) |
20.6% (37.7) |
情報元:国連World Population Prospectsより
アメリカの社会保障制度
アメリカは、公的医療保険制度(国が運営)である65歳以上の高齢者と障害者を対象とした「メディケア」に加入します。また、メディケアに加入するには、一定の条件をクリアする必要があります。
ちなみに、アメリカの現役世代の医療保障は、民間医療保険が中心なので、企業の福利厚生の一環として事業主の負担を得て団体加入する場合も多いのが実情です。
● 65歳以上で、アメリカ居住5年以上の「アメリカ市民権」または「永住権」保持者
● 末期の腎臓病、Lou Gehrig病(筋萎縮性側裂索硬化症)の人
メディケアに加入すると、入院費用、外来医療費などの支給を受けることができます。しかし、メディケアは医療サポートを受けられますが、介護サポートはほとんど受けられません。介護を中心としたサポートを受けるには、日本の介護保険制度に相当する民間の介護保険に加入する必要があります。
アメリカの老齢年金とは
アメリカの公的年金制度は、連邦政府が運営している「社会保障年金:老齢・ 遺族・障害年金(OASDI)」と、公務員や鉄道職員など一定の職業のみを対象とする個別制度に分けられています。
「社会保障年金」は、被用者や大部分の自営業者を対象とした、社会保障税(Social Security Tax)を10年間以上納めた者に対して、要件を満たした時点から死亡時までの間、年金を支給する社会保険制度です。
社会保険制度の対象者
連邦政府職員、鉄道労働者、州・地方政府職員以外の被用者です。一部の例外を除き原則としてOASDIに強制加入となります。また、自営業者で年400ドル以上の所得がある者についても、一部の例外を除きOASDIに強制加入となります。 所得が基準に満たない者や、無職の者は、任意で加入することはできません。ここが、日本の国民皆保険とは違うところです。
ちなみに、社会保険制度の財源については、国庫負担ではなく、保険料によって賄われてます。保険料率については「被保険者(6.2%)・事業主(6.2%)・自営業者(12.4%)」です。
アメリカの介護保険とは
メディケアや通常保険は、医学的な治療に適用した保険のため、介護が必要になった場合は、ほとんどが適用になりません。また、日本のように介護保険制度はないので、自身で民間の介護保険に入らなければいけないのがアメリカです。
しかし、民間の介護保険料は、年齢と共に上昇し、且つ健康でなければ加入することができません。また、民間の介護保険に入る人はそれほど多くなく、その主な理由は、高齢になってからでは健康診査で加入できないか、保険料が高すぎて経済的に加入ができない(継続ができない)などです。
民間の介護保険
アメリカでは、公的な介護保険制度というのはありません。そのため、民間での介護保険が発達しています。その中でも、ロングタームケア保険 (Long Term Care Insurance) と呼ばれる民間の保険会社が、介護になった時の保証をしてくれます。
介護保険の保険金が支払われるのは、以下に記載してある2つ以上の項目が1人でできなくなり、それが90日以上続いた時、または、認知障害のため、誰かの介助がないと本人の安全が確保できない状態のいずれかの場合です。
◇ 日常生活動作(ADL)の項目
概要 | |
食事 | 容器(皿、カップまたはテーブルから直接)やチューブあるいは、静脈注射を通して自分で栄養を摂取することができない。 |
トイレ | ・トイレへの行き帰りができない。 ・便器に腰を下ろすことができない。 ・排泄の後始末などができない。 |
排泄のコントロール | ・尿意、便意を自覚し、排泄を調節することができない。 ・排泄後の後始末ができない。(カテーテルや人工肛門の処理を含む。) |
入浴 | ・タオルで体を拭くことができない ・浴槽やシャワーで体を洗うことができる。 ・浴槽への出入りができない。 |
衣類の着脱 | ・衣類や身につけるものすべてに関し、装具や留め金、義手義足などの着け外しができない。 |
移乗 | ・ベッドから車椅子、車椅子からベッドなどへの乗り移ることができない。 |
メディケイド
メディケイドという制度は、貧困者向けの医療扶助制度でもありますが、長期介護も給付対象としています。しかし、給付を受けるには、収入(年金など)の一定額以上を介護費用に充てなければなりません。また、保有資産(車など)も制限されており、経済的な制約が極めて強いのが特徴です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
簡単ではありましたが、アメリカの福祉事情についてお伝えしました。アメリカは、日本の制度のように全ての国民を守るという概念はありません。基本的には、民間の保険に入り保証を受けて生活することになります。アメリカと比較すると、日本はいかに高齢者の支援をしているのかが分かると思います。しかし、高齢化の影響でそれも徐々に当たり前ではなくなってきています。
高齢化が進めば進むほど、支給を受けられる額が限られていくため、ある程度の貯えを持ち、日本でも民間の介護保険に加入をしリスク回避をしておくと良いと思います。