餅による高齢者の窒息死 その原因と対策

今年も残すところあとわずか。年末年始を迎えると、焼餅やお雑煮などといった餅料理を食べて過ごす方も多いのではないでしょうか。しかし、そんな餅料理も、東京都だけで年間約100人前後の人が、餅でノドを詰まらせて救急搬送されています。そして、そのほとんどが高齢者です。餅料理は、年末年始には欠かすことができないですが、餅のことをしっかりと理解していないと、危険な食べ物でもあります。

ここでは、なぜ高齢者の方がノドに餅を詰まらせてしまうのか、そしてノドに詰まらなせないため対策についてお伝えしたいと思います。

高齢者が餅をノドに詰まらせてしまう原因

高齢者が餅をノドに詰まらせてしまう原因については、いくつかあります。

● 噛む力が衰えている。
・餅を十分に噛みちぎることができない。
● 高齢になると唾液分泌が衰えるため、口の中が乾燥しがちになる。
・唾液が少ないと、餅を唾液で包みづらくなり、スムーズに餅を飲み込むことができなくなる。
・餅が口の中やノドに、くっつきやすくなる。
● 加齢の影響により、飲み込む力が低下している。
● 加齢の影響により、誤って気道に入った餅を、咳で十分に押し返すことができない。

個人差にもよりますが、これらの影響で、餅をノドに詰まらせてしまいます。また、元々早食いをしている方や、食べ物を詰込みがちの人も注意が必要です。

餅はくっつきやすい

当たり前ですが、通常の食べ物より餅の方がノドにくっつきやすい食べ物です。さらに、餅は「30~40度」ほどの温度が一番くっつきやすいことが、ある実験で明らかになっています。

仮に、「アツアツの餅」でも口の中で噛んでいる頃には、30~40度程の温度に近くなっているため、注意が必要です。

高齢者の搬送率が圧倒的に多い

東京消防庁による「2013年~2017年」における過去5年間の統計データが公表されています。下記のデータは、餅が原因で救急搬送された高齢者の件数です。
(引用元:東京消防庁

餅が原因で高齢者が搬送された件数

年齢層別の搬送件数

次のデータは、年齢層別の搬送件数です。下記のデータを見てもらえれば分かるように、「75~89歳」までの件数が圧倒的に多いことが分かります。

上手に餅を食べる方法

上記のデータを見ると、高齢者の搬送件数は圧倒的に多いことが分かったと思います。しかし「危険はあるけど、正月くらいは餅が食べたい」という方もいると思います。

まず、餅を食べる前に、上述でお伝えした内容をよく理解することが、まず大事となります。それを踏まえて、ノドに餅を詰まらせずに、餅を食べる方法をお伝えします。

餅を詰まらせない6つの方法

● お茶や水で、口やノドを湿らせておく
・高齢者の方は、口の中が乾燥しがちです。その状態で、餅を食べるとノドにくっつきやすくなります。そのため、口の中やノドを水分で湿らせておくことで、餅のくっつきを防止できます。

● 食べやすい大きさにカットする(小さいサイズにする)
・小さいサイズだと、餅を噛み切りやすく、飲み込みもしやすくなります。

● 意識して飲み込む
・高齢者の方は、飲み込む力が衰えています。意識しないで飲み込みを行うと完全に飲み込めていない場合があるため、一つ一つ意識して飲み込んでください。

● 食べながら話さない
・上記と付随しますが、食べにくい食べ物なので、集中して飲み込む必要があります。

● 姿勢を正し、アゴを引く
・体が前傾だと、アゴが上がってきます。アゴが上がると、飲み込みづらくなり、気道に餅が入りやすくなります。また、体が不安定だと首の筋肉が適切に動かせなくなるため、飲み込む力を上手く発揮できなくなります。

★1人では絶対食べない
・万が一、詰まらせてしまった場合、応急処置ができないため、1人では絶対餅を食べないでください。

詰まらせないことが一番大事ですが、万が一、詰まらせてしまったときのことも想定して、救護方法を知っておくとよいでしょう。

東京消防庁HPに、詰まらせたときの救護方法が紹介されていますので、一度ご覧になってください(HPの下の方にあります。)

食べやすい餅

「お餅を食べたいけど、普通の餅ではちょっと・・・」という方にお勧めです。味については、正直賛否はあります。しかし、どうしても餅を食べたいということでしたら、通常の餅よりかは、こちらの商品の方が比較的安全に食べられます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
年末年始は、日本独自の習慣でもある「お餅」を食べる機会が多くなる季節でもあります。しかし、お餅は粘り気が強いため、しっかりと噛み、飲み込まなければ命の危険にさらされることは、ここでの記事で理解できたと思います。

そのため、高齢者の方でお餅を食べるようでしたら、細心の注意を払う必要があります。そして、周りの人も餅を食べやすくするための調理方法を学び、万が一の時に備えての救護処置を事前に学んでおく必要があります。これらのことを踏まえ、楽しいお正月を迎えられることを祈っています。