わが国の平均寿命が年々増加している事実を皆さんはご存知でしょうか。恐らくニュース等でも取り上げられているので、「そんなの知っているよ」と突っ込まれてしまいそうですが。
ここでの記事の内容は、2018年7月時点でわが国の平均寿命が更新となりましたのでその詳細と、わが国が抱えている高齢者問題と平均寿命との関係性について紹介したいと思います。以前に「わが国の平均寿命と問題点」という記事を紹介しましたが、その記事とは少し内容が異なります。前置きが長くなりましたが、パッと見れるように簡潔に書きましたので、ご覧ください。
目次
2018年7月20日に厚生労働省が、2017年の日本人の平均寿命が「男性81.09歳」、「女性87.26歳」と公表。いずれも過去最高と発表がありました。
また平均寿命の伸長について厚生労働省からは、国民全体の生活習慣の改善や健康意識
の高まり、そして医療水準が向上したことにより伸長した可能性があると話されています。そのため今後もこれらの向上や改善により、さらに伸びていくと考えます。
厚生労働省から公表されている世界の平均寿命についてですが、2017年の1位が男女ともに「香港」ということが分かっています。
では、次に世界から見た日本の平均寿命はどうでしょうか。平均寿命の上位5か国をランキングにしたものを下記に作成しましたので、ご覧ください。ちなみにですが、一部更新がなく2016年のデータが入っています。
男性 | |
国 | 平均寿命 |
香港 | 81.70歳 |
スイス | 81.05歳 |
日本 | 81.09歳 |
ノルウェー | 80.91歳 |
スウェーデン | 80.72歳 |
女性 | |
国 | 平均寿命 |
香港 | 87.66歳 |
日本 | 87.26歳 |
スペイン | 85.84歳 |
韓国 | 85.04歳 |
フランス・スイス | 85.03歳 |
平均寿命が伸び、長寿ということはとてもおめでたいことだと思います。私には祖母がいますが、長生きしてほしいと心の底から思っています。しかし平均寿命が伸びることにより、問題も生じてきます。以前「わが国の平均寿命と問題点」の中でも軽く触れさせてもらっていますが、さらに別の角度から見て考えられる問題点を、いくつか挙げていきたいと思います。
このまま高齢者が増え続ければ、既存の介護施設では数が足りなくなります。特に人口密集地では、その傾向は顕著になります。強いて言うなら、施設の入居料金が高くても気にしないのであれば、大丈夫かもしれません。
次に話すことは、不足とは少し意味合いは違いますが、料金の安い施設には、人が集中する傾向にあります。公的施設であれば「特別養護老人ホーム」などの施設は人気が高いです。
また民間施設でも料金の安いところは人気が高く、空き待ち状態という施設が多いといわれています。そのため、お目当ての介護施設を探すとなると、今後は苦労すると予測されています。
介護施設をたくさん建設すれば良いのでは?という意見も出そうですが、今度は介護を行う人材が集まらないという問題が出てきます。そのため、次にも少し話しますが、人材確保が最優先であり、人材が流出(他の業界へ転職など)しないためには、労働環境の整備が急務となっているのではないかと、私は常に思っています。
わが国では慢性的に、医師や看護師、介護職員が不足しています。介護職員に至っては2025年になる年には、「38万人」全国で介護職員が不足するといわれています。
そのため高齢者の増加とは裏腹に、サービス提供者である人材が足りていないという現状です。この人材不足が解消されずに高齢者が増え続ければ、サービスを受ける側である高齢者の生活に何らかの支障が出てきます。また場合によっては、希望通りにサービスが受けられなくなるという問題も出てきます。
私が以前現場で支援をしていた時のことですが、ある利用者が「何曜日の何時に訪問看護師の手配をしてくれ」という方がいました。しかしどこの事業所も手一杯で、しまいには「ピンポイントでの要望だとしばらく待つことになります」といわれました。その待つという意味は、新しい看護師が入職するか、希望日時が空くまでということです。そんなのいつになるかわかりませんよね。
この場合は希望日時が決まっていたからこその問題ですが、事業所にも人材などのキャパシティーは決まっています。福祉医療のニーズが今後ますます増えれば、間違いなくサービス利用に何らかの制限や条件が出ると思います。病院も同じことが言えるでしょう。
また、人材不足によりサービスを行う人(人材)がいなくなれば、サービス事業所もなくなるので、適切に提供できなくなる可能性も出てきます。例えば、訪問介護士(ヘルパー)が集まらなく、事業所が閉鎖したところがいくつかありました。
そのため、人材不足は福祉医療の存続が出来なくなるという問題がはらんでいるのです。
現在の社会保障費は国家予算の1/3を捻出しています。医療福祉のニーズがより高まれば、社会保障費が増大し、国民に負担が強いられる可能性が出てきます(増税や保険料の増加、既存のサービスの廃止や条件付きでの利用など)。
社会保障費についてはこちらで、詳しく紹介しています。
・「高齢者問題にまつわる社会保障制度の仕組みについて」
現役を引退した世代は、だいたいの人は年金と貯金で老後を過ごしていると思います。しかし、寿命が伸びればそれだけ生活をするための費用がかかってきます。年金と貯金を併用して生活をしている人なら、貯金が底をついた時点で年金だけでは生活が出来ず、生活保護になる世帯も出てくると考えられます。
私が支援をしていた人で、貯金が底をつき、年金だけでは生活していけなく、介護保険サービスや医療系サービスも利用しなければいけなかった人だったので、役所へ相談しに行った人が何人かいました。今ですらそのような人がいるので、今後ますます増えると考えられます。
高齢者のすべての方が認知症にかかるというわけではありません。しかし高齢になるにつれて認知症にかかるリスクは上がることは間違いありません。そのため、寿命が伸びるということは、そのリスクに常にさらされるので、認知症高齢者は増加すると予測されてます。
交通事故といっても、運転よる交通事故や歩行者としての交通事故もあります。結論からいいますと、両方増加すると思います。その中でも運転による交通事故は増えると思います。
理由としては、まだ高齢者になっていない人や前期高齢者(65歳以上74歳までの方)の方で運転している方はたくさんいます。今は何でもなくても、年を重ねるごとに徐々に身体機能は衰えてきます。
しかし車の運転というのは、環境の変化や病気など、きっかけがなければ車の運転はやめない傾向にあります。また以前にも紹介した「高齢者ドライバーによる交通事故」でも、運転に自信があると答えた人は、高齢になるにつれて増えていることが分かりました。そのため、自身の身体能力と自信が相反しているため、高齢者による交通事故は増えると考えられます。
いかがでしたでしょうか。
高齢者問題と平均寿命の伸長の関係性について書かせてもらいました。平均寿命については、過去最高ということもあり世界の上位ランキングに堂々と入っています。
わが国が長寿大国となっている要因としては、生活の安定や医療水準の安定と向上、健康意識の向上などのさまざまな要因からだと思います。
しかし前述したように手放しでは喜べない問題もはらんでいます。そのため、長生きしても安心して生涯を終えることのできる持続可能な対策が今の日本には求められていると思います。