超高齢化社会とは、総人口に占める65歳以上の高齢者が21%以上のことを指します。現在、わが国の高齢化率は28.4%(19年9月現在)で、世界でも断トツにトップの高齢化率になっています。では、超高齢化社会になるとどのような問題点が起きるのか。そして、その対策はあるのかなどをここではお伝えします。
目次
問題点1:支給の減額・増税問題
現在、総務省で公表している高齢者の人口は3588万人、前年と比較すると32万人増加しています。【団塊の世代】が75歳以上になる2025年頃には、高齢者の人口は3,677万人に達すると見込まれ、その後も高齢者の人口は増え続け2040年には3,921万人のピークを迎えます。2040年のピークを境に高齢者の人口は徐々に減少していきますが、現役世代の人口の減少率の方が大きいため、高齢化率は上昇し続けます。下記は総務省が公表している高齢者の人口数の推移を基に作成したグラフとなっています。
わが国では、現役世代から生み出す【年金・社会保険料・各種税金】で高齢者を支えています。上記のグラフの通り、2040年まで著しく現役世代の人口が減少しているのに対し、高齢者の人口だけは増え続けているのが分かります。
高齢者が増え、現役世代が減るということは【年金・各種保障額の減額】【医療・介護費などの社会保障費の負担増加】【各種税金の増税】が起こる可能性があるため、私たちの生活に影響を与えるでしょう。
問題点2:家族介護の負担が増加
現在、政策転換で施設から在宅へと介護の仕組みが変化しています。このような政策転換が行われた背景は、高齢者の増加に対して、介護施設の整備が追いついていないためです。加えて、2025年に介護を必要とする高齢者が約249万人と推計されているのに対し、介護職員は約229万人ほどしか確保できないとされているためです。
こうしたことから、家族の力や在宅介護サービスを利用して自宅で介護をする方針に変わりました。ただ、これは主に家族が高齢者の介護をするので時間・お金・身体などの負担が増えていきます。
訪問介護・看護や訪問診療はありますが、人手不足は在宅介護・医療の現場でも同様のことが起きています。特に在宅医療の要でもある訪問診療の数は足りておらず、訪問診療を実施していない診療所は全体の70%強に上っています。
今後、在宅介護サービスの整備が行われなければ、介護施設のように在宅介護サービスも順番待ちをせざるを得ない状況となり、結果、家族の負担が増えることになっていくことでしょう。
問題点3:高齢者を贔屓にした政策が増える
高齢者が多くなるということは、有権者も高齢者ばかりになります。そうなると、政治家たちも選挙の落選や支持率を落とさないためにも、高齢者に優遇した政策ばかりになる可能性があります。
そうなると、自ずと現役世代にとっては不遇の政策になることは間違いありません。また、現在でも選挙に行かない若者が多い昨今では、その可能性は十分にあります。
だからといって「若者に優遇しろ」という訳ではなく、平等な政策が考えられるためにも、今の若者は政治に関心を持つべきなのです。
問題点4:虐待の増加
厚労省が実施した高齢者虐待の対応状況等の調査結果です。最新のデータである平成30年度での養護者による高齢者虐待の【虐待判断:17,249件】、【相談・通報:32,231件】と年々増加しています。他の年度と比較しても年々上昇傾向にあるのが分かります。
また、養護者だけではなく、高齢者を専門で介護をするはずの要介護施設従事者による高齢者虐待も増加しています。
超高齢化社会の対策とは
超高齢化社会の対策として、子育てをする環境の整備、労働力の確保、AI・介護ロボットの投入が必要と考えます。
子育てをする環境の整備
超高齢化社会と同時に、わが国は少子化問題にも直面しています。子どもが少ないということはすなわち、高齢者を支える人が少なくなるということです。問題点で支給額の減額、増税でもお伝えしましたが、税金や保険料の多くは現役世代から徴収しています。
出典:厚生労働省
しかし、現在の出生率は2019年9月時点で1.48%と2%を切っており、こうした現状に陥っているのは子どもが育てにくい環境が原因でもあります。その問題の筆頭は収入面です。平成30年度に国税庁の民間給与実態調査によると、日本人の平均年収は441万円ということが分かっています。
仮に平均である年収441万円をもらったとしても【税金・保険】などを引かれると手元に残るのは約345万円になります。これが夫婦と子ども1人での3人暮らしになると、かなり窮屈な生活を送ることになります。
そうなると、自ずと共働きの選択肢が出ると思います。しかし、保育園の待機児童問題が全国各地では起きており、気軽に子どもが預けられる環境ではないのはご承知の通りだと思います。それを解決するために、保育園を建てたとしても、今度は子どもをみる保育士も不足しています。
『子どもを預けて働きたい』、でも『預けられる保育園がない』、『だったら、子どもはしばらく諦めよう』という考えになるはずです。1人目は辛うじて作れても、2人目にこの問題は確実に直面すると思います。それが今の出生率の低下でもあります。
子どもを育てる環境ではないと、子どもを育てるという選択肢は当然なく、結果、日本はますます少子高齢化になっていきます。
労働力の確保
現在、正規雇用は65歳までとされていますが、これを定年制度の延長、70歳まで義務化にし、労働力の確保が有効な施策だと考えます。
定年を引き上げることで、社会保障費の抑制や税金などの徴収が見込めるため、使うべきところに税金などが投入されやすくなります。
本記事でも繰り返し触れていますが、わが国の医療や介護制度は現役世代からの保険料や税金の徴収に大きく依存しています。定年制度を延長させ、労働力の確保することは、わが国の社会保障制度の維持に繋がります。
AI・介護ロボットの投入
高齢者が多くなるわが国では、AI・介護ロボットの投入は急務と言っても過言ではありません。特に介護職員の不足は深刻で、高齢者が増えることで介護を受ける人も比例して多くなります。
介護不足の原因の1つは【重労働=大変】だと思います。それに加えて人手不足により【仕事量が増えて、忙しいのにもかかわらず給料が安い】というところも拍車をかけています。
そこにAI・介護ロボットなどを投入することで、移動介助や移動支援、排泄介助、入浴介助などの一部介助を担ってくれることで介助者の負担は十分軽減できます。
人が少ないことで仕事量が多く、辛い仕事は誰もやりたがりません。ですが、介助の一部でもロボットが補ってくれれば、その考え方は変わってくるかもしれません。
現在、重点的に開発が進められているロボット(機器)の一例を紹介します。
● 移乗介助
・パワーアシスト機能搭載の介護ロボット。介助者に装着することで、機器がアシストするので介助者の体の負担軽減になります。
● 移動支援
・電動立ち上がり補助機能付き歩行器。歩行器のサドルに昇降機能を搭載し、立ち上がり、座り込みの補助を行います。立ち上がり後は通常の歩行器として使用が可能。
・アシスト制御技術が搭載された歩行器。自動的に平地・上り坂・下り坂を検知し、状況に合わせて、パワーアシスト、減速アシストをしてくれます。
● 排泄介助
・排泄予測機器。超音波を利用し、膀胱のタイミングを事前、事後で知らせてくれます。これにより、定期のオムツ交換の効率が上がります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
超高齢化社会の先端を進むわが国ですが、問題は山積みです。本記事でも紹介した問題点は、これから顕著に現れ、政府も超高齢化社会を改善するために国民に負担を強いることでしょう。私たちに今出来ることは【社会保障費を使わないよう健康状態を維持する】【抜本的な改革をしてくれそうな政治家に投票する】【政治に興味関心を持つ】ことだと思います。
特に、社会保障費については2017年度時点で120兆2,443億円と前年比より1兆8,353億円も増加しています。内訳として【年金:54兆8,349億円、医療:39兆4,195億円で、福祉その他:25兆9,898億円】です。年金の削減は私たちでは難しいですが、医療や福祉分野では健康意識が高ければ削減できます。こうした現状を意識していくことは、回り巡って私たちの生活に影響してくることを覚えておいてください。
参考文献:内閣府