突然ですが、多くの高齢者の方は1日のたんぱく質の摂取量が少ないという話を聞いたことはありませんか?というのも、今年3月に厚生労働省が加齢などの影響で引き起こす【フレイル】を防止するために、高齢者が1日に摂るたんぱく質の目標量を概ね体重1kgあたり1gが望ましいとし、新たな基準を設ける検討を行っています。
新基準の背景には、高齢になってもたんぱく質の摂取量自体は若い頃と変わらないのに対し、たんぱく質の摂取量が低いことから、新基準を設けてフレイル予防を行うのが狙いです。
そして、よく「プロテインを摂取」「たんぱく質を摂る」「アミノ酸を素早く吸収」なんて言葉を一度は耳にしたことがあると思いますが、本記事でもそれらを分けて使っているので、その違いについて簡単に説明します。基本的に【プロテイン(食料品として使われることが多い)=たんぱく質(成分で使われることが多い)】と覚えておいてください。次に、アミノ酸とは、たんぱく質が体内で3~4時間かけてアミノ酸に分解されるものを言います。つまり、アミノ酸もたんぱく質の一部です。
前置きが長くなりましたが、ここでの記事では、高齢者が【プロテイン=たんぱく質=アミノ酸】を摂る必要性についてお伝えしたいと思います。
目次
冒頭でも少し触れていた【フレイル】ですが、簡単に言うと健康と要介護の間に位置することをフレイルと言います。つまり、要介護の一歩手前の段階です。そのフレイル状態に陥る原因はさまざまですが、その原因の代表格が【低栄養】です。
低栄養というのは、健康な体を保つために必要な栄養素が足りていない状態のことで、その中でも、特に高齢者が不足しがちな栄養素がたんぱく質と言われています。そのため、低栄養にならないためにも、高齢者はプロテインの摂取が必要です。
※フレイルの詳細について:高齢者フレイル対策と課題
たんぱく質が不足する原因には色々ありますが、高齢者で一番多い原因の1つが食事量の低下です。高齢者は若者と比べて活動量が少ないため、自ずと食事量の低下が起き、年齢が増すごとにその低下は顕著に現れます。
ほかにも、口腔機能の問題で食事量が低下する場合もあり、例えば【歯が抜けて噛みづらい、入れ歯が合わない、飲み込みが悪くなってきた】などといった問題が高齢者になれば起きやすくなります。もちろん、対応策などはありますが完全にカバーできるわけではありません。これらの問題が起きれば、物を食べる行為がしづらくなるため食欲減退の原因になり、結果、食事量の低下に繋がります。
最後に、1人暮らしという生活環境も食事量の低下に繋がります。1人暮らしだと意識して生活をしなければ、自分の気分(「昼は食べなくていいや」など)や嗜好(「ご飯と味噌汁、魚だけでいい」など)などで食事をしてしまいがちになり、食事量が低下しやすくなります。さらに、たんぱく質どころか、全体の栄養状態が悪くなる傾向にあります。
主に食事量の低下にまつわる話でしたが、原因を突き止めればいくらでも出てきますが、食事量の低下は、たんぱく質の摂取(栄養摂取)が出来ない状況を作り出してしまうということは覚えておいてください。
たんぱく質は体内でアミノ酸に分解され吸収後は、体に必要なたんぱく質に再合成されます。そして、そのたんぱく質が筋肉や骨、皮膚、髪、血液などを作ってくれます。
しかし、体を作ってくれるはずのたんぱく質が不足すると、筋力低下や貧血、ケガがしやすくなったり、疲れを感じやすくなったり、免疫機能が低下し病気にかかりやすくなるといった色んな問題が起きてきます。そして、その状態が続くとフレイルとなり、改善されなければ要介護状態になります。
たんぱく質の摂取量というのは、若い頃とほとんど変わりません(普段運動をする人は除く)。政府でも、来年までにたんぱく質の新基準を1kgあたり1gが望ましいという報告書を作成しました。例えば、体重60kg人の場合だと【1g=60g・1.1g=6.6・1.2g=72g】が必要になる計算です。
実際に食事でたんぱく質を摂ると、どれくらいの物を食べなければならないのかをまとめましたので、下記の食品成分表をご覧ください。
肉類 ※100gあたり | ・ベーコン(12.9g) ・鶏もも肉(皮付)(16.2g)・豚ひき肉(18.6g)・鶏むね肉(皮付)(19.5g)・ローストビーフ(21.7g)・鶏ささ身(23.0g)・ビーフジャーキー(54.8g)・ゼラチン(87.6g) |
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魚介類※100gあたり | ・わかさぎ(14.4g)・うなぎ(養殖)17.1g・さんま(18.5g)・ひらめ(20.0g)・さば(20.7g)・ぶり(21.0g)・さけ(22.3g)・くろまぐろ(赤身)(26.4g) |
その他(乳製品・大豆・卵)※100gあたり | ・牛乳(3.3g)・豆乳(3.6g)・ヨーグルト(4.3g)・豆腐(6.6g)・生卵(12.3g)・ゆで卵(12.9g)・卵黄(16.5g)・納豆(16.5g)、カマンベールチーズ(19.1g)・脱脂粉乳(34.0g)・パルメザンチーズ(44.0g) |
※引用:日本食品標準成分表2010 準拠新ビジュアル食品成分表[新訂版]より一部抜粋
高齢者が一日の中で食事だけで基準のたんぱく質を摂取するのは、少し厳しいように思えます。もし、これが何らかの疾病を抱えている人(飲み込みが悪い人・制限食がある人など)であれば尚のことです。では、どうしたら沢山食べなくても摂取量の目安に近づけるのかを次で紹介します。
結論から言いますと【栄養補助食品】のプロテインを上手く活用することです。ただ、その人の体調や疾病(特に腎機能障害がある人)などで摂取しない方が良い場合もあります。そのため、栄養補助食品を活用する場合は、病院にかかっている人であれば必ず主治医にプロテインの摂取の仕方(量や種類など)などを相談した上で摂取してください。
普段病院にかかっていない人でも、腎機能が悪くなっていることもあるので、多飲や多食したことにより腎機能が悪化するケースもありますので、注意が必要です(糖尿病のリスクもあります)。
ただ、栄養補助食品は、病院や高齢者施設でも食事量が低下した高齢者に対し栄養補給として提供されていますので、注意書き(商品に書いてある)を守って摂取してもらえればそれほど危険なモノではありませんので、誤解はしないでください。
実際にどういったものが栄養補助食品のプロテインなのか。百聞は一見に如かず。下記の商品が栄養補助食品のプロテインの1つです。
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この商品は、一見ただのゼリーに見えますが、6.6gのゼリーの中に3.0gのたんぱく質が入っています。さらに、アミノ酸スコアが100の良質なたんぱく質が含まれているゼリーです。※アミノ酸スコアとは、スコアが100に近いほど良質なタンパク質食品と言われています。
このゼリーは一例ですが、他にも飲み物やヨーグルト、お菓子、粉末タイプなどもあります。
高齢者の多くの人は、加齢に伴い消化機能などの低下によって食事量が減っていきます。例えば、昔は「肉が大好きで食べられたのに、今は食べられない」というのは、趣味嗜好の変化もありますが消化機能などが低下したことが原因でもあります。
特に肉類は多くのたんぱく質を摂ることができるので、ぜひ食べてもらいたいのですが、ちょっと難しいという高齢者の方は多いはずです。
そういった方に適しているのが【栄養補助食品・プロテイン】です。上記では、ゼリーを一例に出しましたが、6.6gのゼリーの中に3.0gのたんぱく質が入っています。上で表示した成分表では、3.0gのたんぱく質を摂取するとなると、100mlの牛乳や豆乳を飲む必要があります。あまり、食べることができないという高齢者であれば、その僅かなgやml数だけでもかなり違うので、極力負担をかけずに効率よくたんぱく質を摂取出来るのが栄養補助食品の良いところです。
ちなみに、プロテインには【ホエイ】や【カゼイン】、【ソイ(豆)】があります。ホエイとは、乳由来の動物性たんぱく質で筋肉の修復効果が期待されており、体内への吸収速度がスムーズで胃腸にもたれにくいという特徴があります。これは過度なトレーニングをした人用のプロテインです。
カゼインとは、生乳を構成するたんぱく質の約80%を占め、不溶性で固まりやすく、体への吸収速度が緩やかなのが特徴です。ソイプロテインとは、大豆由来の植物性のたんぱく質で消化吸収が緩やかなのが特徴です。
それぞれ、乳や大豆由来といった特徴があるのでアレルギーなどがある方は、ご注意ください。
いかがでしたでしょうか。
高齢になると若者と比べて活動量が減るので、食事量も当然減っていきます。しかし、たんぱく質の摂取量だけは若い頃とほとんど変わりがないため、高齢者の多くはたんぱく質の不足が顕著に現れます。
もちろん、たんぱく質だけの話ではないですが、基本的にたんぱく質というのは体を作る材料でもあるので優先的に摂ることが良いと考えられています。ただ、食事量が低下しても若い人並みにたんぱく質を摂らなければならないとなると、少し厳しいものがあります。
そこで本記事でも紹介したゼリーのように少量でも、ある程度たんぱく質が入っている栄養補給食品のプロテインを摂取することで、食事だけで不足するたんぱく質を補うことができます。ですが、疾病など抱えている人は主治医に相談して摂取してください。