警察庁交通局は、令和元年(2019年)に起きた交通死亡事故の発生状況等についての統計資料を発表しました。資料によりますと、2019年の交通事故死者数は3,215人。2018年が3,532人でしたので317人減少したことになります。
しかし、このうち65歳以上の高齢者は1,782人と約半数を占めていました。ここでの記事では、2019年に起きた高齢者の交通事故件数について深堀していきたいと思います。
※引用元:警察庁HPより
目次
歩行中の死者の状況
警察庁は、65歳以上の高齢者の歩行中死者(第1・第2当事者)の法令違反状況の推移を発表しています。補足ですが、交通事故が発生し関わっていた全ての人(被害者含め)が当事者となり、第1当事者が一番過失が重い人、それよりも過失が軽い人が第2当事者となります。
公表されたデータは【平成21~令和元年】までの記録ですが、1年ごとの件数は数十件の差しかなかったため、一部の年を割愛してお伝えします。
平成22年 | 平成26年 | 令和元年 | ||||
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①高齢者 | ②高齢者以外 | ①高齢者 | ②高齢者以外 | ①高齢者 | ②高齢者以外 | |
違反あり | 779人 | 328人 | 643人 | 290人 | 483人(前年512人) | 220人(前年238人) |
違反なし | 443人 | 146人 | 405人 | 121人 | 320人 | 118人 |
合計 | 1,222人 | 474人 | 1,048人 | 411人 | 803人 | 338人 |
※【違反あり】とは、法令に規定のない「飛び出し(安全確認なし、不足で道路に飛び出したもの)」「調査不明」等を含みます。
歩行中の死者は違反有り無しに関わらず減少していますが、どの年代も歩行中に死亡した割合は、違反ありの高齢者が多いのが分かります。
高齢者の歩行中死者の法令違反別については、違反なしが40%(320人)に対して、横断違反が32%(257人)、その他14%(113人)、酩酊等8%(63人)、信号無視6%(50人)となっています。横断違反というのは、横断歩道外での横断、車両が走行する直前直後での横断等を指します。
年齢別層の歩行中の死傷者数
上記では歩行中の死者数だけでしたが、ここでは2019年に起きた高齢者の年齢層別歩行中の死傷者数についてお伝えします。
歩行中の全体の死傷者数が46,415人に対し、65歳以上の高齢者は15,617人(34%)となっています。また、2019年の法令違反の有無による死傷者数は、違反あり3,574人(23.4%)、違反なし11,708人(76.6%)でした。
高齢ドライバーによる交通死亡事故件数
昨年は、東京・池袋暴走事故などといった高齢ドライバーによる交通死亡事故が相次ぎ、政府や自治体は急発進防止装置の取り付け費用の助成金や、運転免許証の自主返納の促しなど積極的に行っていました。そうした中、警察庁は免許人口10万人当たりの死亡事故件数の推移を発表しましたので、お伝えします。
死亡事件数の推移
※原付以上の第1当事者。
※各年12月末の値。
高齢ドライバーによる年齢層別死亡事故の人的要因比較は下記の通りです。
75歳以上の高齢者 | 75歳未満の高齢者 | |
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操作不適(①・②、その他) ①:ハンドル操作不適 ②:ペダルの踏み間違い |
30%(107件) ①:15%(53件) ②:7.8件(28件) |
12%(251件) ①:8.3%(173) ②:0.6%(13件) |
安全不確認 | 19%(68件) | 26%(537件) |
内在的前方不注意(漠然運転等) | 19%(67件) | 27%(553件) |
外在的前方不注意(わき見等) | 10%(36件) | 22%(458件) |
判断の誤り | 7%(25件) | 9%(182件) |
※第1当事者の車が乗用車、貨物車、特殊車。
自転車乗車中で起きた死亡事故
高齢ドライバーによる交通事故が相次いでいることから、運転免許証の自主返納をする高齢者が増加しているのはご存知でしょうか。そうした中、昨今では車に代わる第二の足として自転車に乗る高齢者が増えている一方で、自転車による交通死亡事故、特に安全運転義務を怠ったことによる事故が後を絶ちません。ここでは、高齢者が起こした法令違反状況等の死者の推移をお伝えします。
自転車乗車中に起きた死者数
次に紹介するのは、警察庁が公表した自転車乗車中死者(第1・第2当事者)の法令違反状況の推移です。
こちらも上記同様、公表されたデータは【平成21~令和元年】までの記録ですが、1年ごとの件数は数十件の差しかなかったため、一部の年を割愛してお伝えします。
平成22年 | 平成26年 | 令和元年 | ||||
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①高齢者 | ②高齢者以外 | ①高齢者 | ②高齢者以外 | ①高齢者 | ②高齢者以外 | |
違反あり | 294人 | 180人 | 275人 | 142人 | 235人 (前年229人) | 94人 (前年107人) |
違反なし | 115人 | 73人 | 69人 | 49人 | 62人 | 36人 |
合計 | 409人 | 253人 | 344人 | 191人 | 297人 | 130人 |
高齢者の歩行中死者の法令違反別については、違反なしが21%(62人)に対して、安全運転義務39%(115人)【安全不確認:20%(58人)、操作不適:15%(45人)、その他4%(12人)】、信号無視7%(22人)、交差点安全進行5%(15人)、一時不停止5%(14人)となっています。
年齢別層の自転車乗車中の死傷者数
2019年の年齢層別(高齢者)での死傷者の合計78,982人に対して、65歳以上の高齢者の死傷者は15,980人、全体の20%を占めています。そのうち、80歳以上5%(4,153人)、70~79歳10%(8,070人)、60~69歳9%(6,777人)。
死傷者の事故状況で法令違反の有無については、違反あり64.0%(10,198人)、違反なし36.0%(5,735人)となっています。また、全体を通して、65歳以上の高齢者の違反ありの死傷者率は、65歳未満の9.4倍という統計データが出されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
令和元年(2019年)に高齢者に起きた(起こした)交通死亡事故の特徴としては、歩行中による死者数が前年比より-29件、高齢者の自転車乗車中の事故が前年比より+5人(+1.7%)増加、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数は前年比より-59件(-12.8%)となっています。
ただ、本記事に載せた警察庁の統計データでも分かるように、高齢者の違反ありの死亡事故がとても多いことが分かります。特に、自転車乗車中に至っては前年より増加していることから、今後も第二の足として自転車の利用が増加していく可能性は十分に考えられます。現在、高齢ドライバーによる講習が各地で行われていますが、自転車の走行マナーなどといった運転講習も必要になっていくのではないでしょうか。